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日本の強みを世界に解き放つ

2019.05.13 05:14

フェイスブック・ごとう孝二さんの投稿記事 I LOVE JAPAN~世界を融和に~ 

「ベトナム中を感動させた少年の大和魂」

東日本大震災は数々の人間ドラマを生んだが、3・11からまもなく、1人のベトナム人記者が取材で被災地に入った。避難所で少年にインタビューする。

少年は津波で両親を亡くし、激しい寒さと飢えで震えていた。一つのおにぎりを家族で分けて食べるような状況だった。記者は見かねて少年に自分のジャンパーを着せかける。

その時、ポケットから1本のバナナがぽろっとこぼれ落ちた。

記者が、「バナナ、欲しいか」と問うと、うなずくので、手渡した。

ところが、少年はそれを食べるのでなく、避難所の片隅に設けられたみんなで共有の食料置き場に持って行き、もとの場所に戻ってきたという。

記者はいたく感動する。帰国すると、<こういう子供はベトナムにはいない。……>と報道した。この記事が大変な反響を呼ぶ。

かつて、ドラマ「おしん」が大人気になったお国柄だ。ベトナムからの義援金は100万ドル(約8000万円)にのぼったが、このうち、「バナナの少年にあげてください」という条件つきが5万ドルもあったというのだ。

「少年は大変けなげな日本人の美質、DNAをきちんと受け継いでいる。将来の日本を支える若い人たちのなかに、こういう子供は少なくない。」悲劇と苦難のもとでも失われない民族的な強じんさを、一少年の小さな行為から教えられた思いだ。

3・11は<第2の敗戦>とも言われるが、「敗戦の時にも同じような話があったんです」と言う。

それは、ある会合の席で、五百旗頭真防衛大学校長がジョージ・アリヨシ元ハワイ州知事から聞いたエピソードだ。

敗戦の1945年暮れ、占領軍の若い将校だったアリヨシは、東京・有楽町の街角で少年に靴磨きをしてもらった。寒風のなか、小柄な少年が懸命に心をこめて磨く。アリヨシは白いパンにバターとジャムを塗り込んだのをプレゼントした。少年は頭を下げながらそれを袋に収める。「どうして食べないの」「家に妹がいるんです。3歳で、まり子といいます」と答えた。少年は7歳だという。

アリヨシは感銘を覚えた。「世界のどこの子供がこんなふうにできるだろうか。モノとしての日本は消失した。しかし、日本人の精神は滅んでいない。あの時、日本は必ずよみがえる、復興すると確信した」と語ったそうだ。「日本人の悲しみを共有し、日本人に感服する。」

【東日本大震災 涙の答辞文字起こし】          

私たちはキラキラ光る日差しの中を希望に胸を膨らませ、通いなれたこの学び舎を57名揃って巣立つはずでした。

前日の11日、一足早く渡された思い出の沢山詰まったアルバムを開き、10数時間後の卒業式に思いを馳せた友もいたことでしょう。

東日本大震災と名付けられる天変地異が起こるとは誰も知らずに。

自然の猛威の前には人間の力はあまりにも無力だ。

私たちから、大切なものを容赦なく奪っていきました。天が与えた試練というには酷すぎるものでした。辛くて悔しくてたまりません。時計の針は14時46分を指したままです。

でも時は確実に流れています。生かされたものとして 顔を上げ、常に思いやりの心を持ち、強く、正しく、逞しく生きていかなければなりません。

命の重さを知るには大きすぎる代償でした。

しかし苦境にあっても天を恨まず、運命に耐え、助け合って生きることがこれからの私たちの使命です。

私たちは今 それぞれが 新しい人生の一歩を踏み出します。


https://www.dhbr.net/articles/-/7350 【「社会としての終身雇用」を構築し、日本の強みを世界に解き放つ】より

[対談]村上由美子×松江英夫

村上由美子(Yumiko Murakami)

経済協力開発機構(OECD)東京センター所長

上智大学外国語学部卒業、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。その後約20年にわたり主に米国・ニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックスおよびクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任。ビジネススクール入学前は国連開発計画や国連平和維持軍での職務経験も持つ。ハーバード・ビジネススクールの日本アドバイザリーボードメンバーを務めるほか、外務省、内閣府、経済産業省はじめ、政府の委員会で委員を歴任している。著書に『武器としての人口減社会』(光文社新書、2016年)がある。


新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、「両極化」を一気に顕在化させ、経済や教育における格差を拡大させている。しかし、このコロナショックは日本にとって大きなチャンスになり得る、というのがOECD(経済協力開発機構)東京センター所長の村上由美子氏の持論だ。平均的に高い能力を有する人的資源に恵まれ、協調のマインドが根付く日本は、ポストコロナの世界が求める社会の「底上げ」に貢献できるポテンシャルが高い。その強みを十分に生かすためには、国、企業、個人が緊密につながって新たな社会システムを構築する必要がある。2021年、新たな年を迎え、ポストコロナの世界で日本が目指すべき方向性と未来像を展望する。

新時代のリーダーシップの鍵は「多様性」

松江 さて、新しい年が始まりましたが、2021年にどのような展望をお持ちですか。

村上 パンデミックの終息に向けて、引き続き努力が必要な年になることは確かです。ですが、これまでのコロナ対応で得た教訓を糧に、いよいよ来年は社会に前向きな変化が兆すのではないかと考えています。特に、コロナ禍を機に劇的にスピードアップした医療と教育の変化には注目しています。

松江 人間は生存の危機に瀕すると大事なものに気付きます。SDGs(持続可能な開発目標)のようなゴールが世界で共有されたのもコロナ禍がもたらしたプラス面ですね。

村上 逆に、コロナ禍を機に日本が世界から改めて学ばねばならないのは「多様性」です。新型コロナウイルス感染拡大に対する各国の対応はさまざまで、評価を上げた国もあれば、下げた国もありました。明暗を分けたポイントは「ダイバーシティ(多様性)」ではないかと私は考えています。女性首相の国は先進的、というような単純な話ではなく、トップの意思決定に影響を与えるメンバーに多様性がある国ほど、危機に適切に対応できていたように思うのです。そして残念ながら、日本はまだトップを取り巻く幹部層の同質性が高いままです。

松江 新時代には、日本もグローバルな視野から相対化してリーダーシップの在り方を進化させていかなくてはいけませんね。

村上 ハーバード・ビジネススクールのリンダ・A・ヒル教授は、不確実性の高い時代にふさわしいリーダーは、トップダウン型でカリスマの強いタイプではなく、羊の群れを後方から緩く方向付けるような「羊飼い型」だと言っています。変化の激しい環境では、どれほど先見の明がある人でも百発百中で未来を予測するのは不可能です。だとすれば、チームの多様性を高め、とっぴな意見も否定せず受容した方が最適解に近づける。ポストコロナのリーダーシップの肝は「唯一の答えを決める」ことでなく、「多くの可能性を提示できるシステム作り」にあるのではないでしょうか。今後ますますイノベーションが必要な日本にとって、目指すべきリーダーシップ像のヒントがここにあると思います。

日本から発信する「新たな資本主義」

松江 昨年は新型コロナウイルスの感染拡大によって世界が大きく変化しました。村上さんは、ポストコロナを見据えた時代の環境変化をどう捉えていらっしゃいますか。

村上 『両極化時代のデジタル経営――ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』でまとめられていた通り、「両極化」が顕著になっていると思います。私も2016年に出版した『武器としての人口減社会』で、そうした社会の動きに触れましたが、その流れはコロナ禍で一気に加速しました。世界中で経済格差が広がり、それが教育格差を広げている。こうした格差問題を解決するツールになるはずのデジタル・テクノロジーの恩恵も、享受できる層とできない層に分断されています。

松江 もともと極として存在していたものが、より鮮明に、現象として「両極」として浮かび上がってきましたよね。

村上 はい。しかし、ここに日本のチャンスがあると私は考えています。というのも、このコロナショックで、ピラミッドの頂点に立つ数パーセントのエリートだけで世界を引っ張っていくことの限界が明らかになりました。そして、勝者総取りのエリート主義から、全体を底上げして価値を広く分かち合う世界を目指すという方向性が世界で共有されました。そこで必要な「底上げ」は、まさに日本の得意分野なのです。

松江 確かに、日本はベースとなる教育レベルが高いこともあり、格差は拡大したといっても一定のレンジ内に収まっています。文化的にも全体を底上げしようというマインドが強いように思えます。それを日本の「強み」に転換する発想、とても共感します。

 さらに私は、経済システムの転換にもそのマインドが生かせるのではと考えています。2020年1月のダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で「マルチステークホルダー」がテーマになっていたのは象徴的で、経済性を至上とする米国式の資本主義は明らかに転換点を迎えています。この歴史的な変革の時代に、日本式の価値観をいかに能動的に世界に広げていくかは大きなテーマです。

村上 はい。今こそ日本から「新しい資本主義」を世界に発信すべきです。

松江 日本らしい社会の在り方においては「サステナビリティ」がキーワードだと思います。断絶を生みやすい両極化する時代に、強みである人材を生かして、持続的な成長軌道をいかにつくるか、いわば「断絶なき成長」を目指すことが日本の姿として大事だと考えています。

日本の強みを生かす4つの成長産業

松江 英夫(Hideo Matsue)

デロイト トーマツ グループ CSO(戦略担当執行役)

経営戦略・組織改革/M&A、経済政策が専門。フジテレビ「Live News α」コメンテーター、中央大学ビジネススクール客員教授、事業構想大学院大学客員教授、経済同友会幹事、国際戦略経営研究学会理事。主な著書に『両極化時代のデジタル経営——ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社、2020年)、『自己変革の経営戦略~成長を持続させる3つの連鎖』(ダイヤモンド社、2015年)など多数。デロイト トーマツ グループに集う多様なプロフェッショナルのインサイトやソリューションを創出・発信するデロイト トーマツ インスティテュート(DTI)の代表も務める。

松江 「断絶なき成長」に向けては、村上さんがご指摘されている人口減少社会において高付加価値の産業を育てることが鍵だと思います。

村上 高い生産性を誇る小国は、高付加価値の産業を「選択と集中」でしっかり育てています。オランダにおける農業や、ルクセンブルクにおける金融業のように、日本でも国際競争力のある成長産業を育てることが大きな課題ですね。

松江 産業の選択と集中には、「日本社会の課題解決につながり、デジタル・テクノロジーによる高度化が可能で、かつ雇用に与えるインパクトが大きいこと」が次世代の成長産業の要件になると思います。

 こうした観点から、私は特に3つの領域に注目しています。第1に、コロナショックで重要性がさらに高まった「ヘルスケア」、第2に、脱炭素社会構築の鍵を握る「エネルギー」、第3に、暮らしの安全安心を担保する「国土強靱化」です。加えて、これらの産業で活躍する人材を育成するための「教育」も、第4の産業分野になるでしょう。

村上 非常に納得感があります。付け加えるなら、それらの成長産業において、ぜひ「コンシューマー」の視点を生かしてほしい。高齢化の進展とともに、特にヘルスケアの領域における消費の在り方は激変しています。世界に先駆けて高齢化社会を経験している日本は、その変化をいち早くキャッチできるという意味で大きな優位性があります。

 私の母は48歳でドラッグストアを立ち上げ、約20年間で年商200億円のビジネスに成長させました。当時、まだ高齢化はビジネスチャンスと見なされていませんでしたが、島根県という高齢化の先進地で親を介護していた母は、肌感覚でシルバーエコノミーの重要性を理解していました。そして、その感覚を武器に、いち早く介護用品ビジネスのニーズをキャッチしたのです。これを世界スケールに広げれば、ものすごく大きなチャンスが見えてきます。個人消費支出はOECD平均でGDPの6割程度を占めています。消費行動の変化を的確に捉えることは、成長性の高いビジネスに直結するのです。

松江 面白いですね。課題先進国であることのポテンシャルを、いかにプロダクトやサービスに昇華させていくか──。とても重要な視点です。その延長線上には、日本の消費者の質に対する感度の高さを強みにして、日本が“世界のR&Dセンター”としての機能を担う、という方向性もあり得ます。そして、日本発の高付加価値な製品やサービスを生み出し、消費地を国外に広げていく。そうすれば、日本の人口が減って国内市場がシュリンクしても、国外にどんどん市場が広がっていきます。

村上 夢が広がりますね。ぜひ、実現させましょう!

個人の成長を促す「ハイブリッド人事」

村上 高付加価値な産業を育成する上では、「人材」と「教育」がポイントになると私は思います。というのは、実は、日本の人材のスキルレベルは世界的に見て非常に高いのです。OECDが実施している調査でも、読解力や数的思考力は年齢層を問わずトップクラスですし、特に人口的にボリュームのある中高年のスキルが高いことは特筆すべき日本の強みです。時代に合わせたリスキリング(再教育)さえうまくいけば、ものすごく大きなアドバンテージになります。そこで、私が提案したいのが「ハイブリッド人事」の導入です。

松江 日本型人事と欧米型人事の「ハイブリッド」ということでしょうか。

村上 はい。何かと批判されがちな日本式経営ですが、「人に長く投資をする」という文化は誇るべきものです。新卒を30〜40年間かけて育て上げるという時間軸の長さが、日本企業の安定を担保してきたのです。しかし、評価軸が年功序列だけになると、個人は成長をやめてしまう。持続的な成長のためには、やはり競争原理という「苦い薬」が必要です。私はかつてウォール街で金融の仕事をしていましたが、まさに「生き馬の目を抜く」と形容するにふさわしい熾烈な競争の世界で、個人にすさまじい負担がかかります。しかし競争を生き延びれば飛躍的に成長できる。日本にはそこまで厳しい競争はなじまないかもしれませんが、チームを安定させる「長期的投資」に、個人を成長させる「競争原理」をハイブリッドさせるのは有効です。

松江 おっしゃる通りだと思います。それに加えて私が必要だと思うのは、キャリアパスの複線化、雇用契約の多様化という「出口」をセットにするという視点です。

 これまでの日本企業の人事施策は、基本的に一つの企業内での終身雇用を前提にしたものでした。管理職を経て最終的には役員になることをほぼ唯一のゴールとして、つまりマネジメントトラックを中心に設計されてきたのです。せっかく個人が自分でキャリアを築いても、ゴールが1つしかなければ磨いたスキルが無駄になってしまうし、役員になれないとモチベーションも下がってしまう。経験やスキルレベルが高いのに本当にもったいない話です。これからは、マネジメント以外もキャリアパスを作る複線型、そしてさらには、出向や提携、兼業や副業など、社外でオープンに活躍する道を含めて出口を多様化しなくてはなりません。

村上 会社が社員のキャリアのレールを敷くことをやめ、個人が責任を持って自分のキャリアのレールを敷けるシステムに変えていくだけではなく、会社の外に受け皿が必要ということですね。

「社会としての終身雇用」

松江 はい。もっと言えば、それを「社会の仕組み化」することが重要です。「終身雇用制」といえば一企業が定年まで社員を抱えることを意味しますが、今後の日本では、これを社会全体に拡大し、社内にポジションや職務がなければ、外部に需要を見いだせるように変革するべきだと思うのです。例えば、地方は人材不足が深刻で、後継者がいないために廃業する中小企業が山ほどあります。これらの企業の経営者は自分の右腕、つまり40〜50代のマネジメント経験者を求めていますが、条件に合う人材は特定の企業との雇用関係に縛られていて、結果としてマッチングできない。リスキルやマッチングを促すプラットフォームの整備を政策的に進めれば、こうしたミスマッチが打破できます。いわば「社会としての終身雇用」の実現を目指すのです。

村上 「社会としての終身雇用」というのは素晴らしいコンセプトですね。個々のスキルを度外視して年齢だけで一律に退職させるのは本当にもったいないことです。日本人は「一律」や「平等」が大好きですが、実現すべきは「結果平等」ではなく「機会平等」です。

 また、人材のリスキルを含む「教育」も長い目で見ると大きな鍵を握っていると思います。頭一つ抜けた人たちに対してのエリート教育も重要ですが、底上げの教育も非常に大事で、これらを同時に行いやすい環境がそろっているのが日本だと思うのです。

松江 そうですね。私たちもデジタル人材の教育を熱心に国に提案していますが、現状で社会人向けの教育の場をつくっても、人があまり集まらないという現実があります。せっかく高いスキルを身に付けても、社内で生かせないし転職も難しいという、つまり受け皿になる企業側の雇用制度がネックとなり出口がないので、学ぶ動機が起こらないからです。これらの課題への突破口は「雇用の柔軟化」です。よく雇用の「流動化」というと、解雇や失職をイメージして不安になる方もいらっしゃるので、私はあえて「柔軟化」という言葉を使うのですが、雇用が柔軟化すれば、選択肢や機会はどんどん増えます。大企業の50代の部長が、企業に籍を置いたまま、週の何日かは地方の中小企業の経営者の右腕になる、といった複線的な働き方も可能になる。ゼロサムではなく、プラスサムの発想です。

村上 社会をイノベーティブにするためにはスタートアップの活躍が欠かせませんが、おっしゃるような仕組みが構築できれば、高齢世代の起業も増えそうですね。

松江 はい。そして、大企業でキャリアを築いた中高年の起業の活性化は、大企業に集中していた資源をイノベーションの前線に供給する流れを生みます。大企業がスタートアップを買収して相互に価値を上げていく、という企業変革の動きも活性化するでしょう。まさに村上さんがおっしゃった中高年のスキルの高さを社会のイノベーションに生かす流れもできるのではないかと思うのです。

村上 誰もが1つの企業に縛られず、スキルや経験を生かして活躍の場を広げられるようになれば、明るい未来が開けると思っています。

松江 「社会としての終身雇用」を構築しながら、人口減少社会において一人一人の付加価値や生産性を高める「人財大国」を目指すことが、コロナショックで加速した両極化の時代に、日本が目指すべき道といえますね。

[対談を終えて:松江英夫]

「人財大国」に向けた新たな日本の雇用モデル

 終身雇用や年功序列を特徴とする、いわゆる日本型雇用システムの変革の必要性はこれまでも盛んに語られてきた。しかし、既存の枠組みの中での「改良」には限界がある。

 雇用システムも、これまでは企業が定年まで雇用を保証し、そのためのキャリアパス設計や教育も全てを担い、そこから外れた場合に限って国や自治体が受け皿を作るという、ある種の「分断」を前提とした仕組み作りが当たり前だった。しかしこれからは、社会システムとしての「人が働き続けられる仕組み」をシームレスに構築することが重要になる。

 両極化の時代は、成長機会を生み出す一方で、社会的格差を生む可能性も同時にはらんでいる。世界中が負のリスクを乗り越えいかに持続的成長に転換できるか、いわば「断絶なき成長」が2021年の世界共通のテーマだ。

「人口減少社会、課題先進国の日本だからこそ、発想を変えれば強みとして活かせるチャンスがある」。村上さんとの対談でお互いに共感した最大のメッセージだ。人口減少下の「成長」は、一人あたりの付加価値を高めることこそ王道である。村上さんが示唆された「中高年のスキルや学力が世界的に最高水準にある」というデータがもたらす意味は大きい。少子高齢化にあっても過去の蓄積を付加価値に活かす「人財大国」を目指すことこそ、日本が今後、より掲げるべきビジョンである。

 そこに至る道筋の一つが、「社会としての終身雇用」だ。従来は企業が担ってきた終身雇用のあり方を、定年制見直し、キャリア複線化、兼業・副業、出向を可能にするオープン化により柔軟化する。一方で、成長産業の育成を後押しし、リスキルや教育と再雇用を促すプラットフォームを、公共の役割として官民が一体で整備する。「経済性」と「社会性」という両極をつなぎ合わせる取り組みが結実すれば、課題解決につながる日本モデルになり得るだろう。