第十六回 小原酒造株式会社 (福島県喜多方市)
「誠実に造る酒は時間が経つとますます美味い」
10代目 社長 小原 公助 氏
創業1717年
蔵の町、喜多方市で300年以上の歴史を誇る酒蔵。
日本で初めて、醪(もろみ)にクラシック音楽を聞かせて発酵させた日本酒「蔵粋(クラシック)」で注目を浴びている。
Interviewee: 社長 小原 公助(以下 小原)
Interviewer: 美宴 吉田 綾子(以下 美宴)
美宴:いつからクラシック音楽を聞かせて造っているのですか?
小原:昭和61年からですね。約30年間モーツァルトを聞かせています。
美宴:なぜ醪(もろみ)に音楽を聞かせようと思ったのですか?
小原:約30年前の国税局醸造試験所で、各チームで研究データを考えなければならず、
いろんな文献を見ながら探していたんです。
その時、ドイツで牛の搾乳時に音楽を聞かせているという研究結果を見つけて。
だったら、日本酒の発酵にも音楽を聞かせて研究してみようと思ったわけです。
美宴:クラシック音楽がお好きなのですか?
小原:いえ、自分は元々ジャズが好きなんです。
実験では、クラシック音楽、ジャズ、演歌の3部門を選び、それぞれの醪に聞かせました。
クラシック音楽は、モーツァルト、ベートーベン、JSバッハの3種類、ジャズはマイルスデイビス、
演歌は北島三郎を聞かせました。
美宴:なぜモーツァルトなのですか?
小原:モーツァルトが一番、酵母の増殖速度が早かったのです。
なぜモーツァルトなのかということはこれからも解明が必要なのですが。
さらに、後の研究で、モーツァルトとローリングストーンズが、
同じく酵母増殖速度が早いというデータ結果が出てきました。
ただローリングストーンズは著作権の問題もあり、
残念ながら使うことができないんですよ。
美宴:音楽を聞かせたものとの味の違いはありますか?
小原:音楽を聞かせて醸した日本酒の方が
吟醸香のある柔らかな酒質になっています。
美宴:蔵粋シリーズには4種類ありますよね?
小原:はい。純米大吟醸の「マエストロ」に続き
「交響曲」「管弦楽」「協奏曲」があります。
美宴:それぞれに聞かせる曲も違うのですか?
小原:「交響曲」には40番と41番、「管弦楽」 ディベルティメント、
「協奏曲」にはピアノ協奏曲21番と27番を聞かせています。
美宴:面白いですね!どんな方が買っていかれますか?
小原:モーツァルト協会の方や、全国の音楽関係者の方々にファンが多いです。
美宴:小原さんの日本酒造りへのこだわりは?
小原:ごまかして美味しい味をつくるような酒ではなく、
誠実で真面目な日本酒を造り続けていきたいと思っています。
そのようなお酒は年月が経ち古酒になったとしても、
深みが増してどんどん美味しくなっていくと信じています。