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とある冒険者の手記

A.オーロラ

2021.04.20 03:19

「ヘリオ!これから一緒にクルザス西部高地に行かないか?」


深夜をまわる前、突然アリスはそんなことを言い出した。


「こんな時間にか?それにあんた、あっちの方に行くと熱出すだろ」


呆れたように言い返すヘリオ。

だが、アリスは引き下がらなかった。


「オーロラが出る天気なんだよ!ヘリオと一緒に見たいんだ!」

「あー…オーロラ…」


そういえば、以前からちょくちょく一緒にオーロラが見たいと言われていたのをヘリオは思い出した。


「それにしても突然だな?」

「だって、いつも予定が合わなくて見に行けてないからさ…、ダメかな?」


少し遠慮しがちになるアリスに、ヘリオはうーんと考える。


「…明日は予定はなかったはずだから、別にいいぞ」

「ほんと!?やった!!」


アリスは満面の笑みを浮かべ、防寒着に着替え始める。

ヘリオも、寒さを想定して着替える事にした。



***********



「う~、寒っ!!」


クルザス西部高地の北側にある廃屋の屋根の上。

視界を遮るものが無いその場所は、着込んでいてもかなりの寒さだった。

一方、その隣にいるヘリオは平然とした顔をしている。


「ヘリオ…寒くないのか?」

「着込んでるしな。寒いは寒いが、そこまでじゃない。てか、あんたの方が俺より着込んでるのに、なんでそんなに寒がってるんだ?」


呆れたような表情で聞くヘリオに、震えながらアリスは答えた。


「俺の故郷、冬でもそこまで寒くならないから、寒さに慣れてないんだ…。ましてや、この辺りは氷点下だろ?俺にとっては未知の寒さだよ」

「それなら無理して来る必要ないだろ…」

「だって!滅多に見られない綺麗なものを、ヘリオとどうしても見たかったんだ…」


寒い寒いとその場で足踏みするアリス。

見かねたヘリオは、カバンからファイアクリスタルを取り出した。


「ほら、これを服の中に入れておけ。カイロ替わりになるから」


震える手でそれを受け取り、服の中にしまうと、ファイアクリスタルから温かさを感じる。


「おー!暖かい!」

「まったく、これぐらいの知識ぐらい知っておけ」

「あはは、クリスタル使う機会がないから知らなかったよ」


苦笑いをするアリス。

やれやれといったヘリオ。

そして、時刻が0時になった頃、空に光のカーテンが現れる。


「出た!オーロラ!」

「おい、はしゃいで屋根から落ちるなよ?」


オーロラを見て興奮するアリスに注意を促すヘリオ。

そんなことはお構い無しな様子で、空を見上げ、無邪気な子供のように目を輝かせているアリスを見て、ヘリオは小さく苦笑した。

せっかく見に来たのだしと、ヘリオも空を見上げる。

冷たく澄んだ空気に輝く光のカーテン。

最後に空を見上げたのはいつだっただろうか?

目まぐるしい日常の中で、空を見上げる余裕すらなかったことに気がつく。


「綺麗だな…」

「あぁ、そうだな…」


2人は時間を忘れ、現れては消える光のカーテンを眺めていた。


そして、帰宅後。案の定と言うべきか、アリスは熱を出し、ヘリオは呆れながら看病する羽目になったのだった。