「イベント情報」でも案内されている「デジタルアート展Imagine Van Gogh」に行ってきました(コンヴェンション・センター)。これは、ゴッホの作品を単に鑑賞するだけではなく、映像技術を駆使してその絵の中に入りこんで堪能しようという展覧会です。 この「アート展」のコンセプトから1つの映画を思い出しました。黒澤明の「夢」です。「夢」は、夏目漱石の小説「夢十夜」から形を借りたと思われる8つの短編から成るオムニバス映画です。黒澤晩年の幻想味豊かな異色作ですが、その「夢」の第5話「鴉」が、まさにゴッホ作品の中に入りこんでしまうという内容でした。 展覧会でゴッホの絵を見ていた主人公は、気が付くと「アルルの跳ね橋」の絵の中に入りこんでいた。広い畑に出ると、ゴッホが一心不乱に創作に励んでいる。立ち去るゴッホを追いかける主人公だが、画家は「鴉のいる麦畑」の丘の向こうに姿を消してしまう…。これが第5話「鴉」ですが、主人公の背景が次から次へとゴッホの風景画に切り替わっていく様は、まさに夢の世界です。さらにそこに鳴り響く音楽が、見る者を怪しく不穏な気分にいざないます。