『百鬼夜行路、無理心中』(朝研(早蕨薫)様)
※こちらは無料の試し読みのレビューです
あらすじ
「満月の夜に心中したやつは来世で結ばれるのよ。なんせ俺達がそうだった」江戸は山王祭の夜、百鬼夜行の宴で総大将ぬらりひょんが言うと、妖怪たちは大笑い。しかし、中には表情を曇らせる者もいたようで……?(山王祭)東海道中、人好きの百目鬼が姿を消した。ぬらりひょんは後を追って港町へ降り立つ。(百目鬼)ほか、十七編を収録。来世を願う妖怪たちの物語を四人の作家が綴った珠玉のオムニバス。
読んだのは試し読みだけですけど……いいですねえ
ファンタジーってネットにたくさんありますし、ほとんどが”なろう系”とか呼ばれている中世ヨーロッパで時代が固定されているものなんですよ。
もちろん、時代が固定されていることは悪ではありません。
ただ、中世ヨーロッパとか言いながら魔法のせいでなんでもありになりがちなんですよね。
(冒険者という名の傭兵が場合によっては個人で国家の最高戦力以上の戦闘力を保有するなど)
しかもレベルとかジョブとかスキルとかクラスとかゲーム要素を詰め込んだ結果、せっかくの西洋ファンタジーの部分が後付けに過ぎないように感じさせる作品が多いのです。
私にとってはそういうファンタジーは食傷気味でした。
しかしこの作品は和風ファンタジー、それでいて世界観はしっかりと練られていると感じました。
百鬼夜行の妖怪たちが人外の法と理をもって己の愉悦のために勝手気ままに生きていく…………
ある意味で最も純粋な和風ファンタジーではないでしょうか。
しかも妖怪たちの行動理念がまさしく人外。
徒党を組むということは仲間であるはずなのに、自分の楽しみのために他の妖怪を食らうことすらおかしくない。
無論、組織として動く以上はそんな勝手は許されないので、頭目であるぬらりひょんは女郎蜘蛛をたしなめますが、逆に言えば誰かが止めなければやっていたということ。
理性と倫理によって縛られる人間と違って妖怪は本能と快楽によって突き動かされているというのがよくわかります。
しかもそこには経歴不明の謎の女。
ぬらりひょんの愛人のようですが、その正体は誰も知らない。
”満月の夜に心中したやつは来世で結ばれるのよ。”という言葉の真意とは?
続きは本を買って読むことといたしましょう。
レビュワー:キタイハズレ(文芸高等遊民所属・サイトオーナー)