バッハシリーズ第5回プログラムノート
チェロスペシャルということで、チェロのこと、作曲家と演奏家の関係にヒューチャーした第5回。
バッハの無伴奏チェロ組曲は誰の為に書かれ、誰が初演したかわかっていませんが、
名曲が誕生する裏には優れた演奏家がいつもいます。
楽器の持つ表現の可能性を発見し創作意欲を掻き立てられたり、時には演奏家の助言を受けながら書くことも。
ピアノ曲を多く書いたショパンの近くにはフランコームというチェリストがいたからチェロソナタが生まれ、
ベートーヴェンの近くにはデュポールがいたからチェロソナタが生まれるも、
ロンベルクに惚れ込み協奏曲を彼の為に書こうとするも、断られ書くのをやめたり…
様々なエピソードがあります。
今出たチェリストの名前は現代では聴衆に知られる事は少なく、チェロを勉強する人にはおなじみの『エチュード(練習曲)を書いた人』という存在。
しかし当時のチェリストはマルチ。ソロに室内楽にオーケストラでも弾き、作曲活動も盛んで、練習曲だけでなく綺麗な曲もたくさん書いています。
ちなみにこの日に弾いたデュオの作曲家、ドッツァウアー。
この人もチェリストで、チェロのメソードを開拓した人でもあります。初心者の為の3巻からなら113の練習曲はチェロをする人にはおなじみ。
これはドッツァウアーは小分けにした綺麗な曲集として書いた物を、他人がバラバラにしてやる気の上がらない3冊にまとめてしまったそう。。
シュレーダーというその次にやる定番エチュードも、3巻まである170曲の曲集。。
エチュードはチェロを弾く技術を身につけ、ポテンシャルを上げ、様々な曲を弾く為に必要なもの。
当時はなにも考えずにやっていましたが、数字で見るとこんなに必要か?ちょっと多すぎやしないかい?と思ってしまいますね。。
手っ取り早くという訳にはいきませんが、もっとやる気の出る形に整えたらチェロを楽しむ人も増えるのかもなぁなんて思ってしまいました。
バッハの演奏史、スタイルも時代によって変化しています。
第5番はその変化が顕著で、筆写譜に『GDGCの調弦で弾くように』と書かれています。
一昔前は普通のADGCの調弦で弾いていました。
調弦を変えないと出ない和音があったり、原点回帰の流れか今は調弦を変える方が一般的になっています。
バッハの人となりがわかるエピソードをこのシリーズ中探していましたが、他の作曲家に比べ極端に少ないです。それもあってちょっと遠い存在なのかもしれません。
あとは教会音楽など宗教曲がメインなこと。
私も特に強い信仰心がないのでどこか遠かったのですが、最近マタイ受難曲をじっくり聞きました。バッハを調べているといつもキリストへの信仰や、この曲にぶち当たるので。
音の情景描写が凄くて、その辺のオペラよりよっぽどゾクゾクしました。
きっとこの曲の凄さのまだ入り口しかわかっていないと思いますが。
『愛ゆえに…』のアリアとか、涙が出るほど美しく。。
バッハという人に興味を持たれた方はどんな書物を読むより、マタイを聴くことをお勧めします。
また前置きが長くなってしまいましたが、第5回のプログラムノートをどうぞ。