日本を貶める韓国総力戦外交に如何なる実利があるのか?
韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は、英国政府の招待で出席するG7=主要7か国外相会議(ロンドン5月4・5日)で、日本政府による福島第1原発の処理水の海洋放出決定について発言する可能性があるという。韓国外交部によると「福島第1原発の汚染水の問題は、2国間や多国間(会議)で引き続き外交活動を展開することが基本方針だ」という。
<KBS日本語放送4/29「外交部長官 来月のG7外相会議に出席」>
G7外相会議で、福島処理水に関連して日本を非難する発言があったとしたら、日本は他のメンバー国を巻き込んで、G7首脳会議への文在寅大統領の出席拒否を要求すべきだ。
韓国は、福島第一原発の処理水問題でも、慰安婦問題や徴用工問題と同じように、国際社会にむけて得意の「告げ口外交」を展開し、日本は地球環境を不可逆的に破壊していると、不当かつ執拗に日本への非難をくりかえしている。
これまでの報道によれば、韓国による2国間、多国間の「告げ口外交」としては、4月28日、鄭長官はベトナムのブイ・タイン・ソン外相と電話会談し、福島処理水の海洋放出決定について、懸念を示し、ベトナム側の関心と協力を呼びかけた。
鄭長官は27日にはデンマークのコフォズ外相との電話会談でも、海洋放出問題に言及し、国際社会に海洋放出問題への関心を呼びかけたという。
<KBS日本語放送4/29「韓国ベトナム外相が電話会談 汚染処理水海洋放出に言及」>
韓国と中米8か国(エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、パナマ、ベリーズ、ホンジュラス、ドミニカ共和国)の参加する韓国・中米統合機構(SICA)の外務次官級の会議が22日、コスタリカで開かれ、日本政府による処理水の海洋放出決定に懸念を表明する共同声明が採択されたという。韓国外交部は共同声明について、「韓国主導で国際社会の懸念を表明し、海洋放出問題での共同対応を促した初の多国間会議での成果物であり、太平洋を共有する非アジア諸国が声を出したことに意義がある」と強調したという。
<KBS日本語放送4/23「韓国と中米8か国 福島海洋放出に懸念表明」>
韓国・海洋水産部は4月12~16日にテレビ会議形式で開かれた「海洋投棄と海洋汚染に関するロンドン条約・議定書」の科学者会合に参加し、処理水の海洋放出に関する日本政府の決定について問題を提起し、日本政府に対して責任ある措置を求めたという。日本政府は、ロンドン条約・議定書は、船などからのゴミの海上投棄に関するもので、処理水の海洋放出は陸上施設からの放出であるため、この条約の枠組みで議論すべき問題ではないと主張した。しかし、韓国側のごり押しで議題に取り上げられたらしい。
<KBS日本語放送4/19「汚染処理水の海洋放出 韓国政府、ロンドン条約・議定書会議で問題提起」>
鄭外交部長官の国会での答弁によると、このほか太平洋島嶼国16か国やEUヨーロッパ連合、国連の専門家とも接触を図り、連携を呼びかけているようだ。
韓国は、こうしてあらゆる機会を利用して、とにかく自分たちの主張を繰り返し、しつこく主張し、自分たちの考え方を相手に押しつけ、日本に対して同じような態度を採るように強要する。そんなことをして自分たちにどういう利益があるのか、自分たちの立場がどう有利になるのかは、おそらくどうでもいいのだろう。とにかく日本を貶め、日本の名誉や権威を引きずり降ろし、過去の恨みを晴らせれば、それで満足なのである。
彼らはどうも、慰安婦問題での成功体験に味を占めたのかもしれない。「慰安婦は性奴隷」だという虚言を繰り返し、懲りずに主張した結果、米議会や国連でもそれ以外の主張をすると排斥されるまでになってしまった。性奴隷と言われるようなったからといって元慰安婦の女性たちには、実際、どういう人権の回復があり、利益があったというのだろうか?
歴史問題では被害者としての立場を訴えるだけで、事実がどうだったかに関係なく、相手を倫理的に屈服できれるかもしれないが、こと原子力や放射能汚染という科学技術の問題となれば、そうはいかないだろう。そこには客観的、科学的に証明できる真実しかないからだ。そうした真実を無視して、自分たちの科学的根拠のない主張を繰り返すだけなら、いずれ惨めなしっぺ返しをくらうに違いない。韓国がそうなることを見るのが今から楽しみだ。
当ブログではこれまでも、福島第一原発の処理水の海洋処分について、韓国の政治家や市民活動家たちの言い分が、現代の科学的な常識や世界の原子力産業の知見からどれほど隔絶し、科学的整合性を欠いた主張であるかということを繰り返し論じてきた。
ところで、菅首相の訪米と日米首脳会談の一方で、中国上海を訪れたケリー気候問題特使は、そのあと韓国を訪れ、4月17日、鄭義溶外交部長官と会談した。その際、鄭長官は福島処理水問題について韓国の懸念を伝え、米国の協力を求めた。しかし、ケリー氏は「日本はIAEAと非常に緊密に協力してきた」として、米国がこの問題で介入するのは適切ではないとする考えを示した。
<KBS日本語放送4/19「ケリー米特使、汚染処理水の海洋放出に米が介入するのは不適切」>
その翌日、鄭長官は国会での質疑で、処理水の海洋放出が「IAEA=国際原子力機関の基準に適合した手順に従っていると判断されるならば、あえて反対しない」と答弁した。しかし、与党議員からこの発言を厳しく批判されると、翌日の国会答弁では「断固として反対している」と強調し「反対のため反対ではないということを言いたかっただけだ」と釈明し、すぐさまトーンダウンさせた。
<KBS日本語放送4/20「韓国外相 汚染処理水の海洋放出に「IAEA基準適合なら反対しない」>
こうした変節を見ただけでも、彼らにとって科学的な根拠などは関係がなく、政治的な目的、政局への配慮しかないのである。
韓国は、日本の情報公開が不透明だという不当な主張を繰り返し、周辺国を含めた「国際調査団」を組織し、韓国がそのメンバーに加わることを主張し、IAEAに圧力をかけている。これについてIAEAのグロッシ事務局長は、聯合通信のインタビューに答え、処理水の海洋放出に関する技術的問題を議論するため、年内に専門家チームを日本に派遣する計画があると表明し、このチームに韓国の専門家が参加することには賛成だという意向を示したものの、「IAEAの任務は、海洋放出のすべての過程が国際基準に従って合意した範囲内で行われることを明確にすることだ」とし、専門家チームを派遣する目的も、「海洋放出の手続きが基準に従って進められるか確認するためだ」とし、「調査」という表現を使うことについては、反対するという立場を示した。
<KBS日本語放送4/21「汚染処理水の監視チームに韓国からの参加を希望」 IAEA事務局長」>
つまり、いまさら「調査」など行なう必要がないほど、福島第一原発の処理水についてはデータは明確であり、IAEAとしては、海洋放出の実際のプロセスで、タンク貯蔵水がALPSで処理され、トリチウム以外の放射性核種が国際基準以下まで取り除かれていることを確認し、トリチウムが日本政府の公表した基準以下まで希釈されていることを確認すれば、それで十分なのである。こうした専門家チームに韓国や中国のメンバーが「調査」だと称して加わったとしたら、どんないちゃもんや難癖を付けられ、妨害されるか分からないので注意が必要だ。 (続く)
「福島原発汚染水放出 中断を催促する 共に民主党鐘路区地域委員会」の横断幕
4月24日デモ「日本政府の放射能汚染水無断放出 糾弾する」