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麻雀ぐぅ~ぐ

5月18日(火)くもり

2021.05.18 05:17

こんにちは。麻雀ぐーぐです。


パッとしない天気が続いていますね。なんか誰かが梅雨入りしたんじゃないか説を唱えてましたけど本当ですか?梅雨ってこんな早かったでしたっけ?


梅雨は牌がベトつくから嫌なんですよねー。でもしっかり洗牌してお待ちしてますので麻雀打ちますか。


さて、今日は今月100半荘打って平着2.65、絶賛絶不調継続中の男がブログ担当です。不徳だけは致さない様にしとうございます。


というわけで、今日は何やら暇な予感のする火曜日です。何を書きましょう。


遂にファイブタイムスチャンピオンを達成してしまった話、そんな日でも無理矢理上がった大三元の話、昨日のMリーグの話など、色々書きたい事があるんですが、そろそろ昔話の続きを書かんかいというリクエストを頂きましたので、そっちを書いていきたいと思います。


あ、でも前回の続きである社会人編の前に雀荘デビュー戦の話にしましょう。私が高校を卒業して社会人になった直後のお話です。


出来過ぎていて作り話っぽい出来事なんですが、紛れもないノンフィクションでお送りします。例によって長くなる予定なので、暇で暇でどうしようもないときにでもどうぞ。くだらない読み物として楽しんで頂ければ幸いです。





「ヒッヒッヒッ。あんちゃん、またよろしくな。ヒヒヒッ。」


あのオヤジの下卑た笑い方、粘りつくような声、下品な表情、人を馬鹿にした態度・・・、

僕は一生忘れることはない。


20年近く経った今でもその場面は鮮明に思い出せる。これは僕が生涯でいちばんの屈辱を味わったときの話だ。



――2002年7月。高校を卒業したばかりの僕と友人Aは、地元の寂れた商店街を歩いていた。


「おっ、あったあった。ここでよくない?」

「あちー。おー、もうどこでもいいよ。暑くて死にそうだし、とにかく入ろう。」


その昭和の香り漂う雀荘は2階にあった。名前は思い出せない。

急な階段を上がると、店の前には空になったラーメンのどんぶりと寿司桶が無造作に置いてある。


見るからに重厚な感じのするドアには暴力団お断りのプレート。

急激に心臓の鼓動が早まった。もちろん階段を一気に上がったせいではないことは分かっていた。


横にいるAに悟られるまいと、僕は一切の躊躇を見せることなくドアを押し開けた。


カランカランコロン。


「・・・いらっしゃい。」


店内では1卓が稼働中だった。僕らが入った瞬間に4人の視線が一斉にこちらに注がれる。

が、すぐに興味を失ったのか卓上に視線が戻っていった。


一呼吸の間があった後、店員から声を掛けられる。


「・・・本日はセットでご利用ですか?」

「あ、いや、初めてなんですけど、フリーで打てますか?」


震えそうになる声をどうにかごまかして僕は言った。


「・・・かしこまりました。ではこちらへどうぞ・・・。」


――きっかけは高校時代の友人がフリー雀荘デビューを果たしたという話を聞いたことだった。


高校時代、僕とAはお互い仲間内の麻雀で負けることはほとんどなかった。

負けるのはいつもそれ以外の2人である。


僕の高校には麻雀を打てる人間などあまりおらず、その貴重なメンツ達も僕達が勝ち続ける内にどんどん麻雀から離れていった。


高校を卒業し、友人同士で卓を囲むことも滅多になくなった頃、飲みの席で、数少ないメンツのうちの1人だった友人が先日フリー雀荘に行ったという話をし出した。


専門学校の友達に麻雀好きなやつがいて一緒にいったんだよ。

学生風のやつやサラリーマンみたいな人達と打ってちょっと負けたけどまあまあ楽しめた。


僕とAはそれを聞いて胸が高鳴った。

聞けば聞くほど、早くフリー雀荘に行ってみたいという気持ちは高まっていった。


「あいつでちょっと負けたくらいのレベルなら、俺らなら楽勝でしょ。」

「明日にでも行ってみるか。」


はじめ、友人に聞いた雀荘に行こうと思っていた僕たちだったが、電車の乗り継ぎが必要な場所にあることがわかると、途端に面倒になった。


「どこでも一緒でしょ。あの〇〇の商店街とか雀荘ありそうじゃね?」

「ああ、まあ適当に探してみて、あったら入ってみればいいか。」



ーー渡された紙に適当な名前を書き、僕達はルールの説明を受けた。

なんとなく思っていた通りのルールだったが、レートは思っていたよりも少し高かった。


「・・・では、説明は以上になりますが、何か質問はございますか?」

「いや、大丈夫です。」


「・・・分からないことがあれば打ちながらでも構いませんので何でも聞いて下さい。」

「はい。わかりました。」


「・・・ところで、お客様はお2人ともお若く見えますが、フリーで打つのは初めてですか?」

「ああ、高校を卒業したばかりなんです。でもフリーで打ったことは何回かあります。」


僕は小さな嘘をついた。ナメられるのが嫌だった。Aも当然のようにそれに合わせてくれた。


友人同士でのセット麻雀であったが、雀荘で麻雀を打ったことは数回あった。自動卓の使い方は問題ないはずだ。無駄なことを喋らずに淡々と打てばマナーについてどうこう言われることもないだろう。


「・・・わかりました・・・本日は何回くらい打つご予定ですか?」


「あー、あんまり時間ないんで5、6回くらいだと思います。」


「・・・ありがとうございます・・・ではこちらの卓へどうぞ。」


案内されたのは店のいちばん奥の卓だった。

どこからかもう1人の店員が現れ、対面同士で座りあった。


「・・・では、よろしくお願いします。」


僕とAは席に着くなり、崩してもらった1万円が入った箱を自分の右側のテーブルに置いた。


「・・・申し訳ございませんが、左側のテーブルをご利用下さい。」

「え、あ、、す、すいません。」


動揺しながらサイコロのボタンを押し、配牌を取る。

が、手が震えてうまくいかない。


バレるのが嫌で必死になって震えを抑えようとするが、余計に焦りは募るばかり。

ふと違和感を感じ、前を見ると、Aの手も同じように微かに震えていた。


(なんだ、あいつも緊張しているのか。)


少しだけ気持ちが楽になった。



「――ロン。リーチ、ドラドラ、えっと・・・ロクヨン・・・です。」

「・・・裏ドラをどうぞ。」


「あ、すいません。・・・裏1。えっと、満貫のチップ1枚です。」


「ツモ。跳満、あ、3千、6千です。・・・あ、1本場です。」


「・・・チップは1枚でよろしいですか?」

「あ、はい。すいません。チップ1枚オールお願いします。」



・・・



「ロン。」


「ロン。」


「ツモ。」



・・・その日僕たちはツイていた。2人で延々と上がり続けた。


「・・・ありがとうございました。」


友人に聞いたアドバイス通りに、最後と決めた半荘の前にラス半コールを掛け、その半荘をワンツーフィニッシュで締めた僕たちは、意気揚々と雀荘を後にした。


急な階段を飛ぶようにして駆け降りて、お互いに収支報告をし合った。

記憶が定かではないが、2人共1~2万ずつくらいは勝っていたと思う。


文句なしの快勝だった。


「なんだよ、やっぱ楽勝だったな。」

「おお。また行こうぜ。」


次の週も僕達は2人でその雀荘へ行った。


「・・・いらっしゃい。」


前と同じ店員が前と同じ奥の卓へ案内してくれた。


「・・・今日は何回くらい打っていきますか?」

「あー、たぶんまた5、6回くらいだと思います。」


どこからかまた別の店員がやってきて、僕達2人と店員2人で麻雀を打った。今度は緊張することはなかった。

そして僕達2人はまたもや簡単に勝利を収めた。


「・・・お上手ですねー。こんなに若くて強い方達は初めてです。」

「来週うちで大会があるんですが出てみませんか?」


「いやぁ、そんなことないですよ。」

「もしその日都合が合えば来ますねー。」


僕達は完全に有頂天になっていた。

さすがに大会に参加するようなことはなかったが、この後ハイペースで雀荘に通うようになっていった。


だがその日以降、僕たちが勝って雀荘を後にすることはただの1度もなかった・・・。


あれから2週間程通っただろうか。会社帰り、休日、ほとんど毎日雀荘に顔を出した。

少し前から1人でも雀荘に出入りするようになっていた。


初めに何回打っていくか聞かれることはもうなかった。

いちばん奥の卓で打つことももうなかった。


もちろん他のお客さんとも一緒に打つようになっていた。

だが、勝ったり負けたりはするが、最終的にはマイナス収支で雀荘を後にする。


(どうも最近調子が悪い。)


初めの2回以降負け続けていることからは目を逸らしていた。


(まあ調子が上がればまた前みたいにスカッと勝てるっしょ。)


ちょうどその頃、Aもまた僕と同じ境遇にいた。

そうして、また2週間が経った。


(おかしい。)


ようやく異変に気付いたのは、給料日直後だというのに財布の中身が空になりかけていたときだった。


最初の勝ち分などとっくに全て吐き出し、そしてまた貯金をおろすことになった。


(俺、ちょっと負けすぎじゃないか・・・?)


あのオヤジと打ったのはちょうどそのときだった。店の常連なのだろう。よく見る顔だった。

さすがにもうこれ以上は負けられない。今日こそは絶対に勝つ。


いつも以上に気合いを入れて臨んだ僕だったが、結果は大敗だった・・・。

そしてオヤジから冒頭の台詞を浴びせられる。


オヤジの脂ぎったギトギトの顔を睨みつつも、僕は意気消沈して雀荘を後にした。

そして、急な階段を降りようと1歩踏み出したとき、ふいに僕は理解した。


僕はカモられる側の人間・・・。


生まれて初めての屈辱だった。


そして負けることの悔しさを噛みしめながら全ての階段を降りきったそのとき、衝撃が走った。



「まさか!!!」


そう、そこでようやく僕は全てを理解した。


いつもは使わない奥の卓、相手は店員、何回打つか聞かれたこと、それ以外にも店員の細かい言動や仕草、それら全てがひとつの解を示していた。


「わざと・・・。」


あの店員は初めて僕たちが訪れたとき、そして2回目も、わざと僕達に負けた。

僕達を立派なカモに育てる為に。


考えてみればすぐにわかることだ。

点数計算を覚えたばかり、初心者に毛が生えた程度の雀力の僕達が、勝てる訳などない。


だが、たった2回の勝ちで僕達は勘違いした。雀荘にいるやつらもたいしたことないんだなと。


そして見事に僕達は立派なカモに育った・・・。


「ははっ・・・。」


1人、力なく笑った僕の頬を涙が伝った。気がした。


一方で感謝もしている。あのとき早めに気付かせてくれなかったら、僕はカモられ続ける人生を歩んでいたかもしれない。


あのオヤジ、そしてあの店員に絶対にリベンジする。

強く決心した僕はここから麻雀に対して人一倍真剣に取り組むようになっていった。。





・・・はい、その結果、アラフォーになっても麻雀打って遊んでばっかりの社会不適合者に成り果てたので、結局良かったのか悪かったのかわかんないんですが、まあ人生楽しいのでいいでしょう。


では、本日は昭和の麻雀漫画にありそうなお話をお届けしました。長々と読んで頂きありがとうございました。


本日もご来店お待ちしております。