政府分科会記者会見
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210507/k10013018161000.html 【尾身会長「今回の宣言解除 今まで以上に慎重に行うべき」】より
菅総理大臣の記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は「緊急事態宣言の解除にあたっては、感染の状況がステージ3に入ってさらにステージ2の方向に安定的に下降傾向がみられることが非常に重要だと思う。特に感染者数よりも医療のひっ迫が改善されていることが重要な要素だ。さらに変異株の影響が極めて重要で、今回の宣言解除を判断するときは今まで以上に慎重に行うべきだと思う」と述べました。
下げ止まったから解除すると必ずリバウンドがおこる
そのうえで、今後の感染状況について「感染者数は少ないのが理想だが宣言を続けたとしても、数が下げ止まりとなる可能性がある。ただ、下げ止まったからといってすぐに解除すると必ずリバウンドがおこる。必要な対策を続けながら、下げ止まったとしても2、3週間はぐっと我慢することでリバウンドまでの時間を稼ぐことができる。解除したあとに『まん延防止等重点措置』をしっかり活用することも重要だ」と述べました。
軽い症状がある人に対する検査 積極的に行う必要
尾身茂会長は変異ウイルスが拡大する中で政府に求められる対策について「広島で行われた大規模なPCR検査では、症状がある人の陽性率が9%に達したのに対し、症状がない人の陽性率は1%にとどまった。また、別の自治体では、けん怠感など体の不調があっても、7%から10%は仕事や勉強で出ていることが分かっている。これらのことから言えるのは病院に行くほどでないくらいの軽い症状がある人に対する検査を積極的に行う必要があるということだ。健康観察アプリと合わせて簡便な抗原検査キットを活用し感染が確認されたら、周辺の無症状の人に対して広範にPCR検査を行って大規模なクラスターの発生を防ぐ、積極的検査を進めてほしい」と述べました。
ワクチン接種が進むまでリバウンド防ぐ対策を
また尾身会長は、西村経済再生担当大臣の会見に同席し「今後、高齢者を中心としたワクチン接種が進むまでの間に感染の大きなリバウンドを防ぐことが非常に重要だ」と述べました。
そのうえで、政府に求める対策として、
▽結果がすぐに分かる抗原検査キットを活用した無症状者を含めた積極的な検査の実施、
▽診療所の役割強化や新型コロナウイルスの感染拡大を災害医療と捉え、国が医療体制確保に積極的に関与すること、
▽大きなリバウンドを防ぐため、躊躇なく早期に強い対策を打つこと、
▽高齢者のワクチン接種を迅速に行うこと、
▽変異ウイルスの状況を踏まえた水際対策の強化、
▽適切な感染対策を行っている飲食店の認証制度の強化、
それに
▽若者との対話などコミュニケーションの強化の7つのポイントを挙げました。
尾身会長は緊急事態宣言の延長について「今回の緊急事態宣言は、2回目の宣言より強い対策を大型連休に集中して行うということで人流は下がったが、感染者が減る効果が出るまでには時間がかかる。人の接触は減っているが、変異株の影響もあり、専門家としては短期間では解除が難しいということは織り込み済みだと考えていた。高齢者を中心にワクチンが行き渡るまで、行動変容と感染対策への協力が不可欠だ。もう一歩改善するために国として何を目指し、これから数か月間具体的にどんな対策をするのか、しっかりと示すよう求めたい」と述べました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/42aa937c8d66908d0a218a2d03668518afe59ab8
【尾身氏「全国的増加、間違いない」 対策強化せねば「急速な拡大傾向の可能性高い」―政府分科会】より
政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長(地域医療機能推進機構理事長)が9日、緊急記者会見を開き、「現下の感染状況は一言で言えば、徐々に感染が全国的に見ても増加しているのは間違いない」と述べた。
尾身会長は「社会経済活動が社会の要請ということで戻りつつある中で、適切な感染防止策が講じられなければ感染の増加要因が強まり、その『増加要因』力が人々の感染防止対策、自治体や保健所、医療機関が頑張っているクラスター対策(などの)『減少要因』を上回っている。減少要因を早急に強めなければ、急速な拡大傾向に至る可能性が高い」と訴え、警鐘を鳴らした。
さらに「(これまでは)致死率や重症化率を抑えられてきたが、医療提供体制への負荷を過大にしないためにも可及的速やかに感染を減少方向に向かわせる必要がある」とも訴えた。
分科会が提言する「5つのアクション」
会見で、尾身会長は緊急提言として、「社会経済活動と感染対策を両立できるよう国民、自治体、国に求められる5つのアクションをまとめた」と発言。尾身会長が説明したアクションは以下の通り。
【アクション1】:いままでよりも踏み込んだクラスター対策
クラスターの数が多様化しており、(1)早期に探知しにくいクラスター(2)閉じにくい(感染拡大を止めにくい)クラスター、が増加している。
前者の具体例は、一部の外国人コミュニティや、大学生の課外活動など若年層を中心としたクラスター。外国人コミュニティは、言葉の問題があり、医療へのアクセスが難しい。大学生の課外活動は、若い人は感染しても無症状や軽症の人が多いため探知されにくい。
後者の具体例は、接待を伴う飲食店など、感染者が不特定多数で濃厚接触者の把握が難しいもの。
【アクション2】:対話のある情報発信
「3密」の状況や「大声」が感染リスクを高めることは、ほとんどの人が知っている。最近では(1)感染が高まる5つの場面(2)感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫――などを発信してきたが、こうしたメッセージが人々の実際の行動変容、維持につながるほど十分に伝わっていない。人々の受け止め方を理解したうえで、政府には情報発信してもらいたい。
具体的な場面として、例えば会食の時も、マスクは食べるときだけ外し、会話に戻るたびに随時つけ直すといった工夫も一例として考えられる。
【アクション3】:店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践
業種別ガイドラインの作成が現場でも進んできたが、相変わらず店舗・飲食店などでクラスターが起きている。都会だけでない。休憩所や喫煙所がどこにあり、どういうところで上記の「5つの場面」があるのか、など具体的なセッティングで考えてもらいたい。地元の商店街とも連携すべきであるほか、ガイドラインを変えていくのも当然。
【アクション4】:国際的な人の往来に伴う取り組みの強化
海外との交流が徐々に再開される中で、水際対策と地域での対策を連動していく必要がある。国内に入った後に保健所が行う健康監視で、多言語対応の必要がある。個別の保健所だけでは極めて困難。事務の増大などにつながり、保健所業務に支障をきたす。
国は、検疫所における滞在国・地域別検疫実施人数、検査実施人数、陽性者数などの情報を迅速に整理して公表することが非常に重要。入ってくる外国人をフォローアップする仕組みは自治体単独ではできない。
【アクション5】:感染対策検証のための遺伝子解析の推進
ウイルスの遺伝子配列を調べることは、感染伝播の状況が見えなくなっている地域の感染由来を調べる上で重要。配列を調べることはクラスターの由来を明確にするだけでなく、感染対策を検証するためにも有効。そのために、地方衛生研究所を通じて、国立感染症研究所に確実に検体を送付することなどが必要。