2016おひとりさま東京旅行4。ひとりぼっちの若冲展では体力が限りなく尽きる。
改札を抜けると、そこは上野公園だった(道路を渡ったら)。
分かりやすい立地で素晴らしいですね。問題は上野公園が広大に広いことです。
まあ若冲展の場所はおそらく人が沢山いるので、迷っても人に聞けばなんとかなるでしょう。入ってすぐにあった美術館で、冷たいお水を2本買います。これでサンドイッチとお水は確保。これ以上摂取したらトイレに行きたくなる可能性があるので、ぼっち者としてはできるだけ避けたいところです。
お水もサンドイッチも保冷バッグに入れて準備万端。人の流れについて進めばきっと、すぐ場所も分かるはず!
するとそこに、若冲展の看板を持った男の人がいました。せっかくいるので「こっちでいいんでしょうか」と尋ねてみます。
「ここまっすぐ行ってね……、……人の流れについていけば分かるから」
聞いても聞かなくても同じだったー! とか心で思いつつ、礼を言って進みます。
それにしても大きい公園です。木がばかでっかいし、長年都民の憩いの場として使われてきたのでしょう。それはいいんだけど広い。
進むとスターバックスがありました。スタバの飲み物を持っている人がいたりして羨ましいですが、今はスタバに並んでいる肉体的余裕がありません。もう少し進むと、やっと若冲展らしき場所が見えてきました。看板もあります。しかもその左側にあるのは、かのパンダがいるという上野動物園です。近いな!
看板の表示、170分待ち。(終了日前日月曜日)
平日を狙ってきただけあって、「まあ、これくらいなら頑張れるかな」というレベルです。よかった。それでも約3時間ですね。
チケットを持っていない人は左に行って購入し(30分待ちぐらい)、持っている人は右側に向かって並ぶ様子。チケットはネットで事前購入してあったので、「よかったー」とか思いつつ右に行きます。
うーん、でも、遠いぞ……。最後尾はまだか。さすが約3時間待ちです。はじっこの、道路際あたりまで歩きました。
やっと最後尾に着いて一息。今の時間は、12時ちょい前ぐらいですね。周りを見ると、やはり年配の方が多いです。女性が多いですね。日傘を持っている人も多くて、あと二人連れが多い感じ。友人同士や夫婦ですね。かと思うと小さい子がいる人もいて、あの子頑張れるかなーとこちらが不安に。
さて、肝心の私の装備を見てみると、
・つばつきぼうし(UVカット)
・おりたたみひがさ(UVカットと雨兼用)(結局使わなかった)
・おりたたみいす
・みず(二本)
・サンドイッチ
・PSP
といったところです。水とサンドイッチは保冷バッグに入れてあります。
周りを見ると、折り畳み椅子を使っている人はいませんね。まあ、私はあまり他人の目は気にしない残念なスタンスです。ひとり折り畳み椅子をセットして、旅行カバンをわきに置き、首からストラップでPSPを提げて準備万端。
さあ列にも並んだし、ゆっくりゲーム(ギャルゲー)するわよーと思ったら、すぐ移動。
ちょっとずつ列が進んでいるようです。
左手にカバン、右手に椅子を持って移動。
ふう。
さーてゲーム(以下略)。
進む列。
左手と右手に持って移動。
ふう。
さーて(以下略)
……。
……。
わああああ!
結論から言うと、ほとんどゲームできませんでした。無駄にちょこちょこ進みが速かったです。
あとみんな、ほとんど大きな荷物を持っている人はいなかったですね。私はでかいカバンと椅子があったので、もちゃもちゃしてしまいました。
私は椅子に座って立って、という頻度が高かったので、「スクワットか!」と言いたくなるぐらいでした。
それでも当然、黙っている時間のほうが長いので、椅子があったほうが私はラクでした。スクワットになっていたのはまあ……、足が鍛えられたかもねぐらいにポジティブに考えておく。
列の並んでいるところは、わりと日陰率が高いので、そんなにはきつくなかったです。給水所が全部で5箇所ほど設置されていて、小さい紙コップで飲めるようになっていました。私は水を持参したので遠慮しましたが。
あと、コンビニでよく貰えるような紙おしぼりを冷たくして配ってくれていました。ありがとう美術館の人。
私の見た限りではありますが、倒れている人などはいませんでした。知ってはいましたが、ご年配の人はけっこうみんなタフであるのだよ……。
よたよたもたもたぼんやり並んでいると、よくテレビ局の人が撮りながら走って駆け抜けていきました。5局ぐらい来ましたかね。
「わあ~、すごい~、ならんでるう~」
みたいな一律な声を上げて去っていきます。勝手に撮って勝手に去っていくのですが、正直ライトにバカにされているようで気分は良くなかったです。
まあ同じようにカメラの前で、「わあすご~いホント並んでる~」みたいに走り抜けて行った人がいたのですが、私はその後にボンヤリ、「……アレ、今横を走りぬけていったの、TOKIOの松岡くんじゃ」と思いました。
ああ、君の後輩の大野くんが若冲展を宣伝したらしいおかげで、私は三時間ぐらい並ぶ羽目にねと思わないでもありませんが、本人はすでに影も形もありませんし、とかボンヤリ思いながらやり過ごす。
長い。
デートなのか列に並ぶ様子もなく、キャッキャウフフと自由に横を歩きぬけていくカップルとかが羨ましい。
みんなみたいに二人連れとかだとおしゃべりもできますが、私の相手はギャルゲーのみです。しかも列が小刻みに動くのですぐ揺れて「ゲームを終了しますか?」とか表示されて止まってしまう。
あきらめてゲームを仕舞い、列を小刻みに進む以外は、ぼーっとしたり人を眺めたりすることにしました。鳥はスズメばかりである。
単調な列が終わると、美術館前ぐらいの列になり、入り口前の列になります。そしてエスカレーターで下に下りて、やっと美術館の中に入れるようです。
まあ、別に何もないので割愛して、やっと中に入りました。
あーっ、疲れたー。
一瞬列から離れ、折り畳み椅子をカバンに入れて、お水を飲んで一息。あとから考えると軽くミスったのですが、列は終わりではなく、この後もスタッフの人にチケットを見せるところまで15分ぐらいは並んだのです。
それに気付いてあああとなりましたが、少し並びなおして、チケットを渡し、やっと中に入ることができました。やっと……。長かった……。ここまでのトータルでいけば、やっぱり3時間ぐらいかかってましたね……。
中に入ってしまえば、絵の並んでいる美術館の中は、人がばらけていました。
「並ばず空いている好きな絵から観てください~」というスタンスみたいです。ほいほい。ではこの小さいニワトリの絵から見ますか。
……う。
うっまああああ! うますぎるううう!
心の中でミスター味っ子のようなオーバーリアクションをしそうです。まあ焼きたてジャぱんでもかまいません。近距離で見ても、「これ本当にどうやって描いたんだ……」と全く理解不能です。
「これ何の花かしらねえ……」
「トゲがあるから、バラじゃないでしょうかね、野ばらとか」
「そうねえ、トゲがあるものねえ」
と、全く知らない上品な着物を着たマダムと絵の前で話し合う私。このバラ、けっこういろんな絵に登場していました。お好きなのですな。というかマダムあの列にお着物で並ばれたのですか。見ると杖の人も車椅子の人もいます。みんな頑張ったのか……。
展示室がいくつかあって、思ったよりたくさんの絵を見ることができました。100以上はあるんじゃないでしょうか。しかしどれも上手い! どうかしている、君本当にどうかしているわ若冲。上手すぎて描写も細かいので、見るところがありすぎて人の列が絵の前でほとんど動きません。
ヨロヨロヨロヨロと、なんだかわけがわからない感で見ながら進んでいきます。どれも上手いのでパンチドランカー気分です。精神的にボコボコにされます。
正直、テレビカメラなんかからは「何時間も並んでバカみたいー」みたいな感じも受けましたが、これは見ないほうがバカだよというレベルの展覧会。
特に動植綵絵なんて凄い。同じフロアに釈迦三尊図とかもあってフラフラです。みんな絵の前からずっと動こうとしない。わかるわかるよ。もうずっとしばらくこうして見ていたいよ。
また絵がものすごく大きいんですよ。どうしてこれを描ききるまで心が折れないのか。
心が折れないというと、横長にものすごく長い絵なんかもあって、一番左のほうには文章が書かれているんですが、また字がすごく上手い。
全部絵を描ききって、「ぽちょ」とスミとか落としたらどうしようとか考えないのでしょうか。私には無理だ。
でも鶏と花がやっぱり凄いかなあ。あんなに描いて飽きないのかというぐらいたくさんあって、どれもものすごく美しい。架空の鳥は目が人間っぽくてミステリアスです。私の見たかった象もいました。あの目でした。ミステリアス。
そんなわけで、最初から最後まで圧倒されながら移動します。途中、若冲関連の書籍が売っているコーナーがあったんですが、そこでも「30分待ちです」とか書かれていて、私は心がそれだけでも折れました。
最後、美術館の外で若冲展の目録が売っていて、試し読みができるのですが文章も絵も充実しています。3,000円するので買おうかどうか迷っていたのですが、まあ折角なので買うことにしました。
そして、買って五分で後悔する。
「お……、重いっ」
荷物と一緒に持つと死ぬほど重い。手がちぎれそうです。とてもスタバに寄るような精神的余裕がありません。
「ああ、コロコロ……、コロコロがあれば……」
ここでスーツケースとかキャリーケースとかの語彙も出てくる今は余裕がありません。
時間はここで、夕方4時近く。
これからホテルにチェックインしなくてはならないのに、この重い荷物を持ってたどり着けるかすら不安です。あついし。ひとりだし。
とりあえず呆然と座りながらHPの回復にいそしむ。ちなみに、道ゆくみんなは元気そうです。こうしていても仕方ないし、疲れ果てるのも慣れているし一人にも慣れているので、よっこいしょーと立ち上がるのでした。人生経験上、だいたいは「なんとなく動いていれば、なんか終わっている」ので今日も大丈夫だ。たぶん。
まあなんとか、ひとりでこの東京砂漠を越え、生きてホテルにたどり着いたら、予約時間までにそっくり館キサラに行くのですよ!(考えてみれば訳のわからない旅行計画)