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陽は中天を過ぎて 2nd season

芙蓉庵煎茶会

2021.05.04 10:01

少し前からお煎茶を習い始めている。

もう何年も前に誘われて出かけたお茶会で初めてお煎茶の席に入って以来、ずーーーっと心の片隅で気になっていたのだけれど、これまではあまりに忙しすぎて、とても手を出しかねていた。

が、コロナを機にいくつかの習いごとをぱったり辞めたので、興味がふつふつと再燃。

で、ようやく体験レッスンのできるお教室を見つけ、そのまま入会。

今日ははじめてのお煎茶のお茶会。


夏のように強い日差しの午後、額が焼けそうだ… と手をかざして照りつける太陽を避けながら西永福の芙蓉庵に着く。

庭に回ると、きれいに円を描いた砂利の庭に紅い毛氈、紅い日傘。そして手前座。

庭に面したいつものお稽古場は窓を開け放ち、室内にも手前座が置かれ、そのすぐそばにはこの季節らしく菖蒲がいけてあって、とても風情がある。

席は室内にいくつかと、ベランダにひとつ。

部屋でもなく外でもないところに惹かれて、ベランダの席に腰を下ろした。

少し強めの風が吹き渡る。


時間が来て、お茶会が始まった。

最初は「平成手前」という、この流派独自のお手前で玉露をいただく。

しかも。

すこし暑い時期だからか、大ぶりの茶碗に氷を入れて、そこに玉露を淹れるという。

白い碗に透明な氷が重なり、碗の底に覗く玉露の緑と、氷の山に添えられた芙蓉の葉の緑が涼やかに共鳴する。

指先で芙蓉の葉をそっと押さえながら、お茶をひと口。

外を歩いてきた身にはありがたい冷たさ。

そして冷たいながらも、しっかりと甘い。

甘露。

続いて今度は古式のお手前でお茶をいただく。

古式のお手前では扱う道具も増え、お茶碗もぐんと小ぶりになる。

そしてお茶の量もぐんと少なく…

先生が事前に「びっくりするくらい少ないですよ」とおっしゃったので心づもりしていたけれど、それでもびっくりしたほどに、本当に少ない。

まるで誰かの飲み残しのように、ちいさなお茶碗の底にぽっちりとお茶が垂らしてある。

ところが。

これがまた驚くほどに強い甘みを持っていて、たったこれだけの量にも関わらず、口のなかにふわっと甘みが広がり、つられて思わず顔が綻んでしまう。

その余韻だけで充分で、ちょっと小腹が空いていたけれど主菓子には手を出さないまま、二煎めを待つことに。


二煎めは童子の方が茶銚を持って来られて、目の前で注いでくださる。

ちょっと緊張する。

今度は一煎めより少し多めで、飾り結びの柄全体がお茶の底に。


本日の最後はお抹茶。

昔のお家元が裏千家の方と協働して作り上げたお手前らしく(うろ覚え…)、お互いの作法が少しずつ入り混じっている感じ。

先ほどまでのぽっちり具合を見てきた目には、お抹茶のお茶はなみなみと見えて、頭の中でどんぶらこ〜どんぶらこ、と妙な合いの手を入れてしまった。


おいしくお茶をいただくこと一時間半。

過ぎてみればたったの一時間半でありながら、もっとゆったりと満たされた時間だったように思う。

晴れ渡る空、明るい緑の庭、整えられた砂利、趣向を凝らした手前座、美味しいお茶。

今日、このような場を設けてくださった先生に感謝。

そしてお手前をしてくださったお弟子さん、水屋で働いてくださったお弟子さんの方々に感謝。

お茶会を辞した後は満たされた気分のままに隣駅まで歩き、結局そのままするすると方南町駅まで歩いてしまった。喉を通った甘露の滴は、たしかに心に届いたのだと思う。