Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

啓蒙の光23-カント「純粋理性批判」

2021.05.20 11:02

1781年イマヌエル・カントの「純粋理性批判」が発刊された。この書は、近代哲学の基本著作とされるが、彼は東プロイセンのケーニヒスベルク大学教授であり、直後の反響は少なかった。しかしドイツ哲学や文芸の勃興と共に有名になってゆく。実に50代後半の遅咲きの開花である。

この著作では、経験主義も理性主義も限界があると否定される。人間は感性を使って外界と接触するが、それを認識するのは悟性のカテゴリーを通じてである。従って、外の世界の「物自体」は認識の外にある。彼はこの理論を天動説から地動説への転換にまぞらえ「コペルニクス的転回」と呼んだ。

現代哲学者メイヤスーによれば、これ以後の哲学はすべて「相関主義」となる。つまり外界と認識の関係を吟味することが仕事となるわけである。トマス・クーンは科学をパラダイムの中で捉えるし、ミシェル・フーコーは歴史をエピステーメーとして捉えるわけだ。

さらにカントは、真理の追求は二律背反に陥るとまで言う。どうすりゃいいのか。しかし確かに明日の天気にしても現代にしても完全にわかりはしない。だからといって我々は不安にならないで生きている。その訳は次回「実践理性」のお楽しみというわけである。