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老朽化した車両の今後について

2021.04.17 10:00

1.はじめに

 こんにちは、**です。今までの研究テーマは「鶴見駅の中距離列車停車」、「多摩都市モノレールの延伸」、「京王線連続立体交差事業」、「都心直結線」などなど、未成線に関する研究が主でした。ですが、今回は新しいジャンルに挑戦してみようと思い、このテーマを選んでみました。今回は老朽化した車両の譲渡や廃車、またそれに代わる新型車両についても考えていきたいと思います。

 最近では「アルゼンチンからの丸ノ内線車両の里帰り」や「京王電鉄初の座席指定列車用新型車両」など、鉄道各社の車両に関するニュースが話題となっているので、老朽化した車両について注目してみました。最後までお読みいただければ幸いです。

2.地方鉄道の車両の現状

 突然ですが、問題です。日本に鉄道会社はいくつあるでしょうか…?答えはおよそ200社です。実は私たちが想像するよりも数多くの鉄道会社があるのです。およそ200ある鉄道会社の内訳は、JRが7社、大手民鉄が16社、その他私鉄(第三セクター、公営含む)がおよそ180社です。また、東京や大阪など都市部に路線を持つ会社を除く約9割の鉄道会社が赤字経営という現状です。

 鉄道会社が収益を上げる方法はさまざまです。鉄道事業のほかにも不動産やホテル、レジャー施設、百貨店などがあげられます。特に私鉄はJRと比べて路線も短く、鉄道事業だけでは収益をあげるのが難しいため積極的に沿線開発を行わなければいけません。

たとえばJR東海は鉄道事業において収益のほとんどを東海道新幹線が占めています。そして東海道新幹線による莫大な収入によって今やリニアを全額自己負担で建設できるほどの大企業となりました。ですが、このような利益の生み出し方は東京と大阪を結ぶ東海道新幹線を保有しているJR東海だからこそできることであり、他の鉄道会社ではそうもうまくいきません。

 ではほかの鉄道会社はどうでしょうか?

 たとえばJR東日本の場合です。JR東日本は東北、関東、甲信越と非常に広い範囲に路線網を持ち、路線総距離は7458.2km(2015年1月時点)と日本一です。ではJR東日本は鉄道輸送以外に具体的にどのような事業を行っているでしょうか?

 代表的なものでいうと駅ナカなどの生活サービス事業があげられます。ではわかりやすく主なものを表にまとめてみました。

▲JR東日本系列が取り扱う主なサービス事業の内容

 特に代表的なものはecuteです。駅ナカの代名詞ともいえるものです。2005年3月5日に大宮でオープン以来、店舗を増やしていき現在は7駅8店舗まで拡大しています。

 また、NewDaysも有名でしょう。もとはKIOSKという名前でオープンし、駅構内の限られたスペースに豊富な商品を取りそろえることで人気を博していました。のちに販売スタイルを売店からコンビニエンスストアに変更したNewDaysが誕生しました。現在はNewDaysのブランドを拡大中で、もともとのKIOSKも多くがNewDays KIOSKという名前でリニューアルオープンしています。

 またJR東日本はホテル事業も扱っています。100年以上の歴史をもつ「東京ステーションホテル」や駅に近接した場所で宿泊特化型ホテルとして営業する「ホテルメッツ」などがあり、ホテル数は合計で50近くにものぼります。

では私鉄の場合はどうでしょうか?

 たとえば東急電鉄の場合をみてみましょう。東急電鉄の2015年3月期の営業収益は約715億円ですが内訳をみると鉄道事業が約258億円に対し、不動産事業は約334億円に及んでいます。つまり、東急電鉄は駅ビルなどの不動産事業と鉄道事業の2つの事業を主として成り立っていることがわかります。ちなみに東急グループではホテルや百貨店、不動産などの企業がありますが、これらは東急電鉄とは別会社です。

 ですがJR東海や東急電鉄よりももっと規模の小さい鉄道会社だとするとこうもうまくいきません。現在、電車を新造するとなると1両当たり約1億円かかります。よって10両編成の通勤電車を新造する場合は1編成当たり約10億円かかります。ですが、中古車両を譲渡するとなると1両当たり1000万円ほどで済むそうです。もしも新たに1編成10両の電車が20編成必要になるとすると新車の場合は200億円かかりますが、中古車両の場合は20億円です。そう考えると新車の代わりに中古車両を購入するのはかなりの節約になります。


 ではほんの一例ですが、具体的に中古車両を実際に使用している路線を見ていきましょう。

(※1)自社内で新造した車両を現有しているか、ということを指します。また、旅客用の車両に限ります。

 今回検証した6社ではこのような結果となりました。

 伊豆箱根鉄道では西武鉄道新101系を譲り受け、現在では駿豆線内で運転されています。駿豆線内は自社発注車両と西武鉄道からの譲渡車両が運転されていますが、大雄山線はすべてが自社で製造されました。理由は大雄山線と駿豆線で車両の長さが違うからであり、大雄山線では18m級車両が運転されていますが、駿豆線ではJR線との直通運転もあり20m級車両が運転されています。

 伊豆急行では元東急8000系の8000系とリゾート21の名で活躍している2100系、自社車両の100系があります。ですが100系は定期運用がなく、貸切用やイベント用でのみ使われています。2100系は観光用の車両として運用されています。

 富士急行には多種の車両が在籍しています。特急車両は元JR東海371系の8500系と元小田急20000形の8000系があり、前者は「富士山ビュー特急」、後者は「フジサン特急」として運行されています。普通電車は元JR東日本205系の6000系、元京王5000系の1000系・1200系、自社発注の5000系があります。

 秩父鉄道はSLを運行していることで有名です。元都営三田線6000形の5000系、元東急8500系の7000系、元東急8090系の7500系・7800系が普通列車として、元西武新101系の6000系が急行「秩父路」として運転されています。またC58 353牽引のSLパレオエクスプレスも運転されています。

流鉄はJR常磐線と接続する馬橋駅から流山駅までの5.6kmを結ぶ路線です。車両は1994年以降すべてが元西武鉄道の車両で運転されており、現在は元西武新101系の5000形で統一されています。また編成ごとに異なる愛称がつけられており、異なる塗色が施されています。

 上毛電鉄は中央前橋駅から西桐生駅までの25.4kmを結ぶローカル線で、元京王3000系の700形で運転されています。自社発注の車両はおよそ20年もの間営業運転されていません。

 このように地方の鉄道各社ではほとんどが他社からの中古車両の譲渡によって運転していることがわかります。やはり自社で製造するのはコスト的に難しく、近年の少子高齢化による利用客の減少によりますます中古車両に頼ることになるのが見込まれます。

秩父鉄道7000系(元東急車)(上)

流鉄5000形(元西武車)(下)


3.今後の鉄道車両の譲渡

 今や地方私鉄に必要不可欠となっている中古車両ですが、では現在運用されている中古車両が老朽化などにより廃車された場合、代わりの車両はどうするのでしょうか?またJRや大手私鉄などから譲渡してもらうことになるでしょう。ですが、JRや大手私鉄の車両にも数に限りがあります。では譲渡される電車の候補としてはどのようなものがあるのか考えていきたいと思います。

 中小私鉄に車両が譲渡されるとき、それは譲渡元の鉄道会社で不必要な車両があるときです。そして不必要な車両がでるときとは新型車両が製造されたときであり、つまり新型車両が製造されたときに中小私鉄へ譲渡される用意ができた、ということになります。


 ではまず、近頃に関東で新造(改造含む)された車両をあげてみます。

 ほとんどすべての新型車両が既存車両の置き換え目的で製造されています。ちなみにこれらの車両の製造により、東京メトロ03系、東武鉄道20000系列、JR東日本E351系などが全廃される見通しです。

東京メトロ日比谷線03系(上)と13000系(下)

18m級3ドア(一部車両は5ドア)の03系から20m級4ドアの13000系に置き換わることにより、今後日比谷線ではホームドアが設置される

 また、来春には東急田園都市線2020系、東急大井町線6020系、小田急電鉄70000形、都営浅草線5500形などがデビューする予定です。


 ですが、私は譲渡可能な車両はそれほど多くないと考えています。たとえば東京メトロ03系と東武鉄道20000系列を例に考えてみましょう。03系や20000系列は18m3ドア(一部5ドア)ともあり、周辺の中小私鉄とは違う構造となっています。また、2・3両に改編するとなると設備更新などの工事も必要となりコストが高くなるので他の中小私鉄への譲渡は非効率です。また、東京メトロはすでに6000系をインドネシアに輸出中で、東武鉄道は他社譲渡の例が少なく、譲渡はむずかしいのではないか、と考えます。

 なお、この研究の執筆中に、熊本電鉄に東京メトロ03系が転属されることとなりました。ですが私の考えとしては、熊本電鉄ではこれまでも車両の長さや高さ、ドア数が違う車両を走らせていたので今回のようなことがありましたが、このような事例は他にはほとんど起こらないと考えます。

 ではどの電車が譲渡するに適切といえるでしょうか?

 私が考えるには東急の8500系が適していると考えます。では理由を説明していきましょう。まず8500系は近年行われていた東急5000系の増備や2018年春に登場する東急2020系により今後置き換えられる可能性が高く、車両も20m級4扉車で多くの中小私鉄と構造が合致しているためです。また、ほかの理由としては譲渡元が東急電鉄だからです。東急電鉄はこれまでに数多くの鉄道会社に車両を譲渡しており、また自社に改造工場もあるのでスムーズに、低コストで譲渡することができます。譲渡先の例としては先ほど例に挙げたもの以外にも福島交通、上田交通、伊賀鉄道、一畑電車、富山地方鉄道、弘南鉄道、十和田観光鉄道(現在は廃止)などがあり、多岐にわたっています。よって譲渡するなら汎用性のある東急8500系列がいいのではないかと思います。

4.海外への譲渡

 では実際にどのような譲渡例があるのか、というとそれは先ほど表にあげたものなどがあります。ですが、そのほかに海外に譲渡されたという例もあります。

 では主な例をまとめてみました。譲渡先はほとんどが東南アジアとなっています。

 この中でも特に有名なのがインドネシアではないでしょうか?これまでにJR東日本103系や埼京線、横浜線、南武線で使用されていた205系、東京メトロ半蔵門線8000系、東京メトロ有楽町線・副都心線7000系などが輸出されており、現在は東京メトロ千代田線6000系が順次インドネシアに輸出されています。これらの電車は多少塗装などの変更を行った後、ジャカルタの通勤電車として走っています。一度はインドネシアの国営企業を育てるために日本製の車両は輸出停止、ということになりましたが、インドネシア産の車両が相次いで故障したことから日本産の車両の輸出を再開し、直接JR東日本の205系のメンテナンススタッフがインドネシアで指導しました。

 このように老朽化した車両は国内だけでなく海外でも活躍していることがわかります。

5.老朽化した車両の末路と他の有効活用案は存在するのか

 老朽化した車両はすべてが必ずしもすぐに廃車されるわけではありません。その一つが他の鉄道会社に車両を譲渡する、ということです。では、譲渡先でも老朽化が進んでもう走らせることが困難になった場合は…。そうなるとほとんどの場合は廃車となります。ちなみに、「廃車」=「解体」というわけではありません。廃車されていても解体されていない車両は全国各地にあります。たとえば鉄道博物館にはさまざまな車両が展示されていますが、あれらは「解体されていない廃車」なのです。つまり廃車されても解体されていないケースがあるのです。またこの例はSLを保存している鉄道公園など全国各地にあります。

 このようにして鉄道車両を未来へ残していくことは、私は良いことだと思います。また、珍しい車両を地方の公園などに展示すれば、全国からその車両目当ての人が訪れることにより地元の活性化にもつながります。

 ですが、残念なことにデメリットもあります。

 日本の鉄道車両は他国の車両よりも故障しにくいことで有名です。ですがそれは、日本が車両の保全や整備をきちんと行っているからであり、そうするには多額の費用が必要となります。また、継続的に保守を行うためにはさらにお金がかかります。よって鉄道車両を保存するのはとても難しいです。そして結論としては、廃車は解体するのが最も容易であるということです。




6.結論・おわりに

 老朽化した車両の末路として、大手私鉄から地方鉄道への車両譲渡は今後も続くことでしょう。そしてさらに老朽化が進んだ場合については、廃車・解体するのが最も効率が良いといえます。

 さて、今回は老朽化した車両の今後について研究してきました。初めは意気揚々としていたのですが、徐々に内容の薄いものになってしまいました…。次回は最後まで内容の濃いものにしたいです。また、廃車解体するのが一番無難であるという結果に自分でも少し驚いています…。ですがやはり解体するのが無難であるからこそ多くの廃車が解体されるのだろうと思います。

 では最後までお読みいただき、ありがとうございました!

7.参考

・乗り物ニュース

https://trafficnews.jp/post/37661

・東洋経済オンライン

toyokeizai.net

・ミドルエッジ

https://middle-edge.jp

・毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20171127/dde/041/020/032000c

・JR東日本

www.jreast.co.jp/

・東急電鉄

www.tokyu.co.jp/

おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました

また、掲載されている情報は研究公開当時のものです。現在とはとは多少異なる場合があります。