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【Momiji & The Bluestones】マイク1本の一発録り。ブルースのスピリット&フィーリングを現代の日本で再生させる。

2021.05.31 01:01
アメリカ南部の黒人によって19世紀に発生したブルース。本格的なブルースを鳴らすことを目的に集った6人。もちろん活動の主軸はライブだ。コロナ禍に行われたレコーディングは、マイク1本の一発録りだった。

文 = 菊地 崇 text = Takashi Kikuchi
写真 = 北村勇祐 photo = Yusuke Kitamura


―紅葉さんが歌いはじめたのは?

紅葉 3歳くらいのときに、お姉ちゃんとブルーズブラザースのコピーバンドを組んでいたんですね。映画の『ブルースブラザース2」に出てくる男の子役として、タンバリンを持ってコーラスするぐらいしかできなかったんですけど。そこから私のブルース人生がはじまりました。ちゃんと自分で一曲を歌うようになったのは小学1年の頃。師匠がいたんですけど、その人に付いて、全国を回って。


―旅芸人のような暮らしをしていたってことですか。

紅葉 お姉ちゃんが知り合って、なぜかわからないけど連れていかれて、「これを吹け」ってハープを渡されて。車でのBGMは、リトル・ウオルターとかマディ・ウォーターズが流れている状態でした。私にとってブルースが子守唄。生意気かもしれないですけど、ブルースが染み付いていると思います。


―まだ若いんですよね?

紅葉 26歳です。


―Momiji & The Bluestones を結成した経緯は?

竹内 5年〜6年前に、サックスの前田サラとよくライブをするようになって。あるとき、サラが企画したライブに紅葉を連れてきたんです。そのときに一緒にライブをした。


紅葉 20代に入ってから、2年くらい音楽をやっていなかった時期があったんです。サラちゃんのライブがあると知って、遊びに行きたいって連絡したんですね。数年ぶりに会って、竹さんとセッションライブをするから、竹さんがいいって言ったら一緒に出ないって誘ってくれて。音楽を再開した一発目のライブが竹さんとだったんですよ。


―竹内さんは、紅葉さんという若い女性のブルースシンガーの歌を生で聞いてどう感じました? 

竹内 ブルースが鳴っているなあって思って。ブラックミュージックでもファンクとかヒップホップは東京で鳴らしやすいと思うんだけど、ブルースはどうしてもかっこよくならない。ブルースは好きなんだけど、日本では響かないってずっと思っていたんですね。歌を聞いて、絶対に俺とバンドをやってもらおうと思った(笑)。最初はバンド名を決めずに、メンバーを入れ替えてライブをしていました。


紅葉 そして今のメンバーに固まったのが2018年です。バンド名を名乗ったのもその年から。


―今年1月にファーストアルバムがリリースされました。

紅葉 レコーディングも、めちゃ特殊だったんですよ。メンバーそれぞれにマイクがあるのでなく、ガレージの真ん中に一本のマイクを立てて、そこに向けてみんなで演奏する。古い時代のブルースの録り方をしたんです。


竹内 リボンマイクを使って。そのレコーディングを一度やってみたかったんですよ。きれいにバランスよく録るのではなく、どう空気を録るかっていうこと。昔は、それぞれのスタジオなりエンジニアなりのセオリーがあったと思うんですけど、わからないままの手探り状態でのレコーディングでした。


紅葉 アンプをちょっとずらす。ドラムをちょっと動かす。微々たる調節が続いて。


竹内 リアルな一発録り(笑)。狙っていた音に近づいていくにつれて、タイムマシーンに乗っているような気分になってきたんですよね。このバンドなら、過去にも未来にも行けるなって。それでアルバムタイトルを『タイムマシーン』にしたんです。


―歌っているときはどんな感覚になるのですか?

紅葉 ブルースに限らずどの音楽にも共通するものだと思うんですけど、ソウルだな、魂だなって感じて歌っています。震えたり、崩れ落ちそうになることもありますよ。このバンドで歌うようになって、はじめてそう感じるようになりました。


―このバンドで何を目指していきたいと思っています?

紅葉 ずっと続けること。おばあちゃんになっても、メンバーみんなが元気でいてくれたらこのバンドでライブをしたい。アメリカでは死ぬまで現役を続けているブルースマンも多いじゃないですか。ブルースって、本当に素晴らしい音楽だと思います。


竹内 ブルースは年齢を問わずに誰でも楽しめる音楽だから。俺もいつまでもこのバンドでブルースを鳴らしていたいと思っています。


取材協力 = POWERS2(川崎・元住吉)


「TIME MACHINE」幼少の頃からブルースハープを吹きはじめ、中学生の時に中高生ブルースバンドとしてメジャーデビューを果たした大久保紅葉。SUPER BUTTER DOGの元ギタリストで、ファンクバンドやセッションバンドなど、多様なスタイルでライブ活動を続けている竹内朋康。2015年にふたりがセッションで出会い始動。ライブを重ねることで、現在の小阪惇平、前田サラ、大神田智彦、白根佳尚というメンバーが固まっていった。19年にこのバンド名で初ライブ。そして21年にファーストアルバム『TIME MACHINE』を発表。6月4日に川崎・元住吉POWERS2で開催される竹内朋康の誕生日を音楽で祝うTOMOYASU TAKEUCHI 48th BIRTHDAY BASHに出演。7月には関西ツアーが予定されている。 https://momijiandthebluestones.amebaownd.com/