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とある冒険者の手記

A.パートナーとしての自覚

2021.04.14 10:26

アパルトメントに住み始めて2ヶ月。

今俺は、長旅の準備をしていた。

もうすぐ母さんの命日。

墓参りをする為に帰省の準備をしていた。

俺が荷物を纏めているのを不思議に思ったのか、ヘリオさんが声をかけてきた。


「随分大荷物だな。長旅か?」

「はい!あ、ヘリオさんにはまだ話してなかったですね」


俺は事情を話し始めた。

母さんが亡くなって3回忌になる事、家を2週間近く空ける事。

それを伝えると、納得したようだった。


「予定が空いていれば、ヘリオさんも一緒にって思ったんですけど、今、ガウラさんが忙しいからヘリオさんも手伝いしてますし」

「そうだな」

「来年、予定がなかったら一緒に行きましょう!」

「あぁ」


約束を取り付けて、俺は上機嫌になる。


「で、いつ発つんだ?」

「5日後です。帰りはテレポで帰ってくるので、行きと滞在期間で早くて10日、故郷の手伝いを頼まれたら2週間ぐらいで帰って来れる感じですね」

「わかった、その間は姉さんの所に泊まる」

「分かりました」


そのまま荷物を纏めていると、ヘリオさんが口を開いた。


「なぁ」

「はい?」

「あんた、いつになったら「さん」付けと敬語をやめるんだ?」

「へ?」


ヘリオさんの質問にきょとんとする。


「俺は前に呼び捨てで良いとも言ったし、敬語もしなくていいと伝えたと思うんだが…」

「あぁ…、なんと言いますか、癖ですかね。年上にはさん付け、敬語が当たり前になってて」

「パートナーに対してもか?何だか余所余所しくて、むず痒いんだが…」


パートナーの単語にハッとする。

パートナーなのに余所余所しい。

たしか、母さんは父さんの名前を呼び捨てにしていた。

よっぽど育ちが良い人じゃない限り、パートナーの名前をさん付けで呼んでる人を見たことがなかった。

癖と言うには、俺の中に何が根本的な原因がある様に感じ、俺はその日から、その原因を探し始めた。



***********



故郷の島へと向かう船の中、俺はある決意を胸にヘリオさんにパールリンクを発信した。


『はい』

「あ、アリスです。今大丈夫ですか?」

『あぁ、大丈夫だが、どうした?』

「えっと、伝えたいことがあって…」

『なんだ?』


俺は深呼吸をし、ゆっくり話し始めた。


「俺、ずっと考えてたんです。なんで「さん」付けや敬語が抜けないんだろうって。でも、さっき気がついたんです。俺はヘリオさんに憧れてて、背中を追いかけているんだって」


ヘリオさんは黙って聞いてくれている。


「でも、パートナーになったんだから、それじゃダメだって、追いかけるんじゃなくて、ヘリオさんの隣を一緒に歩いていかなきゃいけないんだって、気がついたんです」


俺は目を伏せ、ハッキリと言葉にした。


「だから、隣で歩いて行けるように、対等でいられるように、さん付けも、敬語もやめる。だから、改めてこれからよろしくな!ヘリオ!」


少しの沈黙のあと「あぁ、よろしくな」と返事が返ってきた。

その声はとても優しい声だった。