戻橋(もどりばし)の鬼女(きじょ)
http://hukumusume.com/douwa/pc/100monogatari/082.htm 【百物語 第82話
戻橋(もどりばし)の鬼女(きじょ)】 より
戻橋(もどりばし)の鬼女(きじょ) 京都府の民話 → 京都府の情報
むかしむかし、源頼光(みなもとのらいこう)の家来で、渡辺綱(わたなべのつな)という人がいました。
綱はとても優れた武者で、主人の頼光からとても大事にされていました。
ある時、綱は主人の言いつけで、京のはずれまで出かけることになりました。
その帰り道のことです。
一条戻橋(いちじょうもどりばし)にさしかかった時、橋のたもとにいる女の人に気が付きました。
見ると、この世の者とは思えないほど美しい女の人です。
「どうされたのですか? こんなところに、たった一人で」
綱が尋ねると、その女の人は、
「はい、私はさるお方のお使いでこのあたりまでやってまいりましたが、帰る道に迷って、途方にくれておりました。あの、もしよろしければ、どうぞ私を都までお連れ下さいませんか」と、頼みました。
「わかりました。では、わたしの馬にお乗り下さい」
綱は女の人を自分の馬の後ろに乗せましたが、橋の中ほどまできた時、なにげなく水にうつった女の人を見てびっくりです。
なんと自分の後ろにうつっているのは、恐しい鬼だったのです。
「貴様!」
綱が振り返ったと同時に、鬼もその姿を現して、「あははははっ、我々の仲間を数多く殺した恨み、いまこそはらしてくれるわ」と、丸太のような腕で綱の体を軽々とつかむと、ふわりと空へ舞い上がり、そのまま空を飛んで鬼の住み家である愛宕山(あたごやま)へと向かいます。
(ぬぬっ、このままではまずい!) 綱は、何とか腰の刀を抜きました。
すると、それを見た鬼が大笑いします。
「あははははっ、我を斬るつもりか? 今、我を斬ると、お前は地面に落ちて死ぬことになるぞ」 たしかに、この高さから落ちては助かりません。
しかしその時、自分たちが進む方向に、北野天満宮(きたのてんまんぐう)の屋根が見えてきました。
(うまくあの上に降りることが出来れば、怪我ぐらいですむかもしれん。天神さま、どうぞご加護を) 綱は意を決すると、自分をつまみ上げている鬼の腕を切り落としました。
「ウギャーーー!」 腕を切り落とされた鬼は大きな悲鳴を上げると、そのまま愛宕山に向かって消えてしまいました。
そして、何とか北野天満宮の屋根に降りることが出来た綱は、大した怪我もせずにすみました。
無事に家に帰ることが出来た綱は、(自分が生きているのは、全て天神さまのおかげです。ありがとうございました)
と、感謝すると、とても立派な灯籠を納めて、それから後も信心に励んだということです。
https://yomukiku-mukashi.com/IchijyoBridge.html 【安倍晴明と一条戻り橋の鬼女】より
こんちには。左大臣光永です。梅雨を通りこして夏めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか?今日あたりは池袋の東武デパートの屋上のビアガーデン最高だなあと妄想しつつ仕事してます。
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さてこの商品に関連して、しばらく平安時代の人物や事件、場所についてお話していきます。本日は一条戻り橋にまつわる伝説です。
京都一条堀川の戻橋は、794年の平安京造営の時、一条通の堀川に架けられた橋で、
その後何度も架け替えられましたが、現在もほぼ同じ位置にかかっています。さまざまな伝説に彩られた橋です。
http://roudoku-data.sakura.ne.jp/mailvoice/IchijyoBridge.mp3
「戻り橋」名の由来
平安時代初期。
漢学者・三善清行(みよしのきよゆき)の八男に、浄蔵(じょうぞう)という天台宗の僧がありました。
浄蔵は菅原道真の怨霊をしずめたり、東山法観寺の八坂の塔がゆがんでいたのを直したことで有名な僧です。
延喜18年(918年)12月。浄蔵が紀州熊野で修行しているところへ、父危篤の知らせが届きます。「なんということだ。父の死に目に会えないなど、最大の親不孝」
浄蔵はすぐさま京都に戻り、一条土御門橋までさしかかった時、向こうから父の葬儀の列が進んできました。「間に合わなかった!ああ、父上、父上ーーーッ」子は、父の棺にすがりついて、泣きます。
「こんな、死に目にもあえないなんて。あんまりだ。どうか父を、父を生き返らせてくだされーーっ」その時、一天にわかにかき曇り、ビカーーーーッ強烈な雷鳴。そして!
ガタガタガタッ、バキバキバキッ、バッカーーーン
棺桶の蓋を弾き飛ばして、むくりと上半身を起こすと、父・三善清行はギギキと首を横に向け、「息子よ…」「父上ーーーッ!!」
ザアザア降りしきる大雨の中、父と子は見つめ合い、ああと、抱き合いました。
浄蔵の強い願いが冥府に届き、三善清行は一時的によみがえることを許されたのでした。
あの世から「戻る」ということで、以後この橋は土御門橋あらため戻り橋と呼ばれるようになりました。
淨藏、善宰相のまさしき八男ぞかし。それに八坂の塔のゆがめをなほし、父の宰相の
此世の縁つきてさり給ひしに、一條の橋のもとに行きあひ侍りて、しばらく觀法して
蘇生したてまつられけるこそ、つたへ聞くにもありがたく侍れ。さて、その一條の橋をば戻り橋といへる、
宰相のよみがへる故に名づけて侍り『撰集抄』巻七「仲算佐目賀江水堀出事
(ちゅうざんさめがえのみずほりでごと)」
現在の一条戻橋は平成7年(1995年)に架け替えられたものですが、
すぐ近くの晴明神社には、一条戻橋のミニチュアがあります。
安倍晴明と一条戻橋
安倍晴明は式神として十二神将を使っていました。常に身の回りの世話をさせていたのです。
本を読む時も式神にめくらせて、「次」「次」「ちょっと戻れ」などとやっていました。
「あなた、その式神…」
「ああ、便利じゃろう、お前も遠慮なく命ずるがよいぞ。
掃除でも、洗濯でも。買い物でも」「私はその顔が怖いんです」
「顔か…。たしかに少し、人間離れしては、おる。しかしまあ、式神であるから」
「であるから、ではありません。私はその顔を見ると、恐ろしくて、神経が参ってしまうんです。よそへやっといてくださいまし」「何を言うか、わしの大事な式神を」
「いーーーえ、ぜったい、よそへやってください!!じゃないと私もう、出ていきます」
「…仕方ない。わが式神たちよ。妻がああ言っておる。ふだんはここで待機していてくれ」
「しゃあないっすねえ」
「俺たち、晴明さまの奥方さまに悪さなんて、絶対しないのになあ」
「今夜から野宿かァ…」
「晴明さま、なんかあったら、すぐに呼んでくださいね」
こうして安倍晴明は、十二の式神たちを屋敷のそばの戻橋の下にかくしておき、
いざ仕事となると呼び出して召し使ったということです。
かの安倍晴明も奥さんには頭が上がらなかったのです。
一条戻橋と伝ふは昔安部(ママ)晴明が天文の淵源(えんげん)を極めて、十二神将を仕ひにけるが、其の妻識神の貌(かお)に畏れければ、彼の十二神を橋の下に呪し置きて、用事の時は召仕ひけり。
『源平盛衰記』奴巻第十「中宮御産の事」
一条戻橋の鬼女
また、こんな伝説も伝わっています。源頼光四天王の一人、渡辺綱はある晩、主君頼光の使いで一条大宮まで行った帰り、一条堀川の戻橋にさしかかると、年の比二十歳ばかりの美しい女が立っていました。
「もし、私はこれから五条あたりまで行くのですけれど、こんな夜中に、女の一人歩きは恐ろしいですわ。馬に乗せていただけませんか」
「ああ、構いませんよ。このへんは何かと物騒ですからな。さ」
渡辺綱は馬の上に女を引っ張り上げ、馬を歩ませます。
馬は夜の堀川通りを進んでいきます。
「あのもし」
「はい?」
「実は私、五条には行かないんです」
「えっ、五条には行かない?では、どこへ」
「都の外に行くのですわ」
「都の外…?」
どうも様子がおかしい。そう思いながらも渡辺綱は答えます。
「どこであろうと、お送りいたそう」
「まあ、たのもしいお言葉!!」
すると、後ろの乗っていた女はぎゃああっと鬼の姿に変化し、ガッと渡辺綱の髻をひっつかみ、ひょほーーーーーっと大空に舞い上がり、北西の方角目指して加速します。
「やはり、物の怪のしわざであったか」渡辺綱、少しもさわがず、愛刀・髯切を抜き、
ぶんっ
「ぎゃあああああ」鬼の腕を切り落とすと、すーーーーーーーーーどこおおぉんっ
鬼の腕は、北野の社の回廊の上に落ちました。
「ぐ、ぐぎゃあああああああ。お、おぼえておれーーーーッ」
捨て台詞を残して鬼はびゅーーーーん愛宕山の方角へ飛び去っていきました。
しゅたっ見事、着地を決めた渡辺綱。その脇には、切り落とされた鬼の腕が転がっていました。綱はこれを主君頼光のもとに届けます。
「なんと…鬼の腕とは奇怪な。何事か祟りをなすやもしれぬ。
どうしたものか。そうじゃ!こういう時こそ陰陽師さまに御相談しよう」
頼光が阿部晴明に相談すると晴明は、「綱には七日間の暇を与え、物忌みをさせなさい」
こうして安倍晴明が封じた鬼の腕を持って、渡辺綱は摂津渡辺の自宅に引きこもり、
物忌みをして「仁王経」を唱えていました。
「綱や、綱やーーー」
「あっ、母上」
そこへ入ってきたのが、綱の義理の母です。実の母以上に、綱を大切に育ててくれた義理の母です。
「どうしたんですかいきなり」
「お前こそ何をやってるんだい。そんなお経を上げたりしてあっ…それは何、見せてごらんなさい」
「いけません、母上それは」
ガッ。
綱の養母は鬼の腕をひっつかむと、ぎゃ、ギャギャアアーーーン
たちまち鬼の姿に早変わり。
「しまった!」
あわてて弓矢を手に取る綱をよそに、鬼は館を飛び出し、
ぴゅーーっと飛びさってしまいました。(屋島本『平家物語』剣の巻より)
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本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。