Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

【番外編】北九州・直方 クラシック喫茶カラビンカ21/04

2021.05.08 16:11

※このお店をご訪問の際は、予め電話で営業をご確認されることをおススメいたします。


今回も番外編ですが、20/10に惜しくもご閉店された佐賀・鳥栖の音楽小屋のマスターから教えていただき、それ以来、北九州弾丸ツアーの際には寄っている直方にあるクラシック喫茶カラビンカさんのご紹介。

場所は九州自動車道八幡ICから国道200号直方バイパス経由で約5km、車通りの多い直方行橋線から少し外れたのどかな雰囲気のよく似合うお店。

後継者を探しながら店を継続しているという78歳のマスターは、往年の名指揮者カール・ベームの大ファン。

ベーム&ウィーン・フィルの77年の来日公演のメイン・プログラムは、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と第6番「田園」。名演の誉れの高い演奏会で、私もCDで聴きましたが、マスターはそれを実際に聴き、「屋根が吹っ飛ぶかと思った」のだそうです。

次の80年の来日公演は、残念ながら聴きに行けなかったマスター。せめてTV放映を録画したいと思ったものの、その当時ビデオ録画機は一般大衆にはまだ無縁の高級品。それでも、市内の質屋で発見したマスターは、サラリーマンの1ヵ月分の給料より高い24万円をはたいて、購入・録画。

マスターのベーム愛の深さがわかる逸話ですが、この店を初めて訪問した時、そのお宝録画を拝聴。。。そして、これが本当に凄かった!心から感動。

演奏曲目は、ベートーヴェンの交響曲第7番。最晩年最後の来日公演時のベームが取ったテンポは、あのチェリビダッケよりも遅いもの。にも関わらず、必死に食らいつき、ベームの期待に応えようとするウィーン・フィル。そこで見せつけた凄まじいばかりの底力。そして、そこに遺されたのは、ブルックナーのような大きな宇宙を思わせる超弩級の演奏。

TVのスピーカーで聴いていたので決して音は良くなかったものの、あのベームの指揮ぶりとウィーン・フィルのメンバーの必死の形相を見たからこそ、伝わってきた張り詰めた演奏の緊迫感。

この演奏の評価はその緊張感が伝わるか否か。。。私自身も空気感の伝わりにくいCDで聴いていたらこんなに感動していたのかどうか、正直なところ自信がありません※。

いずれにせよ、視聴することが出来てとても幸せだった演奏で、お宝映像をわざわざ見せてくださったマスターのご厚意に感謝した次第。

※こんな異常に遅いテンポの場合、オケがどう演奏しているように聴こえるのか?もし、少しでも弛緩しているように感じたら、ダメだと思います。

このお店は、常連さんが作ったという管球アンプでフィンランド製のスピーカーを適度な音量で鳴らしておられますが、この三角屋根のログハウスの音響効果も大きいようで、その柔らかく漂うような音が気持ちいい。

またマスターが「こんなの知ってる?」と言って聴かせてくださったのが、この一枚。

N響の歴史の中で大きな役割を果たしたという知識でしか知らなかった往年の名指揮者ヨーゼフ・カイルベルトがそのN響を振ったブラームスの交響曲第1番。

これが、何と!日本のオーケストラとは思えない実にドイツっぽい分厚い響きで、素晴らしい演奏。。。こんなレア盤をしゃらっと教えていただけるクラシック喫茶、やっぱり楽しい!

この他、ベルリン・フィルが北九州に来た時、そのリハ―サルを聴きに行った時のお話や、岸邉百百雄氏※が九州交響楽団のコンサート・マスターとして、ハイドンの交響曲「告別」を演奏された時、最後の一人で弾かれたヴァイオリンの響きがあまりに美しく、涙が出たお話等、この直方という地方でクラシック音楽とずっと向き合って来られた方の思い出話もまた楽しい。  

※岸邉百百雄氏は、福岡モーツァルト・アンサンブルをご結成なさる等、福岡で積極的に音楽の啓蒙活動をなさったことでも有名。

但し。。。このお店は地域に根差した喫茶店。

常連さんの要望なのか、音を鳴らしていない状態もよくありますので、驚かないように。苦笑

【駐車場:有、喫煙:可】

※余談ですが、私がこのお店を訪問したのは、現在鋭意作成中の九州ジャズ・ガイド第②号の原稿チェックを各お店(今回はちょいWARUうさぎさん、オムさん、オーディオ・ビギンさん)にお願いする中津~北九州弾丸ツアーの途中。。。もうすぐ完成出来る目途がつきましたが、下記の第①号も好評発売中ですので、併せてチェックいただけると光栄です。

【21.5.13追記】お陰様で九州ジャズ・ガイド第②号も下記のとおり無事完成いたしました。

「九州のジャズ・バー/喫茶のご紹介」ページへ戻る