松ぼっくり
10年前、スペインを旅しました。
忘れられないのは、マリア様信仰の古い教会でのこと。
祈りの染みた空間で椅子に掛けて天井画を見上げると、まるで天に繋がっていくようでした。
あぁ、天井画ってこういう意味だったんだと、初めて肌で知りました。
そこから広場に出た途端、世界遺産の鐘が鳴り響いて、どうしようもなく涙が出ました。
地元の市場ではイチジクを買い食いし、ウサギの剥き身の山に驚愕。
満開のジャカランダは何とも美しく、また出会いたい風景です。
もちろんサグラダ・ファミリアへも行きました。
映像で見ると、石造りであまり色がないイメージだったのですが、入ってビックリ!
まるでカラフルな森の中のようです。
ガウディの人種や宗派を超えた自然讃歌のようで、すっかり魅せられました。
【2011年5月29日 スペイン バルセロナにて】
今でも建築が進むサグラダ・ファミリアで、主任彫刻家を務めておられる外尾悦郎さんは福岡市の出身です。
先日ローカルのテレビ番組で、福岡ドーム前の地行中央公園に外尾さんの作品『松の実』が設置されていることを知りました。
松の実=松ぼっくりは、ヨーロッパのアートによく登場します。
サグラダ・ファミリアにもそのデザインがありますし、象徴的な杖の頭飾りや組織のマーク、大きなオブジェもあればクリスマスツリーやリースの飾りにも使われます。
松ぼっくりは繁栄の象徴、団結の象徴なのだそうです。
外尾さんは、地元球団を応援する気持ちで市民が一致団結し、福岡が繁栄していって欲しいとの思いを込められたそうです。
上から水が流れ落ちる噴水として作られていますが、2005年の福岡県西方沖地震で給水の仕組みが壊れたらしく、今では完全な姿を見ることが出来ません。
番組の中で製作スタッフの皆さんが市の協力の下で、ホースを引っ張ってきて水が流れる姿を再現し、それを見た外尾さんは大変喜んでおられました。
私たちの脳の中にも松ぼっくりがあります。
松果体(しょうかたい)という器官です。
グリーンピース程の大きさで、その名の通り松ぼっくりのような形をしています。
主な働きとして、睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌することが知られています。
メラトニンは、睡眠と覚醒の切り替え調節をして、自然な眠気を促します。
また、様々なホルモンのコンダクターとして、体内リズムを整える役割があるようです。
アメリカではサプリメントとして一般的に使われていますが、日本ではまだ認可がありませんね。
時差ボケ解消にはバッチリなのですが。
さてその松果体、発生源が頭頂眼という光を感知する器官と同じなのだそうです。
光を感じようと生まれた細胞たちが2つに分かれ、片方が脳の奥深くに入って松果体になり、もう片方は消えてなくなるか、ごく一部の爬虫類やヤツメウナギ類に頭頂眼として残ります。
私たちは更にもう1組、ハッキリと像を見ることができる眼という器官を発達させました。
頭頂眼としての形はありませんが、ニワトリやサカナなど多くの動物の松果体は、光を感じるいわゆる「第三の眼」として機能することが解っています。
仏様の額には白毫(びゃくごう)という丸い突起があり、光を放ち世界を照らす「第三の眼」といわれます。
哲学者デカルトは、松果体を「魂のありか」と呼び、物質と精神が松果体を通じて相互作用すると考えたそうです。
つくづく不思議な松ぼっくりペアです。
脳内ホルモンの情報を少し補足しておきましょう。
食事などで摂ったアミノ酸が肝臓で分解されてトリプトファンができ、脳に運ばれてビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムとともにセロトニンという脳内ホルモン(神経伝達物質)が作られます。
セロトニンは、鎮痛や精神の安定に深く関わります。
そしてメラトニンは、セロトニンを元に脳の松果体で作られます。
朝太陽の光を浴びるとメラトニンの分泌は減少し、代わってセロトニンが増え覚醒に向かいます。
日中たくさんのセロトニンが分泌されていると、夜はたくさんのメラトニンに変わり自然な睡眠へ誘います。
セロトニン不足は、脳機能低下や心のバランスを保つことが難しくなったり、ストレス障害や睡眠障害などの原因になりうるといわれます。
原料であるセロトニンが少なければメラトニンも作れない訳ですから、睡眠のリズムが崩れるのも納得です。
元気な身体はもちろん、心の安定の原材料も食事なんだなぁ。
ご飯をちゃんと食べること、太陽をちゃんと浴びること、当たり前のようですが大切なことなのですね。
私の部屋は、東向きの窓から朝陽が入ります。
なるべく毎日、朝陽を額に浴びるようにしています。
少しの間(長時間は良くないそうですが)、うっすら目を開けて太陽の光を取り込んだりします。
疲れが抜けていないときなど、頭の芯がじんわり緩んで溶けていきます。
第三の眼に働いているのか、松果体に届いているのか、体内リズムがリセットされ、活動するためのエネルギーを光から変換している感じです。
人体版太陽光発電、エコです、おすすめです。
太陽のエネルギーで、松果体パワーを活性化できたらいいですね。
以降は余談ですが、前述の番組で外尾さんがビックリすることを明かしておられました。
サグラダ・ファミリアのメインゲート、世界遺産に登録された「生誕の門」に飾られている15体の天使像は外尾さんの作品です。
石を彫る前にまず石膏像を作って実際の場所に設置し、それから本物の石で製作していくそうなのですが、その過程で「生誕の門」に設置してあった石膏像のうち、中央のコーラス隊の天使像9体が福岡に保管してあるのだそうです。
サグラダ・ファミリア建築に関わる本物の資料が海外へ出るのは初めてだろうとおっしゃっていました。
何かと事情があるのか、展示が実現していないようなのですが、ぜひぜひ拝見したい!
関係機関が動いてくださることを願っています。