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Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

多香鳥幸謌、附眞夜羽王轉生——小説50

2021.05.17 23:00


以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



もっとも、そうしたものかもしれない。人が本当に倫理を踏み越える時、そこには悪意など何もなくて、驚くほどかろやろかな跳躍を見せるのかもしれない…

——みんなで。

——でも、おまえ…

——俺?当時中三。

——じゃなくて、死んだって。あれ、いつ?

——さきばしんなよおっさん。…莫迦?

から、さ。…やるじゃん。そのまますておくじゃん。それだけじゃつまんなくない?

泣き寝入りじゃね?

それ、かわいそくね?

やじゃん。

かわいそなん、やっぱさ…やじゃん?かわいそいから。

から、さ。

むしろ服?引きちぎって。ボロンぼろ。持ち逃げして。

で、途中捨てた。したら、そいつ、明け方?…早朝。朝早く。でも、やったの三時くらいよ?

日曜の午後。なんかすっげータイムラグあって。そのまますっぱだかでさ、路あるいてさ。

駅前とおってさ。…あれ、よく人に聲掛けられなかったね。

——たぶん…

——なに?

——頭の中、ショートしたんだよ。見た人も。

何事って?おどろく以前。あれ?って。

ようやく頭の中で驚きだけでも芽生えたときには、すでにお互いに歩き過ぎてる…

——すげ。あたまよくね?つかさ、興味ないんだけどね。おれ。実は。ごめん。お前無意味。

で、ぼこんぼこんの顏のまま…殴ったの。姉ちゃん。わざと。顔面。折れたね、鼻。たぶん。だって、そっちのうがこれ見よがしじゃん…てか、あいつ、氷川、…弟ね?奴も止めるか通報すべきよね?そのまま放たらかしだぜ。知らん顔

——お前が怖かったからだろ?

——関係なくね?肉親じゃん?心いたくないの?

——お前は?

——もっと関係なくね?で、あいつ警察署行った。

——じゃ、お前、

——で、やつ、いったらしい。泣きもしないで。…ま、涙も枯れちゃうよね。この情報、親情報ね。マジかよ?で、行った、すみません、病院つれてってください…て。やば。泣ける。

——じゃ、お前、捉まったろ?

——全然。以外にノープロブレム。そのあとやられたけどな。いや、まじ糞だあの女。なんか警察には謂ったのよ。あの屎。転びました。その一点張り。なわけねぇだろ滓。どうやって糞どこでころんでそんなざまになるのこのちん滓の糞って、女にはねぇよな。それ。笑う。まじ。

——無罪放免?

——野放しOk、女入院二週間みたいな。

で、十六になって、高校行かんくてさ。ぷらついて。したら、…てかそれもう半年後な。やってから。こっち、わすれてんじゃん。ところをさ、日野の橋んとこ、通りすがり後ろから来てさ。なに?お前、だれ?みたいな?そういう余地なくおれ突き落とされて…と。いうかね、あいつに抱きつかれて一緒にドボン。恨んでた?やつ。しかも一緒に死んでんの、おれ。糞。まじ糞わらう。

——死んだ?

——そ。ど頭つぶれて。

——いい気味じゃん。

——うるせ糞。でもま、オッケーそれわからんじゃない。やっぱ、そだよね。

——でも、地獄に墜ちなかった?どうせそれだけじゃないんだろ?犯罪。

——残念。てか、地獄って…でも一瞬だぜ、死んだの…

——黄泉の世界?

——て、いうもん?光がめっちゃくちゃあった。一瞬。

——雲の上?

——知るか。どっか。てか、ここ自体?わかんね。一瞬、光いっぱい。でもさ、そいつらも俺と一緒。すぐ落ちるの。

——下に?

——知らね。是、ものの譬えよ。莫迦?こっちにしゅんって。腹んなか。で、終わり。普通、それで記憶ぶっ飛んじゃん?でも、量こなすとときたまバグるんよ。俺みたく。で、バグった。で、このありさま。てか、知ってる?

——何?

——実は、いるの。

——何が?

——神さま。

——神?

——まじ。見なかったけど。死んだ一瞬、思い出した。神さまいるのよ。

——よく処罰されなかったな、お前。

——できねぇよ。そいつ俺以上にただの糞だもん。

——糞?

——滓。頭狂ってんの。てか、そもそも、此の世界…ぜんぶの、この世界な、そもそも量こなした大量生産の中の阿保なバグだからね。

——バグ?

——から、神もきちがい、お前も気ちがい、から、生き物なんて存在してんの。地球だけね…て、ここ、マザー・ジ・アース地球號よな?金星かどっか?おれ、間違った?

——お前の頭の中がまちがってんだろ?

——その返しいい。莫迦なりにいいじゃんてか、ほかにも三つくらいいるのよ。

——宇宙人?

——ノーノーノーやっぱ莫迦は馬鹿。命?みたいな、なんか、違うの。動くよ。

——なにそれ。

——でも関係ねぇよ。俺らにゃ。ともかくさ、神さまが…あれ、頭のおかしな胎児なの。

——胎児?

——所詮バグだから。軽く奇形っちゃった状態?胎児未満。こう…ちっこいのが胎児になって、でっかくなってこんちわするじゃん。あれの、マイナス成長すんの。

から、胎児未満。

めっちゃ糞じじいの…何億歳?むしろ兆行ってた?…の、マイナス胎児。

——なんだそれ。

——知らね?

——何を?

——ラブクラフト。

——作家?

——ゲームの元ネタ。あれのラスボスでいんじゃん。笛吹いてる気ちがいのあかちゃん。あれがラスボス・ゴッドみたいな。あれ。若干違うけどな。いや、すっげぇ違けどな。ま、じゃっかん正しかったね、そいつ。やっぱ、奴、名前すげぇじゃん。

——だれ?

——ラブにクラフトじゃん?しかもHにPだろ?エッチなど変態のピー音かつラブのクラフト状態じゃん?どんだけクラッシャーなん?頭ん中どクラッシャー状態?笑う。

——で、…

——ぴーひゃらゴッド?むしろひゃらぴーゴッド?お前逢いたい人?てか暇なん?

——なにしに来たの?

——俺?

——なにしに、

——ひで。おめぇがモデルにさしたんじゃね?

——違う。此の世界に、もう一度。

——知らねぇよ莫迦。話し読めないねマジ。生きてる?死んでた?

私は聲を立てて笑ったのでした。

あとは、…耳を掩うばかりの蘭の…艫也、…彼の?愚にもつかない戯れ言の洪水にすぎません。

意外に思われるかもしれませんが、私の筆はむしろの戯言の中進み始めたんでした。抑々なぜ興味も無かった彼、…彼女をモティーフにしたのか、今更に私には思い知ったのでした。或は、かれこそが私に、そして私の絵には相応しかったのでした。

そう、わたしは確信して居ました。

私の繪は本来膨大な時間を必要とします。例えば靑の面が必要な時、まず私は薄く塗った白の線分に黃色を重ねる。そしてその上にいとど靑を。そして上にもう一度白、更に黄色、更に赤、其の上に靑を二度三度、白を塗り重ねながら塗る。此処で謂う靑、黃、赤はカテゴリー名称で、それぞれに膨大な実態を持っていることはご存じでしょう?そうやってそれぞれに違う靑を並べていく、そうして目が靑、と。そうとらえる多様なグラデーションの面を広げる…故に向こうが透けそうな薄塗に見える画面は、その實夥しい皮膜を重ねて成立することになります。

気候に助けられました。灼熱の日差しに、瞬く間に乾く色彩がわたしに速度を与えました。

毎日タオは迎えに來、そして出来上がって行く絵画を見、見る前に既にほめたたえ、そして彼女は蘭を連れて帰る。其の時には蘭は失語障害を患う無口な蘭を綺麗に裝のでした。まるでわたしの見た妄想だったかのように。

ある時の会話。

——ね、知ってる?

いつものようにベッドに寝そべって彼女は云った。

——人間がさ、一番やっちまった的な顏するの、何時だと思う?

——いつ?

背後を振り返らずにわたしは云った。

絵を描く手が忙しかったからだ。

——知りたい?

——すっげぇ、興味あるね。

——うそ。わかるぜそういうの。やば。傷ついた俺。

——いつだよ。放せよ。

——知りたいんだ?

——話したいんだろ?

——正解。何故なら暇だから。小指折った時。

——小指?

——リンチ。みたいな?ボコる時、そのあとでさ。その前でも。手、蹈むじゃん。で、ケツに、やつの頭敷くじゃん。で、小指反対にさ、ぽきんって。折ってやんの。ケツの下で、なんか遠いメする。いてぇ…とかすっげぇみじめっちくほざいたり?しちゃったりしながら?やべぇ…やっちまった俺、まじ、まべぇ的な。笑うよ。それ見ると。まじ。

——お前友達いなかったろ?

——なんで?

——いるわけないじゃん。御前みたいな滓。

——いたね。

——まじ?

——結構大量。

——下僕じゃなくて?

——そうともいう、けど、やつら結構俺に親身だったね。実際。

——そうなの?

——まじ。俺、まじ心赦した。

——勘違いだろ?

——なにそれ。

——お前の勘違いよ。

——ちがうから馬鹿?おっさんまじ勘弁して。そういう知ったかぶりマジむかつくけど別にどうでもよくもある。

——へらず口がどしゃ降るね。へらず口集中豪雨みたいな?

——なにそれ糞じじい。俺が死にかけた時

——死に懸け?

——そ。

——刺されたとか?

——反対。自分で刺そうとしたの。

——自分で?

——そ。

——いつ?

——秀マロ…って、これ本名じゃないよ。時代違うから莫迦。さすがにそれ現代じゃない。マロをさ、喰らわしてさ。実際刺してやんなきゃわかんねえだろって思ったの。やつ、いきなりナイフだしてくるからさ。

——お前にやられて?

——いつも持ってたのは知ってた。むかつくからやってやんじゃん。やつキレるじゃん。したらいきなり。お前刺すからっていうからさ。だったら刺せ蛸って。そったら奴へたれてさ。手ふるわせてんじゃん。から、取るじゃん。奴の手からさ。なもんでさ、奴さしてやろ的な純な少年の破壊衝動?

わかる?

なんか、瞬間飽きた。もう。マロいたぶんの。もっとなんかあんじゃない?からさ、云った。俺。てか俺死ぬって。

皆さ、なにそれ状態?

から、さ。おれ首切ろうとしたの。ふんって。自分の。

したらまーダチとびかかっておれ押さえつけてさ。やべぇよそれ違うから違うからって。まじ、止めんのな。結構ウルった俺。

——死ねばよかったのに。

——俺?

——そっちのほうが世の爲じゃない?

——それ正解。おれもそう思う。でもさ、やっぱ必要だぜ?

——お前みたいな糞?

——そ、純粋マッドネス。

——迷惑だから。死んで。

——いや、

——勘違いすんな。

——必要よ。勘違いお前だからね?誰もが求める夢の純粋ナイーブなこの俺インセンシティブなナチュラルボーンマッドネス的な?

——お前英語いろいろ間違ってるよ。

——関係なくねよ?いいたいことわかんじゃね?

又の日に。

——お前、親居なかったの?

——いきなりなに?

——親、居なかった?

——話折るね?折りまくるじゃんどうした?脳みそ腐った?

——俺が親ならお前見た瞬間自殺する

——脳みそ、虫飼ってる?

——お前の親にだけはなりたくないわ。

——泣いてたね。てか、殺されかけた。

——親に?

——お前日本語判ってる?それともひょっくらチャイニーズ?

——どっちだよ?母親?父親?

——こくな糞。お母さま。

——まじだ。

——夜さ。気配で。家で寝てやってたらさ。気配で。だれや?いきなり俺にケツ掘る氣?みたいな?

でさ、起きたらお母、包丁持って立ってんの。

——部屋に。

——ドアんとこ。

——お前の?

——むかつく。速攻、やつぼこった。ぼこりまくりにぼうっとしてひいひい息、ぜえぜえ云って立ってんの。くそでしょ。から、ハン殺し。でも結構後悔したな。

——生まれて来たことに?

——その母親がね。残念な人生じゃね?まじ。自分で生んだ餓鬼に病院送り。なんちう失敗人生なのやつ?笑う。

——お前が病院は入れよ。

又の日に。

——お前、ホモ?

と、蘭は云った。

——俺?

——お前以外にお前いんの?

——そうだよ。

——見たよ。

——見たの?

——きもい。

——いつ?

——ダラット。

——あれ、な。

——あれは、吐く。なに?あの黒いの。

——俺の男だよ。

——でもがっかりした。

——なんで?

——やってること、姉ちゃん兄ちゃんと一緒じゃん。くそつまんね。ただのマネ事じゃない?なにがしたいの?

——お前も掘ってほしい?

——勘弁して。もっとこう、…オリジナリティなもん、ほしくない?

——寝たふりして盗み見たくせに?

——氣、使ったんじゃん?てか、お前ら滓な。

——ホモだから?

——そういう糞差別主義的発言やめて。ネットざわつくよ莫迦?笑う。俺がいた譯じゃん。俺、十四じゃん?餓鬼じゃん?女子じゃん?しかも若干可哀想な子なんじゃないの?俺。しかも他人から預かってんじゃん?お前ら人してやっていいことと悪いことの区別ない人?

——お前にいわれたくない。

——それ、謂えてる。

云って、邪気も無く笑う蘭を私は返り見た。

次第に私の目の前に、私の絵は姿を現し始めるのでした。判りにくい言い方なのですが、作家は実は、自分の描くのがいかなるものか、実は描きながらほの見、ほの見していくもの…しかも、思ってもいなかった姿に驚きながら、を、繰り返してゆくのです。

わたしは自分の作品に驚嘆しつつあった。

たしかにこの絵にもあの光は、その匂いだに残っていない。けれども、違う意味で、あくまでも見たものの勘違いとして様々なイメージをもたらすには違いなかった…私の心に見てるあるべきイメージとはまた別の、まったく他人の異質なイメージが目の前に現れつつあった…

時にわたしは(あくまで他人ごととして)絵に見蕩れさえしたのでした。「おっさん、生きてる?手、とまってるよ」そんな蘭の嘲りの聲を背後に時に聞きながらも。

ほぼ完成した比…いままでにも速筆で、それは八月の暮れ近くだったと思う。何かの話の折に蘭は不意に云ったのだった。

——おっさん、俺を連れて帰らきゃな。

——連れて?

——いや、まじ。

——どこに?

蘭は応えなかった。

ですから、振り返り見た蘭はうつむいていました。

ベッドの端に座って。

近づいて、蘭の頭を撫でたのです。

顔を上げました。

蘭が。

そこに、黑目が雙つあった。

彼は微笑み、そしてこう云っのでした。

「日本へ行く。」

ささやくように、——歸るぜ、と。蘭は、

「海の中に…」

と。…あるじゃん?

「あんだよ、それ…」

——じゃね?

と、蘭は、…燃える城。…もえ上がる真っ赤な柱。

「あれ…」ささやく。蘭が、「あれ、…さ」

燃える、海の中の城。

——日本に歸るぜ、あんたと。おれら…と。

「帰るぜ」

ささやく蘭の聲をだけ、私は聞いていました。…むしろ、はじめて蘭の肉声を聞いたかにも錯覚して茫然とした一瞬に、すでに耳は蘭の立てた嘲りに似た笑い声を聞いているを遠くに、理解したのでした。

わかりますか?

私は今、あなたに今回の帰國のそもそものいきさつの本等を、あなたには告白したのです…

                     香香美淸雅、あるいは一狂人