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これまでの研究概要

2021.05.19 03:04

これまでの研究概要というものを書いていたこともありました。ので、ちょっと前になりますけれど。今は学会など離れているから、またちょっと視角は異なりますかなあ。

(1)環境社会システム・結合様式…フィールド調査に基づく文理学際的研究

人間と環境とのより緻密な関係(結合様式)を抜き出して計画に適応するという環境社会システムの方法論に言及してきた。巡礼や祭り、民話や儀礼といった事象をシステム化することで、工学的計画論との接点を提起した。モヘンジョダロやマチュピチュといった世界遺産が持っていた「結合様式」を都市の作法として再構築する調査研究を行った。とくに、写し巡礼はコモンズ論から解釈することで、日本空間史として位置づけると共に、「共演」という結合方法について提起した。巡礼研究会やコモンズ研究会において、地理学や宗教学、民俗学や社会学などの専門家と一緒に議論することで、文理を越えた知見を得ることができた。世界遺産の国際調査チームにおいても、考古学者との共同研究を通じて、学際的な知見のすりあわせについて経験してきた。


(2)地域環境政策・環境まちづくりにおける市民参画に関する実践的研究

滋賀県赴任後は、環境審議会や環境基本計画、都市計画、公共交通活性化協議会などの多くの地域環境政策にかかわる機会が激増した。NPO五環生活を設立運営するといった実践的な場の中で、市民と行政との間をつなぐコーディネーターやシンクタンク的な役割を果たしてきた。とくに自転車政策については、滋賀のリーダーとして県市含めてさまざまな計画策定や施策を牽引し、滋賀プラスサイクル推進協議会を設立するまでに至った。各地のまちづくりプロセスにかかわり、地域という現場と計画という政策をつなぐ経験より、計画言語の理解と共有の限界についても論じ、身体を基点とした「身・知・心のまちづくり」を具体的に提起してきた。


(3)エコビレッジにおけるガバナンスに関する研究―南インド環境実験都市を事例として―

NPOの運営やまちづくりの実践からは、まったく新しい組織のあり方が鍵であるという認識に至っている。エコビレッジやエココミューン等の運営形態に興味関心をもち、とくに南インドで40年間継続しているAurovilleの調査研究を進めてきた。Auroville調査に何回も通う中で、「非組織化」というシステムがいかに形成されたかというプロセスの解明に取り組んでいる。過去40年間の資料分析を継続しており、自律分散的にプロジェクトが生起する中で全体の調和があるという仕組み・形態と、それを支える個人の学習・動機についての関係を調査解析中。世界的には著名なエコビレッジを日本で初めて紹介する研究になるものである。


(4)交通まちづくりにおける合意形成に関する研究―自転車とバスに注目して―

ライフスタイルを革新するツールとして自転車の世界に入った。NPO五環生活の事業として、自転車タクシーやレンタサイクル、自転車ツアーを企画運営すると共に、輪の国びわ湖推進協議会という「ビワイチ」(びわ湖一周サイクリング)を推進する広域ネットワークもつくりあげた。自転車政策を市・県を先導しながらつくりあげ、彦根市自転車プラン、滋賀県自転車プラン、守山市自転車プラン、湖東定住自立圏バイコロジープラン、草津市自転車条例などを構築してきており、昨年度より文科省cocとしてサイクルツーリズムの実践研究も進めている。交通政策や環境政策、観光政策などを横断する自転車政策はまだ初動段階にあり、警察等との関係も模索段階にある。環境政策としての位置づけはこれからが重要である。公共交通活性化政策にも従事してきた。マイカー偏重は都市を無防備に膨張させてしまうため、いかに公共交通を活性化しながらコンパクトシティへ誘導するかが重要だ。そこで、自治会等の地域において交通カルテを用いて移動力を共有検討したり、バスへのイメージ調査やモビリティマネジメントなどの工夫施策の効果について研究してきた。交通弱者を対象とした福祉型自転車タクシーの実験・運営の経験からも、地域で交通を考える時代の到来を想定している。


(5)環境のライフスタイルに関する研究

自転車だけでなく、暮らしの基本である「食」「衣」などからのライフスタイル変革可能性にも注目してきた。穀物菜食や肉食に関して意識的に変更することで、いかにライフスタイルや社会関係が変更されるかについて調査分析してきた。また、環境家計簿についても、あたらしい環境家計簿ツールの開発と検証、継続的記帳者のライフヒストリー分析などを行ってきた。雑誌婦人之友の読者組織「友の会」が100年にわたり取り組んできた家計簿分析もおこなった。「衣」としては、着物着用者による意識変化や化粧品の選択意識、婦人之友に紹介されてきた「お直し」の変遷プロセスについても研究をおこなってきた。


(6)五感・わざ・身体に関する研究

視覚偏重の時代において、身体と環境をつなぐ五感による認識の可能性も追求してきた。熊野古道五感マップは、五感調査の先駆的事例となり、小学校児童を対象とした五感マップ実験や「五感つうしんぼ」開発といった五感をツール化する研究を実施してきた。環境省感覚環境のまちづくりにも参画し、五感によるメディアコミュニケーションについて共同研究を進めながら、「カラダマーケティング」を提起するに至っている。身体的感覚の達人としての職人・わざにも注目し、職人の身体スキルの継承プロセスについても調査研究してきた。身体を基点としてきた知見を、パタンランゲージを援用しながら身体計画論として統合しようとしている。