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羅生門葛

2018.05.21 07:05

https://www.tajima.or.jp/nature/plant/173361/ 【ラショウモンカズラ なんかすごい名前ですね】より

ラショウモンカズラ シソ科

ラショウモンカズラは、不思議な分布をします。ある所にはたくさんあるのですが、どこにでもあるというものではありません。例えば、蘇武岳の村岡区側ではよく見るのですが、反対側の日高町側には1カ所では知られていますが、非常に小さな群落です。豊岡市には他に3カ所で知られていますが、他にはない特異な環境に生育します。新潟県では、「ラショウモンカズラ型」分布とされる植物群が知られています。但馬でも分布に何か規則があるのかもしれません。

ラショウモンカズラは、4月~5月に花を咲かせます。例年だと但馬はゴールデンウィークあたりが盛りになりますが、2021年は異常に季節の移り変わりが早いので、連休には花は終盤になるのかもしれません。

ラショウモンカズラは、紫色の大きな花を横向きに咲かせます。これが切り取られた鬼の腕に見えるというのですから昔の人の想像力はすごいものです。この花の形、向き、大きさは、花粉の運び手であるマルハナバチに向けて進化したと言われています。写真にも写っていますが、花の上部に雌しべが見えます。

日当たりのよい場所に咲いているラショウモンカズラは元気いっぱい立ち上がっています。かずら;蔓という名前にはそぐわない姿です。一方で、日当たりのよくない場所では茎が這っています。地上茎から走出枝が伸びていって、地に接した部分から根を出して栄養繁殖を行うとも言われています。

さてラショウモンカズラという名前ですが、羅生門で切り落とされた鬼女の腕に花の形(長い花筒部が急にずんぐりと太くなっている)が似ていることから来ています。古名には、瑠璃蝶草(ルリチョウソウ)という優雅な名前もありますが、この名前は今ではロベリアの仲間の園芸植物の名前に使われています。

ところで、ラショウモンは羅生門(羅城門)で、平安京の雀大路の南端に位置する正門として設けられた門です。やがて荒廃し、芥川龍之介の『羅生門』に書かれているように、楼閣の上には身寄りの無い遺体がいくつも捨てられるような場所となり、様々な鬼や妖怪が出る場所となったとされています。とここまで長々と書いていますが、この鬼の腕を切り落とした人は平安時代の武将である渡辺綱という人です。この渡辺綱は、但馬の国司であった源頼光の四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)の筆頭の人で、大江山の鬼退治にも同行しています。また、日高町上郷の頼光寺は、源頼光に由来しているとされ、冒険家植村直己の墓所にもなっています。ラショウモンカズラは、但馬と縁のある名前だと言うこともできそうです。


https://shimotou.com/exhibition/exhibition03/exhibition03c/ 【羅生門蔓】より

この花は「ラショウモンカズラ 」(羅生門蔓)です。京都植物園で写しました。羅生門と聞きますと、魔界京都では渡辺 綱が鬼女の腕を切り落としたという話があります。この花がなぜ毛むじゃらの鬼の腕なんて怪奇な名になっているのだろうと不思議に思っていました。文献では“Meehania urticifolia”とありますが、和名が“ラショウモンカズラ”となっています。原色牧野植物図鑑ではMeehania urticifolia MAKINO とあります。そして太い花冠と京都羅生門で渡辺 綱が切り落とした鬼女の腕になぞらえたとしています。それでも納得しません。よく見ると同じ種のシソ科の花に比べると、花自体も大きく、花自体に細い毛むじゅらにして、2本ずつ並んで、太くて長いので、この名が付けられたようです。それにしても私は納得しませんでした。

羅生門については、もともと羅生門を舞台とする筋立の者がありました。之は戻橋から羅生門に話や伝説が移りました。当時羅生門は荒れ果て、「死体の捨て場」になっていました。京は百鬼夜行し、鬼女も出る伝説に移り変わり、「能の一」として羅生門と鬼女が有名になりました。戻橋で小百合が綱に「これから五条に行きまする」と嘘をつくセリフがありますので、どちらが先かわかります。

丁度、今年“都をどり”があって「戻橋鬼女伝説(もどりばしきじょはなし)」を観ました。浄瑠璃によって上演されました。渡辺 綱(源頼光の家来四天王の一人)が戻橋の通りがかり、美しい小百合(さゆり)という扇折り職の女性に出会いました。堀川の影に落ちたその女性の鬼女の姿(水鏡の段は伝説によく使われています)を見破り、斬り合いが始まります。空を飛んで、北野の屋根で綱が鬼女となった小百合の右腕を切り落とします。切り落とされた右腕ははや毛むじゃらな茶色の鬼の腕に化していました。

これでは私の話になりません。小百合の着物の色や柄がこの花と同じようにしていました。鋭利な綱の名刀は一刀両断に、同じ色合いの袖元から白い手と共に切り離された瞬間の腕の形だ!それがラショウモンカズラだ! と独り合点をしている次第です。