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超人ザオタル(9)変わらぬ日々

2021.05.10 01:05

私は休息の時間に道端で瞑想するようになった。

方法など分からず、ただ座って目を閉じるだけだったが。

そうしていると、心が落ち着いてくる気がした。

そして瞑想が終わると私は再び歩き始めた。


ミスラも私と一緒に瞑想するようになった。

気づけば大勢の人々も瞑想していた。

瞑想の時間はそこだけ時が止まったようになった。

世界は夜空のような静寂で満ちていった。


私は長い間、道を歩いてきた。

だから道がどのようなものかはおおよそ知っている。

自分が何をしているかは知っているつもりだった。

だが私はその歩いている自分が誰なのか知らないことに気づいた。


それから私は自分が誰なのかを考えるようになった。

歩いているときも、瞑想しているときも。

「あなたは誰なの、ザオタル」

ミスラは不思議な顔で私を見つめて言った。


次第に後を付いてくる人々が減り始めた。

道の分岐で私とは違う方向に歩いていったのだろう。

ついには私の後に誰もいなくなった。

私はまたミスラと二人きりになった。


それでも私はいつもように歩いて、そして瞑想をした。

ミスラもそれに付き合った。

ただ道を歩き、そして瞑想をする。

そんな二人の日々が続いていった。


あるとき、道の反対から人が歩いてきた。

いままで人とすれ違うことなどなかった。

私は一体それが誰なのか興味を持った。

それは埃まみれの灰色の布をまとった初老の男だった。


私は近づいたその男に挨拶しようとした。

だが、男は私に目もくれずにすれ違った。

振り返ると、男の背中があっという間に遠ざかっていく。

男にとって私などまるで存在してないかのようだ。


「誰なのでしょうね」

ミスラは独り言のように言った。

男の歩く姿が見えなくなると、また二人になった。

道はいつもの通り静かだった。


それから数日が過ぎた。

道端で瞑想をしている若い男がいた。

私たちは邪魔にならないように少し離れたところに座った。

そして同じように瞑想をした。


瞑想が終わって、若い男のいた場所に目をやった。

だが、そこにはもう誰もいなかった。

「あの人はどこにいったのでしょうね」

ミスラはまた独り言のようにつぶやいた。


「ミスラ、私はあの小屋に戻ろうと思う。

これだけ道を歩いてきて何もないのだ。

これ以上旅をしてきて何になるのだ。

私はもう休息につきたい」


私はついに自分の思いをミスラに告げた。

「まだ機が熟していないのです、ザオタル。

小屋に戻っても時が止まるだけで、

歩くべき道は残ったままです」


ミスラはそう言って泣きそうな顔で私を見つめた。

予想できた答えだったので驚きはなかった。

そうか、とだけ言って黙った。

私は立ち上がって、また道を歩き始めた。