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なるの台本置き場

【男4:女2】ミス・フローリア

2021.04.25 12:00

男4:女2/時間目安60分



【登場人物】

フリン:大衆紙を取り扱う新聞社の記者

リティ:正義感が強い刑事

ミモザ:ラブグッド侯爵家当主

シュエット:ミモザの娘

ロウ:ミモザの執事。料理が得意

ニア:ミモザの執事。綺麗好き

上司:フリンの上司。

刑事:リティの後輩でありバディ。


※作中に出てくるNは場所や時間を表しているだけです。



(以下をコピーしてお使い下さい)


『ミス・フローリア』作者:なる

https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/16811829

フリン・N1(男):

ミモザ・N2(女):

リティ・N3(男):

シュエット(女):

ロウ・上司(男):

ニア・刑事(男):




-------- ✽ --------






【新聞社内】



001 フリン:あの……確認お願いします。


002 上司:おい……何だこの記事は!小説書いてるんじゃないんだ!もっと他に書き方あったろ!


003 フリン:す、すいません……。


004 上司:お前何年記事書いてんだ!さっさと書き直せ!


005 フリン:はい……すいません……。







【警察署】



006 リティ:了解。すぐ向かいます。……おい!行くぞ。


007 刑事:はい!……また誘拐ですか。


008 リティ:あぁ、今回は5歳の女の子だそうだ。


009 刑事:これもまた……あの同一犯ですか?


010 リティ:恐らくな。また現場にフクロウの羽が残っていたそうだ。


011 刑事:誘拐された子に接点はなく、共通点は子供って事だけ。犯人の手かがりはフクロウの羽。


012 リティ:共通点……他に何かしらあるはずなんだよな……クッソ!なんなんだ?







【ラブグット家、ミモザの部屋】



013 ミモザ:おはよう、シュエット。今日の予定を教えて頂戴。


014 シュエット:イエス、マァマ。今日は朝食後にケイティ院長を訪問。その後ベネット様とお茶会。以上よ。


015 ミモザ:あら、ベネットと会うのは今日だったわね!ならドレスは昨日届いた新作のものにしましょう。シュエットはどんなドレスにしましょうね?


016 シュエット:ふふ、マァマの仰せのままに。







【路地裏】



<ロウが敵と交戦中>


017 ロウ:あーあー、騎士が逃げてばっかりとは情けない……オラッ!


018 ニア:ロウ、もっと綺麗に処理をしろとあれほど……。


019 ロウ:そんな事言われても無理だろ。


020 ニア:まぁいい。ただ、子供が見てるんだ、程々にな。


021 ロウ:はいはい、わかったよ……あっ!ニア、そっちに一匹行ったぞ!


022 ニア:あ゛?……チッ……逃がすかよ!……っ!!


023 ロウ:はは、お見事。でもニア……人の事言えないんじゃないか?


024 ニア:は?


025 ロウ:お前服見てみろよ。


026 ニア:あー……やっちまった……。


027 ロウ:帰ったら洗濯だな。


028 ニア:それはお前の分までやれってことでいいのか?


029 ロウ:代わりに夜食を作ってやる。どうだ?


030 ニア:はぁ……乗った。さてと……小さなお嬢さん、一緒に家に帰ろうか。……なーに言ってんだ、同じ家に帰るんだよ。


031 ロウ:これからは一緒に住むんだ。大丈夫、新しいお母様は優しいから。







032 フリン:はぁ、そろそろ本棚の整理しないとな……この本昔よく読んだな……こっちは……あぁ〜実家から持ってきたやつか。これもよく読んでたな。あとは……あれ、これって……うっわ、昔書いた小説か。懐かしいな……あとこれもか。あんまり売れなかったな……はは。また新しいやつ書きたいけど読んでくれる人がいないんじゃなぁ……あいつ元気かなぁ。







033 リティM:一件目の被害者は2歳の男の子。二件目は8歳の女の子。三件目は5歳の女の子。……他の子も年齢はバラバラか。……あと身分は……それもバラバラか。大体、なんで貴族の子供が誘拐されてんだ?一体どういうことだよ……。既に被害者は5人か……早くなにか見つけねぇと……。







034 N1:ラブグット家、書斎


(間)


035 ミモザ:今回は……ここかしらね……シュエット、どう思う?


036 シュエット:マァマが選んだところでいいと思うわ。


037 ミモザ:そう?ならここにするわ。


<ノックしてからロウがドアを開く。ロウとニアが入室>


038 ロウ:失礼します。ミモザ様、お呼びですか?


039 ミモザ:えぇ、少しおつかいを頼みたいの。


040 ニア:おつかいなんて珍しい。


041 ミモザ:ふふ、ただのおつかいよ。この地図を頼りに行ってきてね。……ええっと、ロウはこっちで、ニアはこっちをお願い。


042 ロウ:2人バラバラ、ですか。


043 ミモザ:どちらもちょっと急ぎでね。今から行ってきてくれるかしら。


044 ロウ:ミモザ様のご命令とあらば。


045 ミモザ:よろしくね、2人とも。


046 ニア:ご主人、ちなみに今晩は何のおつかいで?


047 ミモザ:ロウは獅子、ニアは猫、かしらね。


048 ニア:なるほど……かしこまりました。


049 ミモザ:あぁ、そうそう。ロウはシュエットと一緒に行って頂戴ね。外はもう真っ暗だから。ニアは1人でも大丈夫よね?







050 N1:街の喫茶店


(間)


051 リティ:ふぅ……。


052 刑事:どこも連続誘拐事件の話ばかりですね。


053 リティ:そうだな。


054 刑事:そりゃあ子供がいる親は怖いですよね……貴族の子供まで攫われてるとなると、平民からすれば為す術無し、ですもんね。


055 リティ:刑事のお前が言うんじゃねぇよ。それを解決するのが俺らの仕事だろうが。


056 刑事:そうですけど……誘拐された子供はもう7人ですよ?不安の声も大きくなる一方です。


057 リティ:まぁ……そうだな。……市民のためにも、早く事件の手がかりを見つけないとな。


058 刑事:そうですね。


059 リティ:さてと……ブレイクはこの辺にして、聞き込み再開するぞ。







060 N3:新聞社内


(間)


061 フリン:お呼びでしょうか?


062 上司:あぁ、ちょっと今時間いいか?


063 フリン:はい。……何でしょうか?


064 上司:お前、昔占いとか調べてたよな?


065 フリン:まぁそれなりに……。


066 上司:それならこれ、追ってみろ。


067 フリン:これは?


068 上司:別のやつが追ってた記事なんだが中々いい記事にならなくてな。


069 フリン:それで僕に?


070 上司:あぁ。お前ならその記事、ものに出来るだろ。


071 フリン:はい、分かりました。ありがとうございます。


072 上司:んじゃ、よろしく〜。


073 フリン:これは……。







074 N2:被害者家族、自宅前


(間)


075 リティ:そうですか。えぇ……はい……なるほど。ありがとうございました。……ここの家もか……なんか関係あるのか?……うーん。


076 刑事:先輩!何かわかりましたか?


077 リティ:あぁ、一応な。しっかし……。


078 刑事:何か問題ですか?


079 リティ:『秘密のお茶会』『ミディア庭園』そして『アルビア孤児院』。聞いて思い浮かべるものは?


080 刑事:……ミス・フローリア?


081 リティ:正解。どこも新聞で話題になったものだ。『謎の夫人、ミスフローリア』ってな。


082 刑事:あれ、でも、ミス・フローリアって……。


083 リティ:あぁ、正体が分かっていない人物。誘拐された子供達の家族はみんな彼女が関連している場所を訪れているらしい。手がかりがない以上、今俺たちに出来るのは彼女について調べることくらいだな。


084 刑事:分かりました。俺は知り合いの令嬢達に情報がないか聞いてみます。


085 リティ:あぁ、何か分かったら連絡してくれ。……俺はあそこに行ってみるかな。







086 N1:ラブグット家、キッチン


(間)


087 ニア:ロウ!料理をした後はちゃんと片付けろって言ってるだろ?!


088 ロウ:あ、後でやろうと思ってたんだ。悪い悪い。


089 ニア:手際も味もいいのに、何を間違えたらあんなにキッチンがめちゃくちゃになるんだよ!


090 ロウ:だから悪かったって。


091 ニア:……分かればいい、分かれば。


092 シュエット:ギン、ネコ。


093 ニア:うぉっ?!?!……びっくりした……居るなら声掛けてくれよ……。


094 シュエット:ずっと居たのに気づかないネコが悪い。


095 ロウ:こんにちは、シュエット。昼まで起きてて大丈夫なのかい?ずっと起きたままだろう?


096 シュエット:大丈夫、マァマが出かけている時に寝るから。マァマがそうしていいって。


097 ロウ:そっか、それなら良かった。


098 ニア:……ところで、こんな時間に俺たちに何か用か?


099 シュエット:あ、そうだ……マァマが呼んでる。あの日について話しておこうって。


100 ロウ:うん、分かった。すぐ行く。ありがとう、シュエット。


101 シュエット:うん。私伝えたからね。じゃ。


102 ニア:もうそんな時期か。


103 ロウ:うん。来週あたりかな。


104 ニア:はーっ……俺たちがここに来てどのくらい経った?


105 ロウ:あれからもう……15年かな。







【フリン自宅】



106 フリン:この記事……あれ?占いの記事じゃないのか。


<資料を読むフリン>


107 フリン:……ん?先祖返りって何だ?……辞書……あれ、どこやったっけ……あったあった。えーっと、先祖返りとは『何代も前の先祖がもっていた遺伝上の形質が、突然その子孫に現れること。』……どういう事だ?それにこの容姿……魔女のことなのか?







【ラブグット家・別館】



108 ミモザ:おはよう。よく眠れたかしら?……ここ?ここは貴方の新しいお家よ。……えぇ。朝ごはんできてるわ。……ママ?……ママはお家にいるわ。……えぇ、今日はうちで遊びましょ?歳が近い子も多くいるから。どうかしら?……ふふ、大丈夫よ。すぐ仲良くなれると思うわ。この服に着替えて下降りてらっしゃいね。







109 N1:新聞社内


(間)


110 リティ:よう、久しぶりだな。


111 上司:……リティ!久しぶりだな!どうした?こんな所に何か用か?


112 リティ:ちょっと聞きたいことがあってな。……その部屋借りていいか?


113 上司:あぁ。もちろんだ。……(社員達に向かって)ちょっとこの部屋使うからな!……それで?話ってなんだ?


114 リティ:……『ミス・フローリア』について何か情報持ってないか?


115 上司:『ミス・フローリア』か……俺達も長年追ってる山だな……こっちで分かってるのは、ごく稀にミス・フローリア名義でお茶会が開かれるって事くらいだ。


116 リティ:やっぱりお茶会か……近々でいつお茶会が開かれるか、とか分かるか?


117 上司:いや、そこまでは俺達も分からない。


118 リティ:そうか……。


119 上司:そうだ……。うちのやつがお茶会について調べた時に、何度も参加しているご婦人が1人いたんだ。


120 リティ:誰だ?!それは!


121 上司:それが……ベネット夫人だ。


122 リティ:ベネット夫人って、伯爵夫人じゃないか!


123 上司:あぁ。だから俺達もこれ以上は踏み込めなかったんだ。


124 リティ:伯爵夫人に招待状を出すほどの人物なのか、『ミス・フローリア』は。


125 上司:かなりの大物、という事しか現状わからなくてな。……でも、気をつけろよ。他の新聞社で『ミス・フローリア』について調べてたやつがこの前大怪我をしたらしくてな。


126 リティ:そうなのか?


127 上司:あぁ、夜、馬車に乗っていたら襲われたそうだ。関係があるかどうかは分からないが、そいつが彼女を追いかけていたのは間違いないからな。


128 リティ:ご忠告感謝するよ。だが俺も一刑事だ。そんなことに負けやしないよ。


129 上司:あはは……お前はそういうやつだったな。


130 リティ:まあな。……俺はそろそろ失礼するよ。色々とありがとうな、助かった。


131 上司:もう行くのか?


132 リティ:すまん、色々と追われててな。またゆっくり酒でも飲もう。


133 上司:あぁ、わかった。またな。


134 リティ:また何か情報があったら連絡してくれ。じゃあ。







135 N3:深夜、ラブグット家


(間)


136 ミモザ:シュエット、これロウに飲ませて。


137 シュエット:うん、分かった。着替えさせなくて大丈夫?


138 ミモザ:汗かいてるだろうから一応替えさせて。


139 シュエット:イエス、マァマ。


140 ニア:…んっ……ママ……。


141 ミモザ:ちょっとおでこ触るね……まだ熱高そうね……ニア、少し口開けられる?


<薬を飲ませる>


142 ニア:ん……にがっ……。


143 ミモザ:よし。ニアはこれで大丈夫……シュエット?そっちはどう?


144 シュエット:薬飲ませたらすぐ寝ちゃったよ。


145 ミモザ:寝れたのね、良かった……ここはもう大丈夫だからシュエットはタオル濡らしてきてくれるかしら?


146 シュエット:うん。


147 ミモザ:あ、シュエットまって(※被せ)


148 ニア:(※被せ)……ママ?


149 ミモザ:ん?どうしたの?ちょっと待ってね。


150 ニア:やだ……。


151 ミモザ:ニア、ちょっと待ってて。すぐ戻るわ。


152 ニア:やだ……!


153 シュエット:マァマ、いつも通りフクロウ飛ばしておくから、マァマの奥の部屋使うね。


154 ミモザ:えぇ、お願い。……ごめんね、寂しかったね。大丈夫、ママがそばに居るわ。


155 ニア:……うん。離れちゃダメ……。


156 ミモザ:ふふ、甘えんぼさんね。大丈夫よ、ニアが眠るまでこうやって頭撫でてあげるからね。


157 ニア:……うん。ママに頭撫でられるので好き……。


158 ミモザ:ゆっくり休んで、私の可愛い子。







159 N2:警察署内


(間)


160 リティ:くっそ、1晩で2人?同時に起きていたって事か?……これで何人だ……。


161 刑事:先輩!子供達の事で共通点になりそうな話が!


162 リティ:なんだ?


163 刑事:エマちゃんの家の隣に住んでいるご婦人聞いたんですが……。


164 リティ:エマ……6人目の被害者か。


165 刑事:はい。ご婦人が言うには、エマちゃん、目が赤く光っている日があったそうです。


166 リティ:……は?


167 刑事:だから、目が、赤く、(※被せ)


160 リティ:(※被せ)それは分かった。それは、分かった。……いやでも、それってただの光の加減じゃないのか?


169 刑事:うーん……でもエマちゃんは碧眼ですよ?


170 リティ:碧眼か……どうやっても赤には見えねぇなぁ。


171 刑事:だから気になったんですよね。しかもご婦人がエマちゃんを見たのが夜だったらしいんですよ。『夜のお庭で目が赤く光るエマちゃんを見た』って。


172 リティ:……関係ないような気もするが……一応、他の被害者にも同じような噂がなかったかどうか調べて見てくれ。







173 N2:街中


(間)


173 フリン:すいません!ちょっとお話伺ってもいいですか?…あ、すみません。失礼しました。……すいません!すぐ終わりますのでちょっとお話伺っても……あ、すみません。……やっぱりダメか……あの、すいません!


174 シュエット:はい?


175 フリン:あ、あの、ちょっとお話伺ってもいいですか?


176 シュエット:えーっと……。


177 ロウ:シュエット?どうかしたのかい?


178 シュエット:このお兄さんが聞きたいことがあるって。


179 ロウ:妹になにか……?


180 フリン:あ、私記者をやっていまして、今調べてる事について少しお聞きしたいことがあるんです。お時間は取らせませんので。


181 ロウ:はい、大丈夫ですよ。なんですか?


182 フリン:おふたりは『先祖返り』ってご存じですか?


183 シュエット:え?


184 フリン:『先祖返り』、聞いたことありませんか?


185 シュエット:えっ、と……。


186 フリン:何かご存じなんですか?!


187 ロウ:俺達は何も知らないです。失礼します。


188 フリン:あっ……。


<ロウとシュエットが立ち去る>



(間)



189 シュエット:……ロウ、あの記者……。


190 ロウ:そうだね。この話はご主人様にお伝えしないといけないね。


191 シュエット:えぇ。早く帰りましょう。あと行くところは……。







192 N1:ラブグット家、書斎。


(間)


193 ニア:ご主人、ケイティ院長からお手紙です。


194 ミモザ:ケイティ院長から?珍しいわね。


195 ニア:そうですね。……あとお茶とケーキをお持ちしました。


196 ミモザ:ありがとう……(手紙を読む)……え?


197 ニア:いかがなさいました?


198 ミモザ:X(エックス)が死んだらしいわ。


199 ニア:え?Xってあの甘い物が好きでお屋敷に遊びに来る度にケーキを2つは食べてたあの?


200 ミモザ:えぇ。……参ったわね……。近いうちに迎えに行かないといけない子がいるのに……。


201 ニア:それについてケイティ様は何と?


202 ミモザ:新しい人をスカウトするつもりだそうよ。私の方でも適任がいないか探して欲しいって。


203 ニア:我が家の秘密を守れる者でかつ力のある者…誰かいますかね…?


204 ミモザ:誰かいい人が見つかるといいのだけれど…。







205 N2:新聞社内


(間)


206 リティ:度々すまない。ちょっといいか?


207 上司:あぁ、どうしたんだ?


208 リティ:忙しいところ悪いがお前の部下で占いとか言い伝えとかに詳しいやつ居ないか?


209 上司:それなら……フリンだな。呼んでくるか?


210 リティ:あぁ、頼む。


<上司がフリンを呼ぶ>


211 上司:おい!フリン!ちょっと来い!


212 フリン:……は、はい!……お呼びですか?


213 上司:あぁ、紹介する。こちらリティ刑事だ。


214 リティ:リティだ、よろしく。


215 フリン:フリンです。僕に何か…?


216 上司:私はこの辺で失礼するよ。ちょっと仕事が立て込んでてな。リティゆっくりして行ってくれ。じゃあな。


<上司が退席>


217 リティ:急に悪いな。えーっと……。


218 フリン:フリンです。


219 リティ:フリンはオカルトの類いに詳しいのか?


220 フリン:詳しいかどうかは分かりませんが一応色々調べてはいます。


221 リティ:そうか……お前の知ってる範囲でいいんだが、目が赤く光る現象とかないか?


222 フリン:目が赤く光る?


223 リティ:あぁ。……最近子供の連れ去りが頻繁に起きているのは知ってるよな?


224 フリン:えぇ、もちろん。


225 リティ:連れ去られた子供たちなんだが、目が赤く光るのを近所の人や両親が見てるんだ。情けない事に、そのくらいしか共通点が見つかってなくてな……。


226 フリン:なるほど……目が光る頻度とかって分かったりしますか?


227 リティ:それが年に1度、誕生日に1番近い満月の日らしい。


228 フリン:よくそこまで詳しく分かりましたね。


229 リティ:誘拐された子供の一人が体が弱かったらしいんだ。母親とずっと一緒だったそうで、またその母親が毎日、日記をつけててな。母親様々だよ。


230 フリン:なるほど……それなら……これかもしれないですね。


<フリンがリティに資料を見せる>


231 リティ:先祖返り?


232 フリン:聞いた事ありますか?


233 リティ:いや、ないな……。


234 フリン:世界各地でまだ魔女狩りがあった頃、先祖返りが見られた者は皆魔女と呼ばれたそうで、ほとんどが魔女狩りの対象になったみたいです。


235 リティ:その魔女が今の時代にも現れたと?


236 フリン:現れたのか、ただ存在が知られていなかっただけなのかは分かりませんがね。……魔女と認定される基準は皆、目が赤い者とされたそうですから、恐らく間違いないと思います。


237 リティ:魔女の復活、か。こんな事が広まったら大惨事になるな。


238 フリン:そうですね……。


239 リティ:とりあえず助かったよ。ありがとうな。


240 フリン:いえ、でもまさか誘拐事件の裏側にこんな事が隠されているとは……。







241 フリンN:その後もリティ刑事は僕の元を訪ねてきた。捜査協力という名の下に色々な話を聞かせてもらい、僕も新聞社で手に入れられる限り全ての情報を彼に渡した。ミス・フローリアという人物について深く調査を始めた頃、僕とリティ刑事の元にお茶会の招待状が届いた。



(間)



242 ミモザ:私の元まで辿り着いた優秀な刑事さんと記者のおふたりへ。……私のお茶会にご招待致します。3日後の夜、ミディア庭園薔薇屋敷前でお待ちください。私の子供達がお迎えに上がります。ミス・フローリア。







243 N2:ミディア庭園、薔薇屋敷前


(間)


244 リティ:ここでいいのか?


245 フリン:はい。薔薇屋敷はここです。


246 リティ:しかし……フローリアが子持ちだったとはな。


247 フリン:実子であれば驚きですけどね……。


248 リティ:誘拐した子供なら話は別だな。


249 フリン:いつ来るんですかね……。


250 シュエット:リティ様、フリン様。


251 フリン:うわぁ!ど、どこから?


252 リティ:お前が……フローリアの子供?


253 シュエット:えぇ。お母様からおふたりを屋敷までお連れするようにと。


254 リティ:……分かった。よろしく頼む。


255 シュエット:では、こちらへ。


256 リティ:あぁ。


<歩きながら>


257 フリン:(小声)本当に大丈夫なんですか?


258 リティ:(小声)今はあいつらに従うしかないからな。まぁ何かあったら護ってやる。


259 フリン:(小声)いや、でも……あの子なんか怖くないですか?


260 リティ:(小声)そうだなぁ……普通、では無いかもしれんな。


261 シュエット:あぁ、そう……屋敷までの行き方は秘密事項となっております故、おふたりには眠って頂かなければなりません。


262 フリン:眠らなくても目隠しとかじゃ駄目なんですか?


263 シュエット:景色は勿論、人の声や街の音も聞かせてはならないとお母様が。もし大人しく従って頂けない場合は多少の暴力も致し方ない……と。


264 フリン:それはなんと物騒な……。


266 リティ:その為の後ろの兄ちゃん達か。


267 シュエット:えぇ。……それで、従って頂けますか?


268 リティ:ああ。どうすればいい。


269 シュエット:こちらを。


270 フリン:これ、は?


271 シュエット:そのハンカチには特殊な方法で育成したラベンダーのエキスが含まれています。一息吸えば眠りに落ちます。


272 フリンM:僕達は少女に促されるがままハンカチを口に当てて一息した。あっという間に意識は夢の中に引きずり込まれた。







【馬車の中】



273 フリンM:不思議な夢を見た。森の奥深くに植わっている大きな木の上に沢山の梟と一人の少女が座っていて、じっとこちらを見ている。そんな夢。


274 リティM:不思議なものを見た。獣の耳が生えた大柄な男。猫のような長い尻尾をもつ男。そして羽が生えた少女。







275 ミモザN:フクロウがトントンと窓を叩いた。シュエットと同じ瞳を持つこのフクロウが来たということは作戦は上手くいっている、という証拠。私は子供たちに客が来ることを伝えるため、屋敷を後にした。


276 フリンN:ガタン、と馬車の扉が開く音に目を覚ますと夢に出てきた屋敷が目の前にあった。リティ刑事は既に起きていて、背の高い若い男性と話をしていた。その男は、あの不思議な少女の近くにいた男のうちの一人だった。男は僕達を客室に案内し、『あとは任せた』とメイドに伝えて去っていった。


277 ニアM:客といっても気持ちよく出迎える事ができる相手ではなかった。向こうはこちらに探りを入れようとしている事は分かっていたし、何よりご主人に向ける目線が気に食わなかった。食事中でも構わず隙を見つけようとする目。思わず飛びかかりそうになるのをグッと堪えて業務にあたる。招かれざる客を見張るのが俺の仕事。


278 リティM:あの女当主からは、『夕食は19時。それ以外は何をして過ごしても構わない』と初日に言われていた。……つまり、自由に屋敷を見て回って構わない、という意味だ。向こうが自由にしていいと言うのだからそうさせてもらおう。必ず誘拐の証拠がこの屋敷にはあるのだから。


279 ロウM:客人とはいえど屋敷の中をウロウロされるのはあまりいい気はしない。……ただでさえ招かれざる客なのだから当然だ。屋敷の中は我々の目が必ずあるから好き勝手されることはないだろうが……客人の滞在も間もなく終わる。あと少しの辛抱だとニアに言い聞かせながらもどこか落ち着かなかった。……何も起こらなきゃいいが、な。


280 シュエットM:……何も起こらなかったのに。余計な事さえしなければ。……マァマの邪魔さえしなければ何も知らずに済んだのにね……私は夜中にこっそり部屋を出る2人に声をかけた。


281 シュエット:そこで何してる。


282 リティ:お前は……。


283 フリン:……シュエット、だったよね?


284 シュエット:そう。私はマァマの娘。


285 リティ:ミモザ・ラブグッドに娘は居ないはずだが。


286 シュエット:その話はマァマが直接する。ネコ。


287 ニア:……どうぞこちらへ。



(間)



288 ニア:ご主人、お連れしました。


289 ミモザ:どうぞ。……どうぞ、お掛けになって。


290 フリン:失礼します。


291 シュエット:マァマ。私達は……。


292 ミモザ:ロウ、ニア、シュエット。貴方達も残って頂戴。


293 シュエット:イェス、マァマ。


294 リティ:それで?何故俺達を呼んだ。


295 ミモザ:リティ刑事。……うちの屋敷からは何か出ましたか?


296 リティ:いや、何も。


297 ミモザ:ではそちらの記者様にお聞きしましょう。シュエットという名前に心当たりは?


298 フリン:シュエット……。


299 リティ:なぁ、いい加減に……


300 フリン:行方不明の子供。


301 リティ:は?


302 ミモザ:ふふ、流石記者様ですね。


303 リティ:まさかその子供がこの嬢ちゃんだって言うのか?


304 ミモザ:その通りですよ?……シュエットは、この一連の誘拐事件が明るみに出るよりもっと前にうちの子になりましたから。


305 リティ:それは自白と受け取っていいのか?


306 ミモザ:お好きなように。


307 リティ:はぁ……。じゃあそれを本部に……


308 フリン:待ってください!


309 リティ:何だ。


310 フリン:夜が開けるまでもう少しあります。ミモザ様、貴女の事をもう少し聞かせて頂けませか?


311 ミモザ:リティ刑事がそれでも宜しければ。


312 リティ:好きにしろ。


313 フリン:ありがとうございます。……ではまず、何故ミス・フローリアになったのか。そのあたりから聞かせて下さい。


314 ミモザ:そうですね。……ラブグッド家は侯爵家でありながらあまり名の知れた家ではありません。前当主である父は母と静かな暮らしを望んでいた為、あまり大きな事業などはしませんでした。そんな家で生まれ育った私は……そうですね……窮屈に感じていたのです。まだ世界を知らなかったと言えばその通りなんですが。


315 フリン:でも、侯爵家を継いでからなら、ミモザ様の好きな様に出来たのでは?


316 ミモザ:おっしゃる通りです。しかし、貴族の世界はそうもいかないのですよ。……名ばかりの侯爵家を継いだ若き女当主に何が出来るでしょうか。


317 リティ:それでミス・フローリアとして活動を。……納得だな。


318 フリン:あれ……でも、


319 ミモザ:……えぇ、今フリン様が疑問に思ったのは間違いではありませんよ。だから、後援をお願いしたのです。


320 リティ:ベネット夫人か。


321 ミモザ:えぇ。ベネット夫人とはお茶会で知り合いまして、とても良くして下さいました。縁も繋いで頂いて。夫人がいなければ今の私はおりません。お茶会も、庭園も、孤児院も、夫人の助けがあってのものです。


322 フリン:ミス・フローリアの代名詞と言われる3つですね。もう少し詳しく聞いてもいいですか?


323 ミモザ:そうね。「お茶会はちゃんとした意見交換が出来るご令嬢をお呼びしてます。」……この言い方をすれば分かって頂けるかしら?


324 リティ:なるほどな。


325 ミモザ:ふふ、仕方ないのですよ。私たち貴族の女性はパーティやお茶会くらいでしか情報交換が出来ない。……情報は持っているに超したことはないですからね。忖度や貶し合いのような無意味な事をしている時間があったら有意義な時間を過したい。それだけですよ。


326 フリン:なるほど……。


327 ミモザ:あと……庭園は私の趣味のようなものです。特に、作った意味はありません。


328 フリン:そうなんですね……。(メモをとりながら返事をする)


329 リティ:……それは嘘、だろ?


330 ミモザ:……どういう意味で?


331 リティ:あの庭園が位置している場所……あそこは元々、前侯爵家夫人……つまり、あんたの母親が所有していた建物があったはずだ。意味が何も無い、ってことはないだろ。


332 ミモザ:そこまでお調べになっていたのですね。……お手上げです。ふふ。


333 フリン:詳しくお聞きしてもいいですか?


334 ミモザ:えぇ。……あそこは刑事さんの言う通り、元々母が所有していた建物がありました。しかし家で少し揉め事が起きまして、取り壊されてしまいました。母が病を患った後、父が母の為に新しい屋敷を建てようとしていたのですが……2人とも完成を見届ける事は出来ませんでした。母が亡くなった後、父も後を追うように亡くなりましたから。


335 フリン:そう、だったのですね。


336 ミモザ:……でも、今はああして沢山の方が訪れる場所となりました。父と母も喜んでくれていると思います。


337 フリン:なるほど……。最後に孤児院について、聞かせて下さい。


338 リティ:それは俺も聞きたいな。なぜ、誘拐をするあんたが、孤児院を作ったのか。


339 ミモザ:そうですねぇ……どこからお話しましょう……ケイティ様をご存知ですか?


340 リティ:ケイティ……アルビア孤児院の院長の事か?


341 ミモザ:えぇ。彼女からお話を頂きまして。……孤児院の後援人にならないか、と。喜んで引き受けさせて頂きました。それがアルビア孤児院設立までの流れです。


342 リティ:そこにいる子供はどこから連れてきたんだ?


343 ミモザ :ふふ、鋭い事……。


344 フリン:先祖返り、と関係はありますか?


345 ミモザ:まぁ!そこまで辿り着いていたのですね。……ふふ……間違いはなかったということですね。(呟く)……ふふ……あはは!


346 シュエット:マァマ?


347 ミモザ:シュエット。こちらにいらっしゃいな。


348 フリン:じゃあこの子も……?


349 ミモザ:えぇ。……シュエットは梟、そして後ろにいるニアとロウは猫と銀狼の。


350 フリン:動物の先祖返り……?


351 ミモザ:この子達の先祖は魔女狩りなどで殺された者達。人間と動物の子が生まれても別におかしくは無いでしょう?


352 リティ:昔の話なんて今はどうでもいいんだよ。孤児院にいる子供たち、どこから連れてきた。


353 ミモザ:あの子達は……親に愛されなかった子供達です。私が親代わりとなって育てています。……子を愛さない親は、親ではありません。……なにか間違ったことを言っていますか?


354 リティ:誘拐は犯罪だ。あんたがそれを分からない訳が無い。


355 ミモザ:なら本人達に聞いたらどうです?


356 リティ:どういう意味だ。


357 ミモザ:そのままの意味です。シュエットもロウもニアも、貴方の言い方で言えば誘拐された子供ですから。


358 リティ:どうなんだ?


359 シュエット:マァマ以外に親はいない。


360 ニア:シュエットに同じく。ご主人以外の親なんて知らないし、ご主人以外の人の元に行く気はないよ。


361 リティ:はぁ……。この子達はそういうかもしれないが、他の子達はどうなんだ?もっと幼い子供もいるだろう。


362 ロウ:私たちの様な先祖返りは年に一度の地獄のような苦しみを味わうんです。それには適切な対処をしなければいけない。それで亡くなった子供も多いと聞きます。でも……ミモザ様はそんな子供を受け入れて看病して下さる。元々迫害を受けて生きてきた者がほとんどですから。幼い子供でも何処にいるべきかの分別くらいはつきますよ。


363 ミモザ:リティ刑事。私から一つご提案があります。


364 リティ:なんだ。


365 ミモザ:私達の協力者になりませんか?


366 リティ:は?


367 ミモザ:私達には警察官の協力者がおりました。しかし、つい最近事故で亡くなりまして。警察上層部の方なのですが……ご存知ではありませんか?


368 フリン:優秀な刑事さんが亡くなったと記事にありましたね。その新聞、うちで出していたはず……。


369 ミモザ:その方、異例の速さで昇進したのではなくて?よく思い出してみてください。


370 リティ:いや、確かに速すぎるとは言われていたが……それは優秀だったからで……。


371 ミモザ:それだけでは無い、といえば優秀な刑事さんならわかっていただけるかしら?


372 リティ:……なるほどな。


373 フリン:孤児院を経営する神殿と警察の癒着ですか……昔から有名な話ですね。


374 ミモザ:ふふ、その顔……心当たりがありそうですね?


375 リティ:しかし!……子供は親と一緒にいるべきで……!


376 ミモザ:リティ刑事。……子供は親を選べません。そんな子供達ができる選択肢を増やしてあげてもバチは当たりませんよ。それに……この可哀想な子供達を貴方は見て見ぬふりをするおつもりですか?


377 リティ:……っ!


378 ミモザ:私は、私のやっていることに誇りを持っています。家に帰りたい子供は帰します。ただそうならない子供がほとんど、というだけの話です。……一緒に子供達を助ける手伝いをして下さいませんか?私達には貴方のような正義感溢れる方が必要なんです。


379 リティ:……そうやって別の刑事も丸め込んだのか。


380 ミモザ:いえ、あの方とは面識はありません。私からスカウトするのは貴方が初めてですよ。


381 リティ:……そうか。


382 ミモザ:えぇ。……改めてお聞きします。リティ刑事。私たちの協力者になっては下さいませんか?


383 リティ:……少し時間をくれないか。


384 ミモザ:もちろんです。しかし……この事実を公表することはありませんよう。……Xのようになりたくは無いでしょう?ふふ。


385 シュエット:マァマ、そろそろ時間。


386 ミモザ:あら、もうそんな時間なのね。……ではこの辺で私は失礼致します。リティ刑事、いいお返事をお待ちしておりますわ。


387 リティ:……あぁ。


<扉付近で立ち止まるミモザ>


388 ミモザ:あぁそう……フリン様。


389 フリン:は、はい。


390 ミモザ:今度、『ミス・フローリア』という人物について本を書いてみませんか?


391 フリン:俺は新聞記者で、


392 ミモザ:貴方が昔出版した本。あれを読ませて頂いたわ。……それを踏まえた上で、貴方にお願い出来ればと思うのだけれど。


393 フリン:……あの本を……?


394 ミモザ:えぇ。何度もフローリアの本を書きたいと出版社から話を貰っていたのだけれどお願いしたい方がいらっしゃらなくて。……どうかしら?


395 フリン:……俺でよければ。


396 ミモザ:そう。……また連絡するわ。……それじゃあ。


<ミモザが部屋から出ていく>







397 N3:ラブグッド家屋敷、その後。


(間)


398 ニア:ご主人!本買ってきたよ!


399 ミモザ:やっと出版になったのね。


400 ロウ:既に品薄になるほどの人気みたいですよ。飛ぶように売れている、とか。


401 シュエット:マァマ眠い……。


402 ミモザ:ふふ、シュエットも頑張って起きていたものね。少し寝てらっしゃい。


403 シュエット:うん……マァマのお膝がいい……。


404 ミモザ:ふふ、いいわよ。いらっしゃいな。


405 ニア:あぁ!ずるいなぁ、シュエットばっかり。


406 ロウ:ご主人様のお側は落ち着きますからね。仕方ないです。


407 ミモザ:ふふ……あはは!そう言ってくれるの?坊や達。


408 ニア:こう思えているのもご主人のおかげだよ。


409 ミモザ:……そう。


410 ロウ:あの、ご主人様。


411 ミモザ:なぁに?


412 ロウ:この本、私も読んでいいですか?


413 ミモザ:ふふ、いいわよ。……貴方のお友達の本ですもの。最初に読んだらいいわ。


414 ロウ:ありがとうございます。


415 ニア:ご主人、俺も!俺も読みたい!


416 ミモザ:いいわよ。でも、その前にニアはまた新しい子のお迎えをお願いね。


417 ニア:えぇー、また大変なところなんじゃないの?


418 ミモザ:大丈夫よ、今回は心強い協力者も一緒だから。


419 ニア:そっか。……それならいいや。了解。


420 ミモザ:頼りにしているわ。私の可愛い子供達。



(終)




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*おまけ*


『ミス・フローリア-使用人達の日常-』

作:なる


※必ず使わなければいけない台本ではありません。おまけです。