エジプト〜カイロ編 8【女性たち 2】
≪M君の話≫
M君はベルギー大使館勤めの運転手の一人で、度々私の事でも空港への送り迎えをしてくれたとても気の良い優しい青年です。
数年前に結婚した奥さんとの間になかなか子供が出来ず、あらゆる科学的処置をトライしてようやく授かったものの、奥さんは流産してしまい、ひどく落ち込んでいました。
結局この夫婦の間には子供は出来ないまま、M君は家族のプレッシャーもあって(彼は実は大勢の姉妹の中で唯一の男性で、両親の希望の星なのです)最初の奥さんを離婚、新しい奥さんをめとる結果となりました。
ですが最初の奥さんは離婚を拒否、そのまま第一夫人として存在する事になりM君は律儀に二人の夫人の間を行き来するハメ。
又二番目の奥さんと婚儀を上げる前にはその女性の兄弟たちと婚資(結納金のようなもの)の額で揉めていたようです。。
二度目の奥さんは目出度く妊娠して、M君の希望とは違って女の子が生まれましたが、取り敢えず安泰の様です。
このようなエピソードはこの社会ではごく普通で、結婚も親同士の話し合いで決められるし、いわゆる上流階級ではいとこ同士の結婚ももかなり多いそうです。
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私が出会ったベルギー大使館勤めののエジプト人女性たちーーその半分は実はイスラム教徒ではなくこの国に住む約5%のキリスト教徒コプト人でーー複雑な歴史の一端を背負っていながら共存しているのでしょう。
二つの相反する宗教を持ちながらも、彼女たちの間では、イスラムもキリストもなくて、女性として助け合い、私に対してもとても優しく、不思議な事ですが何故かとても懐かしい気持ちをかき立てられるような、もう2度と会うこともないかも知れない彼女らへの友情の気持ちはエジプトという国を思う度にずっと心にとどまるでしょう。
そしていつかは真の自由に向けて羽ばたきたいという希望を持っている、その様な気持ちがひしひしと伝わってくるようでした。
自由とはいったい一体何なのでしょうか?
多くのイスラム教国に生きる女性たちにとって、自分の考えを持つ事の出来る自由、教育を受ける事の出来る自由、そして何よりも社会や男の持ち物ではなく血の通った一人の人間として認められる自由なのでは、と考えます。
そうは言うけどやはり女性は家の中では実権を握っているんだよ、と言う方も多いかもしれません。(日本ではもしかするとそうかも、ですネ)どの様な国であれ、文化であれ、宗教であれ、それぞれ個々の家庭や家族によって色々な違いがあるのは確かです。
ですが、、、イスラムの世界では、長男を、又は多くの男の子を与える事の出来た女性にのみその尊厳を得られると言っても過言ではありません。