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中山治美の”世界中でかき捨てた恥を回収す”

”青梅に約50年ぶりに映画館が誕生するよ!”の旅②

2021.04.30 15:03

 JR青梅駅から約10分。見えてきましたパステルブルーの外観で一際目立つ映画館シネマネコの建物が。代表の菊池康弘さんの、この映画館に賭ける熱い思いは、下記↓の記事にしたためましたのでそちらで。


青梅に約50年ぶりに誕生する映画館、オープン延期


 ここでは記事に入れ込めなかったことを少し。

シネマネコは青梅織物工業協同組合の敷地、通称「青梅・織区」にあります。青梅は甲州裏街道の宿場町で、絹織物で栄えた町。タオルのホットマンが有名ですが、1931年に青梅織物工業協同組合が設立され、当時建築された建物群は2016年に国登録有形文化財に登録されました。それらの建物群は今、工房やギャラリー、レストランなどとして活用されています。

旧ボイラー室はペレットストーブの専門店Tokyopelletのショールームに。

旧発券倉庫は、1階がレストラン、2階がギャラリーの「繭蔵」に。旬の野菜を使った創作料理が心と体に嬉しいレストランです。


 そしてシネマネコは旧都立繊維試験工場。シネマネコの前は、レンタルスペースとして活用されていました。その名も「BOX " KI・O・KU”」。


 なんだか、映画館になることが運命だったようなネーミングです。

ただ、国登録有形文化財というはありがたい反面、外観は手を加えてはならないという決まりがあります。なので、本当は入口にスロープをつけてバリアフリーにしたかったそうですが、それは叶わず。でも館内には多目的トイレも用意されており、入口も取り外し可能なスロープを用意するなど対応を考えていくそうです。


 館内も美しくリノベーションされたとはいえ、古き良き木造建築の風合いが生かされています。例えばロビーの壁。以前の壁を取り外したときに出てきた木をそのまま活用。



上映ホールの天井は木の梁をそのままに。


上映ホールの壁は珪藻土です。これは木造建築の湿気対策でもあります。


 ロビーにある物販コーナーの台は、扉を用いています。

 創意工夫の塊であるリノベーション建築は、必見の価値ありです。

 実は全国にあるミニシアターは、リノベーションという観点から見ても魅力的。

 例えば・・・

 ●元郵便局→苫小牧・シネマトーラス

 ●元織工場→鶴岡まちなかキネマ(再生中)

 ●元酒蔵→埼玉・深谷シネマ

 ●元銀行→群馬・シネマテークたかさき

 ●元大型薬局→京都・出町座

 兵庫・豊岡劇場のように、一度閉館した映画館をリノベーションし、カフェやレストランを併設してオシャレに生まれ変わった映画館もあります。

 そして世界的にも工場跡地を再生し、新たな文化発信基地として成功した例は多々。元フィアットの工場をショッピングモールやホテルにしたトリノのリンゴットは、郊外にあるのに夜遅くまで若者たちで賑わっていたし、元タバコ工場の台湾・松山文創園区は今や観光スポットだし、文化複合施設になった香港の旧中環警察署群跡「大館(Tai Kwun)」は、監獄まで見学できて刺激的。

 青梅・織区も、ここからまた何かが始まる予感。そのワクワクの中心にシネマネコがある。