梅が香にのつと日の出る山路哉
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/haikusyu/umegaka.htm 【梅が香にのつと日の出る山路哉】より
(炭俵)(うめがかに のっとひのでる やまじかな)
元禄7年の芭蕉最後の春、51歳。野坡との両吟歌仙の句で、『炭俵』の冒頭を飾った名句。
梅が香にのつと日の出る山路哉
立春を過ぎて残る寒い朝。梅の香が匂う山路には、何の前触れもなく朝日がひょっこりと昇ってくる。「のっと」という日常語を持ってきて、死後に一大流行を作り出した「軽み」の実践句。
https://plaza.rakuten.co.jp/meganebiz/diary/201303190007/ 【松尾芭蕉 梅が香にのつと日の出る山路かな (2)】より
松尾芭蕉(まつお・ばしょう)梅むめが香かにのつと日の出る山路やまぢかな
句集『炭俵』(元禄7年・1694)
朝の山路を歩いていると梅の香りが漂う中にぬうっと太陽が顔を出した。
註
梅むめ:「むめ」の訓は中古から生じたが、「うめ」の方が古い。
のつと(のっと):ぬうっと。当時の俗語。
日の出る:文語で「日出(い)づる」などとせず、あえて口語で「出る」として(「のつと」と合わせ)「軽み」を意図した巨匠の試み。
https://haiku-textbook.com/umegakani/ 【【梅が香にのつと日の出る山路哉】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!!】 より
「梅が香にのつと日の出る山路哉」の作者や季語・意味・詠まれた背景
梅が香に のつと日の出る 山路哉
(読み方:うめがかに のつとひのでる やまじかな)
作者
この句の作者は、「松尾芭蕉」です。
芭蕉は江戸時代前期に活躍した俳諧師で、「小林一茶」「与謝蕪村」とともに「江戸時代の三大俳人」と称される人物です。
美しい日本の風景に侘びやさびを詠みこむ作風は「蕉風」とも呼ばれ、独自の世界を切り開いていきました。
この句は1694年、芭蕉が亡くなるその年に詠まれた句になります。
季語
こちらの句の季語は「梅」で、季節は「春」を表します。
時期としては、立春を過ぎたあたりの頃を指します。ちなみに、梅は梅でも「早梅」「寒梅」などは晩冬の季語になります。
意味
この句の現代語訳は・・・
「早春、明け方山道を歩いていると、梅の香りに誘われたのか、山並みの向こうから朝日がのっと顔を出したよ。」
といった意味になります。
この句が詠まれた背景
この句は「松尾芭蕉」が最後の春に詠んだ句です。
肌寒さがまだ残る春の朝、朝日が梅の香りに誘われて、ひょっこり昇ってきた様子を「のつと」という口語を使って表現しています。春の訪れを喜んでいる気持ちが伝わってくる一句です。
晩年、芭蕉が提唱した「軽み(=平明な言葉で、日常のさりげない事象を描写すること)」の実践句といえます。
「梅が香にのつと日の出る山路哉」の表現技法
この句で使われている表現技法は・・・
切れ字「哉(かな)」「のつと」という表現(擬態語)になります。
切れ字「哉(かな)」
「切れ字」は俳句でよく使われる技法で、感動の中心を表します。代表的な「切れ字」には、「かな」「けり」「ぞ」「や」などがあります。
この句は「山路哉(かな)」の「哉(かな)」が切れ字に当たります。
この句を詠んだとき、芭蕉は山道を歩いており、起伏によって視点が変わり、太陽が山の端から突然現れたり隠れたりする(ように見える)ことを、驚きを交えてこのように表現しています。
擬態語「のつと」
芭蕉は、突然太陽が出たように見える様子と感動を表すために、「のつと」という感覚的な言葉を使っていると考えられます。
自然界におけるさまざまな状態を言語音で模写した言葉を「擬態語」といい、音と意味とが直接的に結びついているため、理性というよりも、感情に訴えかけます。そのため、擬態語は、相手に強く印象づけたいときに使うと効果的です。
この句では、薄暗い山道を歩いていて、突然明るくなる感覚を「のつと」という擬態語が巧みに表現しています。
「梅が香にのつと日の出る山路哉」の鑑賞
「梅が香にのつと日の出る山路哉」は句碑にもなっているほどの名句で、夜明け前の薄暗い中、山道を歩いているときを詠んだ句です。
日の出がいつなのか分からない中、梅の香りに誘われるがまま、薄暗い山道を歩いています。
薄暗く、足元もおぼつかない中、太陽が「のっと」突然顔を出し、薄暗くてよく見えなかった梅の花もパッとあたりに見えるようになった瞬間が見事に表現されています。
太陽が現れ、周囲が明るくなったときの安心感が伝わってきます。
また、「梅の香」で嗅覚を「のっと」という表現で視覚を刺激する読んでいて楽しい一句です。