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稲と米

2018.05.11 14:00

http://yushin-brewer.com/special/okome/vol01/index.html 【第1回【稲は魂が宿る「いのち(命)のね(根)」】】

命をつないできた稲私たち日本人は、お米が大好き。かけがえのない主食として、長くつきあってきました。お米の歴史をひも解いていくと、弥生時代にまでさかのぼります。

「稲」は今から約2500年前に、日本へやってきました。どこから来たのかは、諸説あります。水と太陽の力を借りて日本の大地に根づき、水田という設備をもうけ、稲作が始まりました。

稲は、日本人が落ち着いてひとつの場所に住み、食べものに困らない暮らしをもたらしました。米づくりは共同作業が基本。

そのため、稲作を生業とする人々が集って集落が生まれ、村ができ、社会が誕生します。

私たちの祖先は、それぞれの社会で命をつなぎました。

そして稲を育てる水田は、米づくり以外にも・天災を防ぐダムの代わり・水をきれいにする浄化作用・作物が育ちやすい土づくり・渡り鳥の餌場(えさば)・魚や虫の住み家といった、さまざまな働きがあります。

稲は自然や私たちを生かしながら、日本文化が作られる上で、とても大きな役割を担ってきたのです。

「いね」と呼ばれるようになった語源には飯の根、生きる根、息の根、そして命の根という意味が込められています。

お米は単なる食べものではない!?

稲作が伝わる以前の日本人は、自然とともに実を収穫したり、魚や肉を獲ったりして暮らしていました。

しかし、食べるものが調達できないと、住まいを変えていかなくてはなりません。

たくさん狩猟できた日があったとしても、時間がたてば腐ってしまいます。

しかし、お米が穫れるようになってからは、食べあまれば、2年も3年も保存することができるようになりました。

この「余剰」は、米以外の作物や道具と交換するための貨幣としての役割も。

余った米でモノを増やし、文明が発展していったのです。

お米は後に、調味料や日本酒、お菓子、化粧品などにも生かされます。

まさに日本は"お米によって成り立ってきた"国なのです。

酒屋として160年歩んできた勇心酒造も、長い年月をかけて、お米や発酵技術と向き合ってきました。

研究を重ねて感じるのは、お米に秘められた無限の可能性に「生かされている」ということ。

汗水ながすモノづくりの尊さや喜びを、現代に暮らす私たちも、受け継いでいます。


http://yushin-brewer.com/special/okome/vol06/index.html 【第6回【お米から生まれたことわざ】】より

苦労が美味しいお米に変わる

日本人が米作りを始めて約2500年。人々は「八十八の手間がかかる」といわれるほど、膨大な仕事量と煩雑な作業に力を注いできました。

とくに機械も手引きもなかった頃、人々が感じた「米作りの大変さ」をあらわす言葉があります。『米一粒、汗一粒』お米を実らせるためには、とてつもない苦労が必要だということ。『青田と子供は褒められぬ』青々とした上出来に見える田んぼですら、収穫はよめない。賢いかどうか大人にならないと分からない子どもと同じ。

だから気を抜かずに、手をかけ続けるという心得です。

自然を相手に暮らす、お米の国の人々。だからこそ、心が乱れるような災害や不作が起きても、 慌てずに対応しようとする、肝の据わりが伝わってきます。

その一方で、良い出来事があったら「おかげさま」。

『米の飯より思おぼし召し』ご飯をご馳走ちそうしてもらうことも嬉しいが、ご馳走したいと思ってくれる気持ちはもっとありがたい。

古人が残した言葉は、私たちがつい「自分中心」になりがちな 暮らしを見直す、きっかけを与えてくれます。

お米が美しい国と心を育む

奈良時代に記された日本書記には、『わが国は豊葦原瑞穂国とよあしはらのみずほのくに』

(日本は稲がみずみずしく出そろう、美しい国)と書かれています。

各地に広がる田園風景は、豊かな国の象徴のひとつ。

今の五円硬貨に、たわわに実る稲穂が描かれているのは、日本人がお米によって命をつないできた証です。 この恵みを大切にいただくための心得も残っています。

『青田から飯になるまで水加減』

田んぼにあるうちから、飯を炊くときまで、 収穫量も味も、水の量に左右される。

何事も“良い加減”が大切ということわざです。

『千石万石も米五合』

千石取りの武士も、一万石の大名も、一日に食べる米の量は、 せいぜい五合もあれば十分。

どんな身分でも、欲張ってはいけないという教え。

過度よりも控えめに。程よい加減を知る。

今の暮らしが十分贅沢であることに気づく、 謙虚なものさしを持っている人は、自然に生かされていることに感謝する、豊かな心の持ち主です。

日本人の力を合わせる文化、助け合う心が育まれたのは、米作りが暮らしの真ん中にあったからこそ。

そんな日本人の、自然を慈しむ姿や思いが、 ことわざとして残され、語り継がれています。