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とある冒険者の手記

A.ホワイトデー

2021.04.23 21:42

「ん、ん~っ!」


眠りから目が覚め、体も起こさず布団の中で伸びをする。

体を起こそうと隣を見ると、一緒に寝ていたはずの愛方の姿はなかった。


「あぁ、今日は早く家を出るって言ってたっけ…」


愛おしい人の顔を見れなくて、少し残念な気持ちになりながらも、ベッドから降りて着替えをする。

階段を上がりリビングに移動すると、テーブルの上に見慣れないものが置いてあるのに気がついた。

白いリボンの着いた、少しオシャレな水色の小さな紙袋。

その紙袋の前に、メッセージカードが置いてあった。

表紙には「アリスへ」の文字。

自分宛のカードを開いて内容を見て、俺は胸の辺りがホッコリした。

送り主は愛方のヘリオ。

ヴァレンティオンのお返しで、作る時間が無かったから買ってきたらしい。

袋を開けて見ると、中にはクッキーが入っていた。

1枚取り出し、口に運ぶ。


「あ、すげぇ美味い!」


クッキーを味わいながらメッセージカードをじっくり見ていると、カードの右隅に小さく店の名前が印字されていた。


「これ……最近人気の店のじゃん!?」


その店は最近出来た新しいお菓子屋で、開店して直ぐに完売してしまうぐらいの大人気の店だった。

そういえば、1度食べてみたいと話した事があったっけ。


「覚えててくれたんだ…」


嬉しさに胸がいっぱいになる。

 

「どうせなら、ヘリオにも食べさせたいな」


俺はクッキーの入った紙袋の口を閉じ、棚に閉まった。

ヘリオが帰ってきたら一緒に食べよう。

俺は今晩を楽しみにしながら、今日の身支度を始めたのだった。