リズム感 テンポ
前回のリズム感 拍につづき
もう1つ、リズム感に欠かせないのが「テンポ」!
テンポは演奏速度のことですね。
クラシックでいうところの、楽譜冒頭にある場合の多い速度表記「Allegro」「Andante」などや、数字による表示もあります。
これも単なる「速度」と考えがちですが、作曲家が指定した速度であり、曲の良さを最大限表現するために大切なものです。
もちろん、これもメトロノームに合わせただけでは◯となりません。
ただ・・このテンポ、リズム感、グルーヴ感にとっても大事なのですが・・
クラシックピアノにおいては、簡単なことじゃないと思うのです。
ここで私がいうテンポというのは、「最低限、作曲家が指定した速度に近いところで弾く」ということではなくて、それを維持した上でのリズム感のこと。
いろいろなピアニストを聴いていると、このリズム感は、別名「感性」とでも言える気がするのです。
まずは、こんな曲を聴きながらどうぞ♪
こちらユッセンの弟君アルトゥール、当時15歳の演奏。
Schubert Impromrtus D.899 no.1
シューベルトが晩年(っていっても30才なんだけどね)、死の前年の1827年に作曲したこの自由な即興曲。
15歳の現代の若者は、どんな思い入れで弾くのか。
クラシックピアノには、テンポの微妙な揺らしがあります。
「間」だとか、「溜め」とか、「テンポ・ルバート」とか...
ピアノを歌わせるということから、「息を吸う」微妙な間とか、いろんな表現をしますが、これは、その曲を大きく見た時や音楽の構成を考えた上で作っていかなければなりません。
また、その「揺らし」「テンポ・ルバート」というものが、作曲家の生きた時代の音楽背景や、その時代に使われていた楽器、音楽構成によって、「程度」があり、やりすぎてしまってはいけないという場合も多いです。
余談なのですが、オランダのユッセンお兄ちゃんルーカスが子どもの頃に、ピアニストのピリスに習っていた時、たしかシューベルトの曲を弾いた時、「そのテンポ・ルバートを全部とってからもう一度聴かせて、とても多いから」と言われたとか...。
シューベルトは時代的に古典派とロマン派の受け渡しのようなところにいて、曲によってはベートーヴェンよりも感情を表現して溜めや揺らしを入れてもいいと思うけれど、やりすぎたのかなんなのか詳しいことはわかりませんが、全部とらせたのは何かしら意図があったはずですよね。
これは推測でしかないのですが、まだ人生経験の少ない子どもなだけに、感情移入した曲を弾く時にわざとらしくなってしまったり、曲とは関係なく独自で好きに揺らしてしまったりで、そぐわなかったんじゃないかなぁ。とか。
全部とらせてから、また構築していったんじゃないのかなぁ。とか...。
少し脱線しますが、私の好みを言えば、この「揺らし」はあまり好きじゃないのですね。。
あまり入っていると曲自体の良さより、弾いている人の自己満足のように聴こえてしまったり、グルーヴ感がなくなりテンポにのることができないです。
ただ、まったくないのもつまらない機械的な演奏なので、このほんとに微妙なそして適切な場所と大きさが大切になってくるのです。
クラシック曲を沢山聴かれている方はおわかりかと思うのですが、同じ曲を多くの人が弾いていて、その好き嫌いが分かれるのも、このテンポ感も大きいと思うのです。
自分の感性に合っていると、あぁいいな〜と感じますが、全く予想のつかないところでリズムを揺らされるとついていけないと感じることもあります。
それこそ自分の感性に合うか合わないかの。
逆に言えば、自分を表現する個性であって、これでなければダメという答えではないんですよね。
まさに、「個性」。
ここまで、「揺らし」に関してお話してきましたが、今度は速度。
ピアノを愛好している方の中には、様々な技術の人がいて、テンポの早いそして技巧的な曲も難なく弾けてしまう人もいれば、難しいひともいます。
私は、テンポの早い指定のある曲が難しいと思う人でも、弾きたいという方には挑戦してもらっています。
テンポ速度の速い曲は、それを指定した作曲家の意思があるので、なるべくそこに近づけたいですが、早く弾くと崩れてしまう場合は、余裕のあるテンポに遅くしてもいいと思います。
コンクールなどに出たりする時は別ですが...。
遅くしてもきちんと感情や表現は入れられますし、それができれば個性的な素敵な曲に仕上がります。早く弾いて崩れてしまう、弾けない箇所を弾き飛ばしてしまうよりずっと練習にもなります。
遅いテンポを保ち、感情を入れる。
これは、実は、結構難しいことなんですよ。
お子さまは特に。
子どもたちに、「テンポを遅くしてみよう」というとみんな難しそう。
できても、手首でテンポをとっちゃったり、無機質な演奏になっちゃったり...。
試しに、今弾いている曲を全体的なテンポを遅くして、それでも表現豊かに弾いてみてください。
どうでしたか?