人間失格
2021.05.03 08:19
先日、私のところで芝居を学ぶ俳優諸君に
「ラジオのパーソナリティーになったとします。今、リスナーに聞かせたい音楽は何?」
と、問うたところ、少しざわついた。同じことを、二週連続で尋ねたらしい。
気を利かせて、前週と違う曲を答えた俳優もいた。
ちなみに、wacciや、YOASOBIという名が上がった。
誰かが宇多田ヒカルと言った時は、安堵した。
楽しみにしていたのに、冷蔵庫内で、賞味期限切れで発見される食品がある。
2階に上がるともうダメだ。何しに上がったか、もう一度、1階に戻り、行動を遡るという愚行に及ぶ。
忘却体質(造語)に変貌した近年、かような事例は枚挙に遑がない。
俳優時代、懸命に覚えたはずの台詞も、きれいさっぱり忘れてしまっている。
ただ、忘れたくて、忘れてきた過去も多い。
恥の多い生涯を送って来ました。
我が家の2階には、祖父の絵画や、父のニュース原稿が捨てられずにある。
それらは遺言だ。彼らのその時々の思いが垣間見えるから。
私のカビ臭い昔話も、子供への、そして若い俳優たちへの、ちょっとした遺言のつもりである。
旅を懐かしむ(写真は15年前の今日、2006年の5月3日に訪ねたモン・サン=ミシェル)コロナ禍のゴールデンウィーク。
昼食も摂らぬ間に午後になった。