良き市民の第一の義務 <追記あり>
現行法上、児童や生徒に対する猥褻行為により懲戒免職処分を受けた教員は、教員免許が失効するが(教育職員免許法第10条第1項第2号)、当該失効の日から3年を経過すると(教育職員免許法第5条第1項第4号)、教員免許を再取得して、教壇に復帰することが可能だ(学校教育法第9条第2号)。
なぜこんな馬鹿げたことが認められているのかというと、憲法第22条第1項で職業選択の自由が保障されているからだと言われている。
児童や生徒に対する猥褻行為により懲戒免職処分を受けた教員の教員免許の再取得を禁止すると、職業選択の自由を侵害するというのだ。
教員以外の職業に就くことができるのに、なぜ教員免許の再取得の禁止が職業選択の自由を侵害することになるのかがイマイチ分かりにくいが、おそらく次のような屁理屈によるものと思われる。
すなわち、職業選択の自由には、選択できない職業があってはならないということが含まれるので、児童や生徒に対する猥褻行為により懲戒免職処分を受けた教員の教員免許の再取得を禁止することは、職業選択の自由に対する侵害になるというわけだ。
しかし、職業選択の自由といえども、絶対無制約なものではなく、「公共の福祉に反しない限り」で認められるものにすぎない。他者の権利自由との矛盾衝突を公平に調整するためであれば、選択できない職業を設けることも合憲だと考える。
法律が選択できない職業を明文の規定で定めているものとしては、例えば、売春防止法((昭和三十一年法律第百十八号)がある。売春防止法第3条は、「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。」と定めている。
そもそも児童・生徒に対する猥褻行為により懲戒免職処分を受けるというのは、よほどのことなのだ。
というのは、通常、密室で事件が起きることや、児童・生徒はショックや恥ずかしさから誰にも相談できないことから、事件が発覚しにくいし、事件が発覚しても、子供の将来を慮ってことを荒立てようとはしない保護者もいるし、学校・教育委員会も、事件を隠蔽しようとする傾向があるからだ。
児童・生徒に対して猥褻行為を行なって懲戒免職処分を受けた教員は、教員の適性を欠くことを自ら証明しているのであって、性犯罪の再犯率が高いことに鑑みると、当該教員の教員免許の再取得を認め、再び教壇に立たせることは、他の児童・生徒の心身を危険に晒すことに他ならず、また、猥褻変態教師の毒牙から児童・生徒を守るためには、再び教壇に立てないようにすることが最も効果的だ。その結果として、猥褻変態教師の職業選択の自由が制限を受けたとしても、それは自業自得だ。
(懲戒免職処分に限定すると、教育村は仲間を庇うので、軽い懲戒停職処分に済ませるおそれがあるので、児童・生徒に対して猥褻行為をした教員は、一番軽い懲戒戒告処分で一発永久追放にするのが妥当だ。)
私は、このように考えるのが世間の常識にも適っていると考えるが、文科省は、免許再交付までの制限期間を5年へ延長することを検討しているらしいし、また、自民党と公明党の『与党わいせつ教員根絶立法検討ワーキングチーム(WT)』は、一律に再取得を禁止するのではなく、医師の場合と同様に、個別の事情に基づいて教育委員会が裁量的に判断できるようにすることを検討しているらしい。
本末転倒だ。加害者である猥褻変態教員の職業選択の自由を守ることに汲々として、被害者や将来被害者となりうる児童・生徒のことを第一に考えない文科省職員や国会議員は、直ちに辞表を提出しろ。
教育職員免許法の目的は、「教育職員の免許に関する基準を定め、教育職員の資質の保持と向上を図ることを目的とする」ことにあるが、それは何のためかと言えば、児童・生徒のためだ。文科省も国会議員も根本を忘れている。
この点について、日教組が何らかの声明・談話を公式に発表しているのだろうかとHP内で検索をかけたが、なかった。準備中なのか、ほっかむりを決め込んでいるのか、裏工作しているのかは定かではない。
それにしても、HPの「談話」を見たら、一体どこの国の労働組合なのだろうかと驚いた。
ところで、世間では、児童・生徒に対する猥褻行為により懲戒免職処分を受けた教員がクローズアップされているが、禁錮以上の刑に処せられた教員も、教員免許が失効するけれども(教育職員免許法第10条第1項第1号)、執行猶予の場合には、執行猶予期間が経過すれば、禁錮以上の実刑の場合には、刑の執行終了後10年経過すれば、刑の言い渡しは効力を失うため(刑法第34条の2第1項)、教員免許の再取得し(教育職員免許法第5条第1項第3号)、教壇に立つことが可能だ(学校教育法第9条第1号)。
似たような法律の建て付けになっている職業には、国家公務員、地方公務員、医師、弁護士などがある。
アメリカの政治家ダニエル・ウェブスターは、「自由は健全なる制限に比例して存在す。」という名言を残しているが、我が国の法律は、不健全な制限になっているのだ。
昨日も、「大阪地検特捜部の主任検事(当時)による証拠改ざん事件で犯人隠避罪に問われ、有罪判決が確定した元特捜部長の大坪弘道氏(67)について、日本弁護士連合会(荒中(ただし)会長)の資格審査会が弁護士登録を認めた」との報道があった。
どうしてこのような馬鹿げたことが罷り通るのかと不思議に思われるが、政治学的に言えば、所詮、法律は、政治的な妥協の産物だからだ。
圧力団体・利権団体が己の利権を守るために、裏工作し、既得権益を守れるような法律を制定させているからであって、職業選択の自由なんて後から取って付けた屁理屈にすぎない。
現代では、立法国家から行政国家への転換に伴って、立法府の統合機能の低下とこれに代わる行政府の統合機能の増大があり、政党に代わって圧力団体が国政へのフィードバック機能を果たすようになったため、政策決定が主要な利益集団と行政官僚との協議によって進められる傾向にある(ネオ・コーポラティズム)。
アメリカのリベラル経済学者のガルブレイスは、1920年代に高度に組織化されたビジネスだけが政治的発言力を持ち、他の労働者や農民がそのような発言力を持っていなかったことが、大恐慌の一つの原因だったと述べている。
ガルブレイスが正しいとすれば、圧力団体・利権団体の弊害を除去するには、これを踏み潰すよりも、強力な圧力団体・利権団体に対抗できる諸利益を組織化し、政治的発言力を与えることが効果的だということになりそうだ。
しかし、これでは一層ネオ・コーポラティズムを加速させることにつながり、かつてのファシズムの焼き直しになりかねない。
子供を持つ親や良識ある大人が声を上げ、世論を形成し、圧力団体・利権団体の弊害にメスを入れさせ、法改正へと持ち込むというオーソドックスで正攻法な民主政のやり方を採るのが、時間がかかっても、無難だと思われる。インターネットの普及により、組織化されていない人々の声を国政に反映させやすくなったのは好材料だ。
イギリスの政治家ジェームズ・ブライスは、「良き市民の第一の義務は、必要なときに怒ることである。そして、行為によってその怒りを示すことである。」と述べている。
我々は、国政を歪める獅子身中の虫である圧力団体・利権団体に屈することなく、今こそ己の良心に従って怒りの声を上げるべきなのだ。
cf.1教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、教育職員の免許に関する基準を定め、教育職員の資質の保持と向上を図ることを目的とする。
(授与)
第五条 普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。
一 十八歳未満の者
二 高等学校を卒業しない者(通常の課程以外の課程におけるこれに相当するものを修了しない者を含む。)。ただし、文部科学大臣において高等学校を卒業した者と同等以上の資格を有すると認めた者を除く。
三 禁錮以上の刑に処せられた者
四 第十条第一項第二号又は第三号に該当することにより免許状がその効力を失い、当該失効の日から三年を経過しない者
五 第十一条第一項から第三項までの規定により免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から三年を経過しない者
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
(以下、省略:久保)
(失効)
第十条 免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その免許状はその効力を失う。
一 第五条第一項第三号又は第六号に該当するに至つたとき。
二 公立学校の教員であつて懲戒免職の処分を受けたとき。
三 公立学校の教員(地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十九条の二第一項各号に掲げる者に該当する者を除く。)であつて同法第二十八条第一項第一号又は第三号に該当するとして分限免職の処分を受けたとき。
2 前項の規定により免許状が失効した者は、速やかに、その免許状を免許管理者に返納しなければならない。
(取上げ)
第十一条 国立学校、公立学校(公立大学法人が設置するものに限る。次項第一号において同じ。)又は私立学校の教員が、前条第一項第二号に規定する者の場合における懲戒免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるときは、免許管理者は、その免許状を取り上げなければならない。
2 免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、免許管理者は、その免許状を取り上げなければならない。
一 国立学校、公立学校又は私立学校の教員(地方公務員法第二十九条の二第一項各号に掲げる者に相当する者を含む。)であつて、前条第一項第三号に規定する者の場合における同法第二十八条第一項第一号又は第三号に掲げる分限免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるとき。
二 地方公務員法第二十九条の二第一項各号に掲げる者に該当する公立学校の教員であつて、前条第一項第三号に規定する者の場合における同法第二十八条第一項第一号又は第三号に掲げる分限免職の事由に相当する事由により免職の処分を受けたと認められるとき。
3 免許状を有する者(教育職員以外の者に限る。)が、法令の規定に故意に違反し、又は教育職員たるにふさわしくない非行があつて、その情状が重いと認められるときは、免許管理者は、その免許状を取り上げることができる。
4 前三項の規定により免許状取上げの処分を行つたときは、免許管理者は、その旨を直ちにその者に通知しなければならない。この場合において、当該免許状は、その通知を受けた日に効力を失うものとする。
5 前条第二項の規定は、前項の規定により免許状が失効した者について準用する。
cf.2学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)
第九条 次の各号のいずれかに該当する者は、校長又は教員となることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 教育職員免許法第十条第一項第二号又は第三号に該当することにより免許状がその効力を失い、当該失効の日から三年を経過しない者
三 教育職員免許法第十一条第一項から第三項までの規定により免許状取上げの処分を受け、三年を経過しない者
四 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
cf.3日本国憲法(昭和二十一年憲法)
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
cf.4刑法(明治四十年法律第四十五号)
(刑の消滅)
第三十四条の二 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。
2 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで二年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
<追記>
下記の記事によると、「国民民主党は17日、子どもへの性犯罪者が保育士や教員になることを制限する「子どもの性被害防止法案」を参院に提出した。禁錮以上の刑を受けると、最長10年は子どもに関わる職場に就けないようにすることなどが柱で、与野党に賛同を呼びかける。
法案は、保育士と教員が「18歳未満の未成年者」に性犯罪をした場合、禁錮以上の刑を受けた者は最長10年、罰金刑は同5年、現場に復帰できないとしている。」
猥褻変態保育士に着目したのは良いと思うが、永久追放にすべきだろう。