【男1:女2】Dear My
男1:女2/時間目安20分
【題名】
Dear My
(ディアー・マイ)
【台本に入る前に】
こちらの台本はJack Betrayar様と合作台本として作らせて頂いた台本です。Jack Betrayar様作「Bright red~真赤~」の続編となっておりますので宜しければそちらも合わせてお読みください。(台本URLは一番下にございますのでそこまでスクロールしてご覧下さい。)
【登場人物】
榎本つかさ(えのもとつかさ):病気を患っていた。
榎本陽(えのもとよう):つかさの父。
佐倉舞(さくらまい):つかさの友達。
真井麗音(さないれお):つかさの恋人。亡くなっている。(本編には登場しません)
(以下をコピーしてお使い下さい)
『Dear My』作者:なる
https://nalnovelscript.amebaownd.com/posts/17670167
榎本つかさ(女):
榎本陽(男):
佐倉舞(女):
【つかさの病室】
<舞が走ってつかさの病室に>
001 舞:つかさ!
002 陽:あぁ、舞ちゃん。こんばんは。
003 舞:あ、お父さんこんばんは。
004 陽:ごめんね、つかさまだ寝てて。手術は無事終わったよ。
005 舞:そうですか。……よかった。
006 陽:こんな時間に連絡して悪かったね。
007 舞:いえいえ。家でずっとそわそわしてたので連絡頂けて良かったです。……あの、真井くんは?
008 陽:あぁ、彼は……。
009 陽M:真井麗音くん。つかさの恋人で歌が上手い少年。人懐っこくて、徐々にファンを増やしていた人気者だ。
010 陽:……連絡が取れないんだ。
011 舞:え?
012 陽:連絡は入れているんだけどね……どうしたんだろうか。
013 舞:私の方も連絡入れてみますね。
014 陽:あぁ。頼むよ。
015 舞:あ……ヤバい、終電……。
016 陽:そろそろ私も帰るし、家まで送るよ。
017 舞:いや悪いですし……。
018 陽:もうこんな時間だし女の子が一人で出歩くには危ないから。ついでだし、気にしないで。
019 舞:……じゃあお言葉に甘えて。
020 つかさM:突然ドナーが見つかったという医師からの連絡の後、手術まであっという間に時が過ぎた。一般病棟に移動した後、電話が鳴った。……麗音が事故に巻き込まれて亡くなったらしい。
【喫茶店】
021 舞:つかさ、大丈夫?
022 つかさ:ん?何が?
023 舞:あ、いや……。
024 つかさ:ふふ。……大丈夫だよ。
025 舞:ほんと?ぼうっとしてるから大丈夫かなと思ってさ。大丈夫ならいいんだ。
026 つかさ:うん。……ねぇ喉渇かない?
027 舞:そうだね!なんか飲もうか。
028 つかさ:ここのカフェは?
029 舞:いいよ。
<店員さんに向かって>
030 つかさ:2人です。はい。
031 舞:いい雰囲気のお店だね。
032 つかさ:そうだね。舞何頼む?
033 舞:私は……うーん、この季節限定のセットにしようかな。
034 つかさ:いいね。
035 舞:飲み物はー。
036 つかさ:アイスティーのレモン。
037 舞:流石!正解。
038 つかさ:舞の事は私が一番よく知ってるからね。
039 舞:私だってつかさの事なら何でも知ってる。
040 つかさ:ふふ、流石親友。いや、戦友。
041 舞:そこは間を取って相棒でどう?
042 つかさ:……採用。
043 舞:あはは!ほらほら、つかさは何にするの?これ?
044 つかさ:いや、このケーキとアイスコーヒーかな。
045 舞:え、珍しい。
046 つかさ:何が?
047 舞:つかさ、いつもコーヒー頼まないじゃん。
048 つかさ:そうだっけ?
049 舞:うん。少なくとも私と遊んでる時にコーヒー頼んだ事ない。
050 つかさ:まぁ今日はそういう気分って事で。
051 舞:そっか。いやぁケーキ楽しみだなぁ!
【自宅】
052 つかさ:お父さん今日は何呑んでるの?
053 陽:あぁ、これか?梅酒だよ。
054 つかさ:いいなぁ、私もお酒呑みたい。
055 陽:久しぶりに一緒に呑むか。……あ、でもお前が呑めそうなカクテル系のは無いかもしれないな。
056 つかさ:私も梅酒呑みたい。
057 陽:珍しいな。父さんと同じ飲み方でいいか?
058 つかさ:うん。大人になったからね!
059 陽:そうだな。……はい。濃かったら言ってくれ。
060 つかさ:ありがと。
<つかさが梅酒を一口飲む>
061 つかさ:んっ……おいし。
062 陽:そうか。
063 つかさ:これも食べていい?
064 陽:父さんに合わせて辛くしてあるからつかさには辛いと思うぞ?
065 つかさ:ん?……(食べる)……美味しい!
066 陽:それならいいが……。
067 つかさ:お父さん、いつの間にこんな美味しいもの作れるようになったの?
068 陽:買ってばかりだと食費もかさむからな。案外作ってみたら簡単だし作り始めたら楽しくてな。
069 つかさ:……ハマったんだね?
070 陽:ま、まぁそういう事だな。
071 つかさ:お父さんが作ってくれれば私も買わずに済むし、また色々作ってね。
072 陽:あぁ。
073 つかさ:それに、こんなに料理が出来るようになったってお母さんが聞いたら喜ぶと思うよ。
074 陽:だといいけどな。まぁまだ母さんには遠く及ばないが。
075 つかさ:そりゃあお母さん料理上手だもん、追いつくなんて無理無理。
076 陽:それもそうだな。
077 つかさ:ほら、もう一回乾杯しよ!
【麗音の命日】
078 舞:あの……こんにちは。
079 陽:あぁ、舞ちゃん。こんにちは。
080 舞:あれ、つかさは?
081 陽:ちょっと一人にしてくれって。麗音くんと話してるんじゃないかな。
082 舞:そうですか。……あれからもう一年になるんですね。
083 陽:そうだね。……大事なものを手に入れて失って……あっという間にもう一年か。時が流れるのは早いな。
084 舞:今でも、麗音くん、いつもみたいにふらっと戻って来るんじゃないかって。なんとなくそんな気がしてしまうんですよね。
085 陽:そうだな。戻ってきてくれたらいいのにな。
086 舞:はい。……(独り言)そうしたらつかさもまた……。
087 陽:ん?何か言ったかい?
088 舞:あぁ、いえ。……私も麗音くんに挨拶して来ますね。
089 陽:あぁ。行ってらっしゃい。
090 舞:あ、そうだ。これ良ければ。
091 陽:これは?
092 舞:アマレットリキュールです。つかさと真井くんと3人で家で飲んだ時2人が勧めてくれたんです。せっかくだからつかさにも、と思って。
093 陽:そうだったのか。……いつもつかさを気遣ってくれてありがとう。
094 舞:いえ。……作り方はつかさが知っているので!じゃあ。
<舞が去る>
095 陽:ありがとうね。……(深いため息)
096 舞M:様々な事から1年が過ぎ、皆(みな)、何処か欠けた平穏な日常を送っていた、はずだった。
097 つかさ:ねぇ舞……?
098 舞M:つかさが不安げな表情を浮かべながら私に聞いてくるのはこれで二度目。一度目はつかさのお母さんが亡くなる直前だった。
099 つかさ:舞は、さ。ヤマノくんって知ってる?……昔レオンのバンドメンバーだった……。
100 舞:知らないけど……その人がどうかしたの?
101 つかさ:なんで私知ってるんだろ……?
102 舞:真井くんに聞いたとかじゃないの?
103 つかさ:いや、私ヤマノくんとご飯行った記憶があるんだよね。
104 舞:じゃあつかさの勘違いとかじゃない?
105 つかさ:いや、この前のお墓参りでヤマノくんに「初めまして」って言われたんだよね。……どういう事なんだろう。
106 舞:つかさ、他になんかおかしいなと思うところない?
107 つかさ:え?……そ、そんなの……。
108 舞:私あるの。
109 つかさ:……へ?
110 舞:最近、つかさの好みが変わってきてると思うんだよね。
111 つかさ:どういう事?
112 舞:私の知ってる今までのつかさは、コーヒーはあとでお腹が痛くなるからって飲まなかったし、お酒は甘いお酒しか呑めなかった。あと最近つかさがオススメしてくれた曲、前とは全然違う系統のものだよ?
113 つかさ:え……そんな事……。
114 舞:あとね。……好みが真井くんにそっくりなの。……違う?
115 つかさ:何で……なんだろ。……何でかな?
116 舞:これ……言っていいのかな。(小声)
117 つかさ:なに?
118 舞:あ、いや……。
119 つかさ:ここまできたら言ってよ。
120 舞:つかさのドナーさ……真井くんじゃない、かな。
121 つかさ:え、なんでそうなるの?
122 舞:こんなに大きく趣味嗜好が変わるっておかしいと思って色々調べたんだ。その中にひとつの可能性として移植が出てきたの。
123 つかさ:……移植。
124 舞:そう。記憶転移っていうらしいんだけど、ドナーの記憶の一部が移植された臓器に残っていて、それがレシピエント……今回はつかさの事ね。そのレシピエントに移る事があるんだって。実際にそういう人もいるみたいなの。
125 つかさ:それなら説明はつくけど……麗音が私のドナーって、なんで分かるの?
126 舞:真井くんが事故にあった時期と、つかさが移植手術を受けた時期、それとつかさの今の現状を考えるとそれしか考えられないんだよ。
127 つかさ:……。
128 舞:でもドナーの情報は開示されないはずだから確かめようが無いんだけど……。
129 つかさ:……それだったらいいのにね。
130 舞:……え?
131 つかさ:だって、もしそうだったら麗音と私はずっと一緒って事……でしょ?
132 舞:ま、まぁそう、だね。
133 つかさ:私おかしいかな?
134 舞:……ううん。そんな事ない。私は同じ立場になった事がないから、全てを分かってはあげられないけど……でももし私がつかさの立場に立ったら。たぶん同じ事を思うと思う。
135 つかさ:ふふ……舞、ありがとう。舞のそういう所が好きだよ。
136 舞:……っ!ふ、不覚にも相棒にドキッとしてしまった。
137 つかさ:しとけしとけ〜あはは!
138 舞:あはは……その言い方、真井くんそっくり。
139 つかさ:だね。……きっと麗音が私の事助けてくれたんだ。……感謝しなきゃ。
140 舞M:私はこんなにも悲しげに笑うつかさを初めて見た。
141 陽:つ、つかさ。本当に行くのか?
142 つかさ:うん。舞と一緒に何ヶ月もかけて予定立てたんだもん。行く以外の選択肢は無いよ。
143 陽:記憶に出てきた場所に行ったり、人に会うって……危ない事があるかもしれないんだぞ?
144 つかさ:……お父さん。
145 陽:な、なんだ改まって。
146 つかさ:私もう子供じゃないよ?お父さんからしてみればいつまで経っても子供だと思うけど……でも、何も出来ない子供じゃない。
147 陽:いや、それは分かってるけども、
148 つかさ:今回のこの……麗音の思い出を辿る旅は、私が舞にお願いして行くの。お父さんに反対されても私は行くよ。
149 陽:……そう、か。
150 つかさ:本当に麗音が私のドナーかは分からないけど、なんか確信があるんだ。たぶん私の事を助けてくれたのは麗音なんだって。
151 陽:つかさがそう言うなら、そうなんだろうな。
152 つかさ:ごめんね、ワガママな娘で。
153 陽:母さんにそっくりだ。
154 つかさ:そうなの?お母さんとあんまり似てると思ったこと無いけど。
155 陽:芯が真っ直ぐなところがそっくりだよ。
156 つかさ:……そっか。嬉しい。
157 陽:ほらほら、そろそろ出る時間じゃないのか?
158 つかさ:あ、やば!荷物取ってくる!
<つかさが自分の部屋へ>
159 陽:ふふ……慌ただしいところもあいつそっくりだな……(別室にいるつかさに向かって)駅まで送るから準備が終わったら車に来なさい。父さん先乗ってるからな。
160 舞M:それから。約1ヶ月をかけてつかさと様々な場所に行き、沢山の人と出会った。つかさは元々社交的だったけど、真井くんの影響か今まで以上に社交的になっていた。初めましての人ともあっという間に仲良くなり、さよならをする頃には長い付き合いかのように接していた。
161 つかさM:麗音の記憶に残っている人達はみんな暖かくて優しくて、類は友を呼ぶってこういう事だね、なんて舞と笑って話した。麗音と昔バンドを組んでいた人達から過去に作ったCDを貰い、それを聞きながら泣いた。……麗音が歩んだ道に触れられた事が嬉しかったんだ。
162 つかさ:(麗音との思い出の曲を口ずさむ)
163 陽:それなんの曲だ?
164 つかさ:え?
165 陽:今口ずさんでた歌。
166 つかさ:あぁ……麗音との思い出の曲かな。
167 陽:そうか。……ほら、着いたぞ。行っておいで。
168 つかさ:うん。
(間)
169 つかさM:もう何度目になるか分からないお墓参り。麗音が居なくなってから1ヶ月くらいは週5で通ってたっけ。
170 つかさ:……私ね、この1ヶ月色んな事があったの。麗音が今まで出会ってきた人達に私も会ってきた。みんな暖かい人達ばかりだった。麗音がいなくなったこと悲しんでたよ。
171 つかさ:あとね、麗音の思い出の場所にも行ってきた。私たちが出会ったあのライブハウス、最近は人が入らないんだって。私が通ってた時はお客さん、沢山居たのにね……あんなに賑わってたのは麗音のおかげだってオーナーさん話してたよ。
172 つかさ:……あと、麗音のお母さんにも、会った。会う前凄い怖くてさ、舞に沢山励ましてもらっちゃった。……本当はね、怒られる覚悟で行ったの。うちの息子を返せって言われるだろうなって。……それで……麗音のお母さんなんて言ったと思う?……『つかさちゃんが無事で何より。ずっと会いたかったの。』って。麗音の健康保険証渡されてさ。何事かと思ったけど……裏の。丸つけてくれてたんだね。麗音のお陰で私まだ生きてるんだよ。
(間)
173 つかさ:あんなに死にたくないと思ってたのに。あんなに怖いって思ってたのに。……私今最低なこと考えてる。
174 つかさM:突然、風が吹く。『何泣いてんだ』と言う麗音の声が聞こえたような気がした。
175 つかさ:(笑う)……タイミングよすぎでしょ……バカレオン!……また会った時に、いつもみたいに言い返してきなさい!……またね。
(間)
176 つかさM:君がいなくなった世界に……ありがとう。
(終)