MILES WORD が語る、OLIVE OIL とのジョイントアルバム「WORD OF WORDS」
"今年、1番良かったアルバムはなに?"って聞かれたら、宇多田ヒカルの「Fantome」かな。
そう思ってたけど、11月末に MILES WORD(マイルスワード) とOLIVE OIL(オリーブオイル)のジョイントアルバム「WORD OF WORDS」がしれっとリリースされた。リリースを知って、すぐにタワレコに行った。
聴いてみると、全曲通して心地良く、何度もリピートしてしまう。MILES 独自のフローが、OLIVE OIL のビートによって新たな表情を引き出されてる感じ。曲はもちろん、ジャケもかっこいい。
ヘッズには説明不要だと思うけど、念のため。
MILES WORD は地元、藤沢 DLIP RECORDS(ドリップレコーズ) 所属のラッパーだ。BLAHRMY(ブラーミー)としての活動はもちろん、ソロとしても積極的に活動をしている。2014年にソロアルバム「INPOSSHIBLE (インポシッブル)」をリリース。多くのMCバトルでは好成績。日本人離れしたフローと、耳に入ってくる声が注目を集めている。
OLIVE OIL はクリエイティブレーベル OILWORKS(オイルワークス)のプロデューサー/DJ だ。福岡を拠点にし、ワールドワイドに活動している。聴覚だけでなく、視覚にも訴えかけてくる変幻自在なトラックが特徴的だ。
MILES とは地元の友達で高校の同級生だ。ひさしぶりに飲む機会があったから、今回のアルバムについて聞いてみようと思った。
「藤沢のOPA 前に集合で」
昔と変わらず、藤沢のOPA 前で待ち合わせて、飲み屋に入った。
「XXX-LARGE(トリプルエクストララージ)のタケさんが、DJ KIYO のスシのジャケのMIX をゲットしたタイミングで、うちに来て。その1曲目の5lack とOLIEVE OIL の『愛しの福岡』って曲を聴いて、やべえってなったのがはじまりだね。それで、5lack とOLIEVE OIL のアルバム『50』を買いに行った。何年ぶりかに国産のラップアルバムを買いにタワレコに行ったよ。そんくらいのパンチ喰らった感じ」
5lackとOLIVE OIL による「愛しの福岡」はかっこいいし、名曲だと思う。OLIVE OIL と会うまでに、どういう経緯があったのか。
「沖縄で最初に会ったんだよね。たしか、BLAHRMY で行ったときだから、2012年かな。いっしょのパーティーだったわけでもなくて。偶然、居酒屋で会ったんだよね。そのときは軽い挨拶だけで。そこから縁あって、群馬でパーティーがいっしょになった。そこでOLIVE さんに会ったとき、自分のレコードとかCDとか、持ってたもんは全部渡したよ。そしたら、反応が良くて、いっしょにやろうよって言ってくれてさ。オレは真に受けたよね(笑)。福岡に遊びにおいでよって言ってくれたから、本当に行っちゃうみたいな」
福岡に遊びに行ったときには、MILES のなかでアルバムを作るつもりだったのだろうか。
「福岡行くときには、OLIVE さんと最後に会ってから、半年近くは経ってて。その間に、おれのなかで『OLIVE OIL × MILES WORD』でアルバムってイメージがあってさ。最初に、OLIVE さんが20曲くらいのビートをピックしてくれて。そのなかのビートで最初にできたのが 『BURN』。他には『SOLDIER'S』『BIRD'S EYE VIEW』『名こそ惜しけれ』のビートもあって。『SOLDIER'S』と『BIRD'S EYE VIEW』 の自分のバース書き終わって、次はどれにしようってときに、いろいろあってさ(笑)。2ヶ月くらい、精神と時の部屋みたいなとこで過ごしたよ。出てきて、すぐに『名こそ惜しけれ / B.B.B. 』ってシングルを作った。そこから、またOLIVE さんの家に泊まらせてもらって。本当は1週間の話だったんだけど、3週間はいたね。そのときに『AT THE TIME』って曲ができた。この曲はLAF くんのとこで声録ったんだけど、次の日にリミックス作ってきてくれてさ。だから、ボーナストラックの『AT THE TIME (LAF REMIXX)』 は福岡で録ったバースなんだよね」
……いろいろと大変だったみたい(笑)。「名こそ惜しけれ」は、今でこそあまり聴けない曲らしいが、エモーショナルな曲で最高だ。どこのお店も完売で手に入れることは困難だと思うが、機会があればぜひ聴いてほしい。MILES 的に、今回のアルバムの出来はどんな感じなんだろう。
「発売延期になったりして大変だったけど、その分、めちゃくちゃ良い仕上がりだね。いままでは家からチャリンコ圏内のDLIP のMC に頼むことが多かったけど、今回のアルバムには沖縄のRITTO(リットー) 、津山の紅桜(べにざくら)にも参加してもらってて。あとは言わずと知れた地元、神奈川のしーじゃー、BRON-K 。これは念願叶った胸アツ系だね。シンガーのShuns'keG(シュンスケジー)にも参加してもらってて。『DOORS』って曲で、バースはすぐ書けたんだけどさ。アタマとケツの部分が出てこなくて。自分で歌おうともしたんだけどね(笑)。やっぱ、歌えるやつに任せようって思って、Shuns'keG に電話したよ。前から一緒に曲作りたいと思ってたし、そのタイミングがきたって感じだった。見事にハマったね。このアルバムは全曲良いよ。けど、発売延期はダメってことだけは学んだわ(笑)」
発売延期(笑)。そういうのもヒップホップ的にはアリなようにも思える。今回のアルバムに参加してるShuns'keG は、バンド、Shuns'keG & The Peas(シュンスケジーアンドザピーズ)で活動しているシンガーだ。Shuns'keG も高校の同級生なので、個人的にはうれしい楽曲。アルバムを聴いて思ったのが、前回のソロアルバム『INPOSSHIBLE』に比べると、どの曲も聴きやすい。説明しづらいが、BLAHRMY っぽくない感じ。
「聴きやすいはずだよね。自分も好きで、 聴きやすいであろうビートを多めに入れて。リリックも分かりやすく書いたつもり。今まで、分かるやつだけ分かればいいってスタンスだったけど、広がり方の限界っていうか、絶対数みたいなのが見えてきちゃって。日本のヒップホップは狭い畑だから。分かりやすくしたら、理解してくれる人は増えるのかなって。みんなも聴きやすくて、自分らも好きな感じもあるから、そういうラインの曲を多めに入れたつもり」
なるほど。だから、聴きやすい感じがしたのか。ヒップホップ好きだけでなく、多くの人に聴いてもらいたい。個人的には、今年買うべきアルバムの1枚だと思う。
「けど、CD 聞けない人もいるからね。音楽にお金を払うって概念のない人が増えてるのかも。若い子は特にそうだよね。けど、可能性があるのは、若い世代だと思うんだよ。オレらが高校生のときってCD とか買ってたじゃん。バイト代でどこのブランドの服を買うとか。服やCD 、レコードに金使ってたよね。ビギー、2PAC 、エミネムだってティーンがお金を出して買ってたと思うし。若い子たちがキーポイントのはずなんだけどね。けど、そういう子たちが音楽にお金を払わなくなった。時代のせいにしたくないけど、そういうことになってきてるっぽいよな。若い子たちにも届いてほしいね」
たしかに、そういう時代になってきてるっぽいのは事実だ。そんな時代だけど、変わらないスタイルで続けてほしい。