多香鳥幸謌、附眞夜羽王轉生——小説35
以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
與夜布祁奴羅牟夜
お前の前で死んでいく
憶宇
つかったお湯は紅の
與夜羅布祁努羅牟夜那
椿の色した花泉
曾弖能奈
降る雪をはね
夜乎波
ゆらゆらと
曾弖能那
降る雪をはね
與乎波
垣間見る
曾弖能都由祁彌
心の中で垣間見る
曾弖能都由祁彌
俺、思ったんだよ。なにしてるの?
俺、思ったんだよ、…ね?ひとりで何をしてるの?
夜乎
手首を切っても
目の前で
手首を切っても
目の前で
お前はただわたしを見たね
真珠の肌の多伽子を見たね?
雪染む肌の多迦子を見たね?
手首を伝う血の雫は
憶禮
その細い長いしたたりは
憶禮波
紅に
憶宇
紅の蛇?
お風呂につかれば椿風呂
泉の中は椿の香り
あんたは死ぬのを赦したね
わたしが死ぬのを赦したね
夜乎
あんたを腹にねじこんだ
夜乎
あんたを多香子にねじこんだ
夜乎
黒い肌した天竺あたり
夜乎波
黒い肌した天竺当たり
夜乎波
あいつらが。奴らねじ込みぶち込んだ
夜乎波
あいつらが。
夜乎波
奴らねじ込みぶち込んだ
夜乎波
多果子の腹で何思う?
夜乎
多伽子の腹で何思う?
あの日も雪は降ったかね?
ひとり留守番ひとり居る
こどもの家にねじ込んで
多伽子の家にねじ込んで
こどもの部屋にねじ込んで
多果子の腹にねじ込んで
天竺当たりのながれもの
多迦子の胎のそのそこで
あんたはなにを思ったね
雪はその日もふったよね?
夜乎
多伽子の肌には降ったよね?
夜乎波
死んでく多迦子を見て居たね
夜乎波
俺はひとりで見て居たね。
夜乎波
死んでくあんたをひとり見た
夜乎
かえりみすれば雪の色
夜乎波
白い地表に明け方の
夜乎波
靑くくらいそれは空
與乎夜
朱にひかるのは東京タワー
夜乎波
雪の夜はね、もうすぐに
夜乎波
雪の夜はね、もうすぐに
夜乎波
もすぐ盡きる
もうすぐ果てる
もうすぐ果てる
夜乎波
おうや
那都能與波
夜乎波
おうや
那都能與波
夜乎羅
うらや
麻多余比那賀良
夜阿
はいや
麻多余比那賀良
夜乎波
やいは
那都能與波
夜乎
おうあ
阿祁奴留乎
夜阿波
うや
阿祁奴留乎
夜乎波
うやは
久母能夜
乎乎波
うあは
久母能伊豆古邇
憶禮夜
やを
久母能伊豆古邇夜
憶禮波
やをやをは
都伎夜騰留良牟夜
憶波
うあは
都伎夜騰留良牟夜
憶波
はあ
トゥイエット・ハンはささやいた(その、耳に聞こえた彼の聲に返りみたそこでトゥイエット・ハンはひとりで微笑んでいた。…わたしに気を使って、せめても微笑んでいたのだ。
零れ落ちるるような。
したたりおちるような。
あくまでも新鮮な微笑)耳に。
私の。
——これ、誰?
わたしは応えようと(なんとこたえようとしているのかもわからない儘に)唇を開きかけた時に。
ささやく。
トゥイエット・ハンが、再び
——知ってる人?
つぶやいたので、私は
——なんて言ってるの?、と。トゥイエット・ハンはそういった。
——俺の母親なのかな?
私は応えた。
——お母さん?亡くなってるの?
——子供のころ
——なんで?
——それ、秘密(…と。
私は秘密にした。あのこと。十二歳の時に、私が彼女の頸を絞めた事。そして腹を刺したこと。そして飽きもせずに胸も、四肢も…それは優しさだった。
だれにも理解されなかった。