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ハッパノミクス
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ハッパノミクス本ダウンロード無料pdf - メディア掲載レビューほか ハッパノミクス 麻薬カルテルと聞けば暴力を武器に勢力を拡大している印象があるかもしれない。だが、組織のボスへの取材や経済学的視点で麻薬ビジネスを分析した本書を読むと彼らの行動原理に驚かされる。 麻薬密売の世界は徹底的に合理性を追求するという。無駄に抗争せずに、必要とあれば商売敵とも手を結ぶ。密入国などの他の違法ビジネスはもちろん、野菜の栽培なども手がけ、事業の多角化に余念がない。メディアを使って情報を発信するし、慈善活動にも寄付する。成功している組織は世界的な大企業と重なる部分が多い。 著者は組織の内情を暴き、取り締まり手法を改めるべきと投げかける。無法者ではなく、したたかな企業経営者と対峙する姿勢がなければ麻薬カルテルの経営は揺るがないとの指摘はもっともだ。評者:栗下直也(週刊朝日 掲載) 内容紹介 麻薬王は名経営者なのか? アンデスのコカ畑から、エルサルバドルの監獄まで、麻薬の「聖地」をくまなく取材。 M&A、CSR、サプライチェーン管理、オフショアリング……巨大カルテルの多国籍企業顔負けの経営戦略を解き明かす! 「ラテンアメリカを訪れた私は、麻薬産業の恐ろしい供給面を目撃することになった。そして、麻薬密売について書けば書くほど、麻薬ビジネスが組織的なグローバル・ビジネスと酷似していることに気づきはじめた…蒸し暑い独房で一味の支配する縄張りの広さを私に自慢したエルサルバドルの極悪ギャングのボスは、まるで合併を発表するCEOのような口ぶりで、抗争中のギャング間の手打ちについて陳腐な台詞を並べた。コカを栽培するボリビアの無骨な農民は、まるで商業園芸家のような自負と専門知識をひけらかしながら、自身の植物について興奮気味に話した。…世界じゅうの麻薬産業を調べるにつけ、麻薬ビジネスを一般企業と同列に論じたらいったいどうなるだろうかと、ますます興味が湧いてきた。その集大成がこの本というわけだ」「麻薬カルテルの運営を理解すれば、麻薬カルテルが繰り出す次の一手を予測し、税金や人命を無駄にすることなく企みを阻止しやすくなる。本書は麻薬王向けのビジネス・マニュアルであると同時に、彼らに勝つための攻略マニュアルでもあるのだ」(本文より) 地を這う取材と最新の学術成果を結び付け、麻薬取引を、経済学的、経営学的に分析した初のノンフィクション。 『ウェインライトは、楽しくかつ精緻な筆致で、驚くほど儲かる洗練されたビジネス企業という、麻薬カルテルの内情を暴き出している。本書を読めば、麻薬取引をまったく異なる視点から、より現実的に把握できるだろう。必読だ」 ――モイセス・ナイム(『権力の終焉』) 「本書は、麻薬をめぐる暴力が無鉄砲なものではなく、経済的計算が極端に残酷化した結果であることを示している。……麻薬対策法の改革についての、もっとも簡潔かつ説得的な議論だ」 ――『ニューヨーク・タイムズ』紙 「粘り強い取材と学術的研究の調査に基づいた、才気煥発かつ魅力的な本だ」 ――『ウォールストリート・ジャーナル』紙 内容(「BOOK」データベースより) 『エコノミスト』エディターが、アンデスのコカ畑から、中米の監獄まで、麻薬の「聖地」をくまなく取材。M&A、CSR、サプライチェーン管理、オフショアリング…巨大カルテルの多国籍企業顔負けの経営戦略を解き明かす! 著者について トム・ウェインライト Tom Wainwright 『エコノミスト』誌のエディタ。2013年までメキシコ支局のチーフ(担当範囲は中米、カリブ海、および南米の一部)。CNN, BBC, NPR で麻薬問題のコメンテーターを務める。 千葉敏生 ちば・としお 翻訳者 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) ウェインライト,トム 『エコノミスト』誌エディター(イギリス)。以前は同誌のレポーターをメキシコシティで務め、メキシコ、中米、および米国国境周辺地域を担当。オックスフォード大学で哲学、政治、経済学を修めた。『ハッパノミクス―麻薬カルテルの経済学』が初の著作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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EU各国は2014年に、GDP(国内総生産)を計算する際に売春や麻薬などの「地下産業」も含めるように計算方法を変えた。国によって違うが、それによってGDPは1~5%ほども増えたというのだから、これらの産業の経済規模がどれだけ大きいのかがよく分かる。麻薬産業で大きな影響力を持っているのが麻薬カルテルで、本書は彼らの活動――生産から販売までのサプライチェーンを、一般的なビジネスを営む企業の活動と対比しながら分析している。そこには「人材獲得の悩みからオンライン業者が実店舗に与える脅威まで」様々なレベルで共通点がある。著者は分析をつうじて、生産元(密売組織や大麻栽培農家)を根絶しようと試みる現在の対策には効果がないと指摘する。供給量を大幅に減らせたとしても、「独占企業」である麻薬カルテルは仕入れ価格を低く抑え続けることができるせいで、末端価格はほとんど変化しない(栽培農家がその割を食う)。つまり最終財としての麻薬市場では流通量に変化がない。さらに、麻薬を違法薬物として禁止するのではなく、政府のコントロールのもとに合法化な麻薬市場を作ることが現状を変えるのに有効な方法だろうと結論づける。つまり、麻薬カルテルを壊滅状態に追い詰めて、麻薬がらみの殺人などから一般市民を守るのに有効だということだ。麻薬カルテルが直面する課題についてジョークも交えながら書かれた本書は読んでいて思わず笑ってしまうこともあった。けれども本書で著者が何よりも示したかったのは、麻薬カルテルが麻薬を支配している現状では多くの暴力が生まれていて、それによって苦しむ人がたくさんいるという事実だろう。そのために、なんとかして麻薬カルテルをなくしたい、彼らへと通じるカネの流れを抑えたいという著者の気持ちが本書を読んでいると非常に伝わってくる。麻薬の消費量を減らすために、供給側ではなく需要側にアプローチするべきだという著者の主張は分かりやすい。入門的なミクロ経済学の授業で習う「需要曲線の下方シフト」によって、市場価格と流通量の両方が小さくなるということである。それによって麻薬カルテルへと流れるカネは減るだろう。他方で、麻薬の合法化はカルテルにダメージを与えるだろうが、消費量が減るかどうかは分からない。正直なところ、麻薬の消費量を減らすことそのものについて本書はさほど重きを置いていないように感じさせることがしばしばあり、そこが私にはやや不満だった(もちろん言及はあるし、麻薬カルテルが縮小すれば麻薬自体も減ると考えているのかもしれない)。麻薬の合法化というのは経済学の分野では昔から議論されてきたテーマの1つだ。自由市場での取引を推奨しがちと思われる経済学者の間でも合法化については意見がまちまちで、「薬物禁止という現行の制度と比べて、薬物自由化が優れた制度であるとはとうてい言えない」と主張する研究(*1)もあることは指摘しておこう(もっとも、この研究は薬物に関連する「暴力や犯罪は減るかもしれない」とも述べている)。カナダが今年(2018年)10月に大麻の所持・使用を合法化したことは記憶に新しい(米国では州レベルで合法化されている州はあるものの、国全体では違法)。麻薬カルテルにカネが流れるのを防ぐこと、そして大麻の生産・流通・消費に政府の目が届くようにすることが合法化の目的だ。これによって麻薬カルテルが大きなダメージを実際に受けるのか、また大麻の消費量がどう変化するのかなど、本書の著者は恐らく大きく注目していることだろう。「麻薬が欲しいのに禁止されているので、(仕方なく)闇市場で買う」ケースがほとんどだろうが、「禁止されているから(こそ)麻薬が欲しい」というケースもあるだろう。麻薬が合法化されれば後者のような消費者が市場から消えるので、その分は麻薬の消費量が減ることになる。けれども、一般的には、麻薬の合法化が消費量を減らすとは限らない。例えばオランダを例にあげてみよう。麻薬について、オランダは1976年から寛容な政策を採用している(麻薬の生産・所持・売買はすべて違法だが、個人使用は一定の範囲内で黙認する)。法改正から数年が経ち、若年層の間で大麻の使用が増えたことを指摘する研究が『サイエンス』に掲載された(*2)。寛容政策によって大麻へのアクセスが容易になった結果かも知れないと論文の著者たちは分析している。他方で、ハードドラッグ(コカインなど)も経験したことがある大麻の使用者は、割合で見ると米国よりもオランダの方が低い。この事実から、オランダの寛容政策がいわゆる「ゲートウェイ効果」を弱めている可能性があるとも指摘している。著者は、「もっとも危険性の高い麻薬」をこそ合法化して「法律で管理するべき」とも主張している(Conclusion章)。実際、ハードドラッグについて罰則を強化すると短期的にはドラッグの使用が減っても、長期的には中毒者やドラッグ消費量の増加をもたらす可能性があることを示した研究がある(*3)。ただしこの研究は不完全競争モデルを用いた理論的のもので、なおかつ消費量が増加するかどうかは中毒の程度によって変わるという点には注意が必要だ。また、先ほど紹介した論文(*2)の分析を見ると、ソフトドラッグを合法化しつつハードドラッグは違法にしておけばよいように思える。この辺りの問題はまだ十分に議論する必要があるのだろう。*1: Jeffery A. Miron and Jeffery Zwiebel, “The Economic Case Against Drug Prohibition,” Journal of Economic Perspectives, 9(4), Fall 1995, pp. 175-192.*2: Robert MacCoun and Peter Reuter “Interpreting Dutch Cannabis Policy: Reasoning by Analogy in the Legalization Debate,” Science, 278(5335), October 1997, pp. 47-52.*3: Peter Skott and Gunnar Thorlund Jepsen “Paradoxical Effects of Drug Policy in a Model with Imperfect Competition and Switching Costs,” Journal of Economic Behavior & Organization, 48(4), August 2002, pp. 335-354.
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