「効率課長」誕生秘話
経営危機を乗り越え、受注量も社員数も増えたが……新たな悩みに頭を抱える
当社は1997年に創立しました。
この年に発生したアジア通貨危機の影響で翌年の仕事量は低迷し、創業直後の経営危機を経験しました。
しかし1999年には世界の経済状況は落ち着き、インターネットを活用した地道な営業努力もあり、受注量は増えてきました。
創業した年の社員数は5名でしたが、この頃には10名に増えていました。
仕事量が増え、社員数も増やし、一見順調な成長を続けているように見えましたが、内情は大変でした。以下の問題に頭を悩ませるようになりました。
1. 増え続ける仕事の整理・管理が追いつかない!
この頃既に数十件の受注案件が同時進行していたが、それぞれの案件に対し見積書の作成、顧客との調整、受注台帳への登録、外注翻訳者さんとの調整と業務発注手続き、社内翻訳者の割り振り、請求と支払いの手続き、そしてそれら管理データの漏れとダブりのチェックなど、実際の翻訳業務以外の仕事の割合が増えてきた。
2. 複数のプロジェクトのコスト管理に手が回らず、生産性が上がらない
顧客やプロジェクトごとに費やしたコストを正確に把握して検討すれば、営業方針や人材の配置を決めて生産性の向上を図ることができる。しかし、複数のプロジェクトがほぼ同時進行している状況で実行するには、時間や労力などの余分な手間(コスト)が必要以上にかかってしまう。
仕事が増えて、頻発した5つの「困った事態」とは?
具体的には以下のような事態が頻発しました。
1) 仕事の振り分け、調整に毎度時間がかかる
仕事が立て込んだ時、誰がどの仕事を担当するかすぐに判断できない。この調整をするため毎日のように全員が会議室にこもり、2台のホワイトボードに受注した、または受注しようとしている仕事の内容・量と納品までのスケジュールを書きながら細かい調整をしなくてはならなかった。この作業は毎日1時間以上かかってしまうこともあった。
2) 過去の見積書の確認や検討がすぐにできず、客先への返答が遅れる
お客様から過去の仕事の再発注や、その時失注した仕事の見直しと正式発注が発生した時、過去の見積書を参照して検討しなくてはならないが、対象の見積書を見つけるまでに時間がかかってしまい、社内コストがかかる上に、お客様へのレスポンスも遅れてしまった。
3) 人が替わると、業務の引継ぎや情報収集も一からやり直しに
社内の担当者が交代した時も、同一顧客には同一の対応をしなくてはならないし、同一の翻訳者さんに過去の実績に応じた仕事の依頼をしなくてならない。しかし、しっかりした過去の情報整理と社内の情報共有ができていないため、一から情報収集しなくてはならない。
4) 見積、納品・請求、外注先への発注書・支払いなどの事務処理の負担が増える
見積書や納品・請求書、社外翻訳者さんへの発注書や支払い一覧表などはエクセルベースで管理していたため、事務処理作業に時間がかかっていた。集計や社内の情報共有も実質的には手作業なので、管理コストが増えた。
5) 誰が、どの仕事を、どこまで、いくらでしているかが分からない、つかめない
社内スタッフの誰がどの仕事の作業を行っているか、またどの外注翻訳者さんにどんな仕事をどのような金額と納期で仕事を依頼しているかがシステム的に情報共有できていないため、調整に無駄な時間がかかった。
通常、これらの問題を解決するには専任の管理者を置き、きっちりした管理体制を作ろうとするでしょう。しかし、社内業務を管理するだけの専任者にコスト(人件費)を費やすと、会社の利益率は下がってしまいます。
せっかく仕事が増えて売上額が増加しても、それ以上にコストがかかったのでは経営は成り立ちません。
当社の売上に直結するのは、翻訳業務です。売上に貢献しない管理者を増やすより、管理業務をIT化して、翻訳者が翻訳業務に専念できる環境を整える方が、翻訳の質、生産性も向上すると考えました。
当社が管理費の劇的な削減と各プロジェクトの正確なコスト把握ができたわけ
管理費用の劇的な削減と各プロジェクトの正確なコスト把握が大きな経営課題になりました。
そこで考案したのがITとWEB技術を使った初代の受注業務管理システム「効率課長」です。2000年に完成しました。
「効率課長」では中心にデータベースソフトを置き、それに様々な自作のプログラムをくっつけ、全社員の一人一人が必要な情報を入力・閲覧して業務の処理に必要な手間を簡素化し、かつ全社員が情報共有できるようにしました。
同時に各プロジェクトに費やした外注費と社内翻訳者の作業時間を入力し、細かいコスト管理ができるようになっています。毎月の売り上げ集計、外注支払い一覧表なども自動で作成されます。
「効率課長」により起きた3つの変化
●1つ1つの業務内容すべてが「見える化」され、社内のだれもが進捗を把握・確認できるようになった。
●各自が担当する案件の納品時や外注時の事務処理が簡素化&スピードアップ。事務処理に煩わされず、社員は翻訳業務に集中できるようになった。
●管理者に頼らなくでも、社員か各自で担当業務の進行管理が可能となった
「効率課長」のお陰で全社員は労働時間の多くを実際に受注した翻訳・編集作業に費やすことができるようになり、会社の生産性は向上しました。
あるお客様からは「トランスワードさんは担当者さんが変わっても過去と同じ良いサービスをスムーズに引きついでもらえるのでありがたい。」とお褒めの言葉をいただいたこともありました。これもひとえに「効率課長」のお陰です。
当社は社内スタッフの労働時間を実際に受注した仕事の作業を行っている「受注業務時間」と、社内・社外との調整や事務処理時間などの「社内業務時間」に区別してコスト管理指標の一つとして使っています。
全体の労働時間に占める「受注業務時間」の割合が高いほど社内が効率的に回っているといえます。
当社の場合、効率課長の導入前はこの受注業務時間(全社員の合計)の全体の労働時間に占める割合は年間平均50%程度でした。それが導入後には80%まで上がりました。作業時間ベースで1.6倍の効率化ができたことになります。
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