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Kenta Suzuki ( Kenta Gifu )

Schnellraumseher Chroma

2021.02.19 23:36

「Schnellraumseher Chroma」

鈴木健太

IAMAS 2021 情報科学芸術大学院大学 [ IAMAS ] 第19期生修了研究発表会・プロジェクト研究発表会(https://www.iamas.ac.jp/exhibit21/master/schnellraumseher-chroma/)にて展示

アニメーションの原義は「アニマ(=生命)を吹き込むこと」であり、それは、静止しているものを動いているかのように見せる技術を意味する。アニメーションの起源は諸説あるが、装置を用いたものは、「動画」の起源と発端を共にしており、「静止画を動かす」技術から始まっている。また、その起源から現在に至るまで、アニメーションは主に2次元平面であることを前提とした技術ないしは表現の発展をしてきた。

アニメーションは原義的には、必ずしも「動画」に意味を限定したものではないものの、これは歴史的に2次元平面であると固定されていることを意味する。そして、2次元平面を前提とした装置の発展によって、見落とされている表現の可能性があるのではないだろうか。


本作品では、3次元物体像を用いたアニメーションを再生する装置として、立体ゾートロープに着目する。立体ゾートロープとは、動画の2次元画像に対応する、連続する3次元物体像によってアニメーションを生成する装置である。この装置は一般的な普及をしていないものの、2次元画像ではなく実物体によって映像を生成しているため、その映像は平面とは異なる空間性や画像とは異なる物体感を有する。装置は、スリットを使用したもの、ストロボを使用したものが開発されており、技術者だけでなく、一部のアーティスト等に利用されてきた。一方で、これらはより一般的な時間・空間構成に関する装置への考察が十分になされていない。とくに、大域的照明を使用することによる、ある時間における物体像を独立して扱うことができないという技術制約を前提とした表現になっている。


私は、表現の制約・基底を作っているのは技術・装置であると考え、3次元物体像を用いたアニメーション装置を開発し、その装置上でのアニメーションを制作した。本作品は、時間・空間構成の観点から既存の立体アニメーション装置の制約を再考し、新たに発明した装置である。


「Schnellraumseher Chroma」は、シークエンスに分岐点を持ち,同一空間上に複数の立体アニメーションを重畳することができる多重立体アニメーション装置である。この装置では、時間構成の観点から、複数の物体群による映像の生成と映像を生成するアルゴリズムの変化によって、一様に循環しないシークエンスを持つアニメーションを実現する。また、空間構成の観点から、個別の映像のフレームレートの可変長化と複数のアニメーションの重畳によって装置上の3次元空間全体を活かした、観客の視点位置によって見え方が異なる立体アニメーションが実現する。これらのアプローチの実現のため,映像を生成するアルゴリズムを用いた物体像の制御と、その多重化をおこなう手法を用いた。


また本作品は、円筒形の装置上に配置された様々な形の物体群が回転し、それぞれの物体に光が照射されることで、装置内に物体像による立体アニメーションが発現する。実物体から生成される直方体や円柱の多数の立体アニメーションが、それぞれ形や色、位置を変え、互いに作用しながら3次元空間上に重畳される。それぞれが異なる振る舞いをする立体アニメーションが、時に重なり、時に接触しながら実空間上に展開することで、物体とも映像とも異なる”物体像”という曖昧な境界に位置する現象を揺らがせる。これらによって、本装置によって開かれた、既存の2次元アニメーションとは異なる、実物体による実空間に展開する立体アニメーションの新たな可能性を提示する。