亡き師はかく語りき⑥ 大いなる学友ⅱ
前回の投稿でフランツ・バルトロメイと学友ということで驚きの声をいただきました。
しかし馬場先生は1960~63年にウィーン国立音楽大学で学ばれたのですから、当時20歳前後、現在80歳前後のウィーンの音楽家が学友ということになります。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の奏者であれば、1970年から2000年代初めまでに所属・活躍した猛者たちです。
さて今日もとんでもない重鎮が登場します。
「ウィーンではね、新聞にこのような広告が出てたんだ。『弦楽四重奏やりたし。第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを学んでいる音楽大学生を求む!』」と先生。
「同じ大学の学生や卒業した音楽仲間たちと一緒に、よくこのアルバイトをしたもの。留学生はアルバイト禁止なんだけどね。」と笑って話してくれたのです。
このアルバイトを共にした音楽家の卵とはこの御大です。
故・トマス・カクシュカ(1940-2005)。
ウィーン・アルバンベルク弦楽四重奏団のヴィオラ奏者です。
\(゜ロ\)(/ロ゜)/
雇い主はアマチュアながらも、ウィーン国立音楽大学の学生たちと対等に合奏できるほどの腕!
音楽に対する愛情と見識はしこたま深い。
先生は驚かされたそう。
欧州では、アマチュアのほとんどは幼少のころから楽器・音楽を学び、大学進学の時に音楽専攻を選ばなかった人です。
そう言えば、随分前にベルリン・ドイツ歌劇場の奏者との会見で、彼はアマチュアという表現をせずに「ノン・プロフェッショナル」としていました。
また「ホールを貸す」システムが無いため、アマチュア・オーケストラは無く、オーケストラはプロ、もしくはその卵が3日ほどのリハで仕上げるものという認識(現在はわかりません)。
そしてアマチュアはこうして家庭内で室内楽を奏して楽しんでいました。
それも極めて高いレベルで。
これはバロック時代から(それ以前?)の室内楽の歴史そのものです。
そして、
音大生を雇っての弦楽四重奏は、演奏会を目的とせずに、楽曲を奏して堪能することが基本。
しかし時折、自宅でのホームパーティで演奏することも。
雇い主は友人たちに、一緒に演奏する音楽家の卵を、プロとなった時は愛顧してほしいと紹介したのです。
音楽愛好家としてするべきこと、素晴らしい社交です。
(*'▽')
大いなる学友たちとの室内楽は音楽家としての礎を築く糧となったばかりか、《室内楽を奏する楽しみが日常に深く根ざす》この体験は何事にも代えがたいものだったはずです。
そして先生が私たちアマチュアの生徒に音楽専攻の方と同じように高等基礎を指導するのは、こうした欧州のアマチュアを見てきたからでしょう。
次回は、このアマチュアとの弦楽四重奏をともにしたもう一人の学友、先生の生涯の盟友となったこの方の紹介をいたします。
大晦日まで(お店の投稿も含めて)休まず投稿します!
2020.12.27初出ですが、2.15の最終回に合わせて掲載日を変更