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サメとゾンビと空伏空人

映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』

2021.05.22 08:16

 『ドーン・オブ・ザ・デッド』の監督、ザック・スナイダーの久方ぶりのゾンビ映画だ。だから結構注目されていたし、予告編もなかなか面白そうだから楽しみに指定単だけれども、全然面白くなかった。いや、面白かったところもある。オープニング映像とゾンビの群れに入る前だ。ゾンビである必要がない。

 ゾンビパンデミックが発生して封鎖されたラスベガスにある5000万ドルを奪いに行く一攫千金の銀行強盗。と言えばなかなかにして楽しそうな雰囲気はある。俺もそう思った。でも封鎖されたラスベガスの中に入ったら迎えてきたのが大量のゾンビ! ではなく、乾燥して動かないゾンビ(雨に濡れたら数時間で復活するらしいが、劇中で雨が降らなかったので復活はしなかった。その設定の意味はなに)と眠っているゾンビ。あと知能があるので贈り物をしたら襲ってこないゾンビ。あれ、戦わないぞ?

 登場人物たちも丸鋸を武器に構えた男は別に丸鋸を使わないし、ゾンビを笑いの種として殺すゾンビYouTuberは別に笑いの種としてゾンビを殺さない。

 予告動画にデカデカとでてくる『ゾンビトラ』は一回出てきて消えたあと、カジノをようやく襲ってくれた知能があるゾンビの群れに混じって近づいてきたけど、眠たいのか普通に玄関前で待機していた。そのあとひとり逃げだした男をじっくりと嬲って殺して出番は終わり。思った以上に話に関わってこないのである。

 話に別に関わってこないトラが人を嬲り殺すシーンも、ザックスナイダーの悪癖である「無駄に長尺」が遺憾なく発揮されていて無駄に長い。一回投げて振り回して振り回して一回投げて殴って眺めてじっと眺めて頭をかみ砕いて殺すのである。長い。三下の悪役の死に様にしてはとても長い。そしてそれで満足したのかトラの出番はそれで終わりである。ゾンビトラとの対決! なんてものはないのである。避けることが可能なイベントだったのだ。

 知能のあるゾンビはバイオハザードヴィレッジのライカンみたいな感じなんだけど、出てくるのが最後になってからで、それまではずっと部屋に閉じこもって王さまが吠えるので自分たちも吠える。ぐらいの出番しかない。チームに不和をもたらすための存在であるところの主人公の娘は、いたところでなにか活躍することはなく(銃弾を避けるライカン方式のゾンビに全弾ヘッドショットする活躍は見せる。王さまもビックリして固まってる。軍隊よりも強いぞ)、彼女の目的である「ラスベガスに侵入した友達の救出」も、助けたけど……助けたけど、なに? ぐらいの掘り具合(どれぐらいの掘り具合かと言うと、救出されたあと友達にカメラが向けられることもセリフもほとんどなく、救出用のヘリが墜落したときには、友達の生存確認すらしなかった。物語がびっくりするぐらい友達に興味がない)。


 なんていうか、「全体的に長尺なわりには、なにひとつ深掘りするつもりが感じられない」映画だった。ゾンビトラも、実質ライカンの知能があるゾンビも、救出する友達も、地面に落ちた拳銃も、全てが「それはそれとして……」ぐらいでカメラが移動していく。もしかして興味がないのではないか? というぐらいだ。それを象徴するのがラストシーンなのだが、どんなシーンか見てほしい。主人公と娘の結末を見せたあと、それはそれとして続編の伏線を貼ります……という長尺シーンが流れる。娘にも興味がないのである。

 冒頭のオープニング映像は面白い。ラスベガスに入ってからは別に面白くない。そんな映画。ザックスナイダーなので無駄に長尺なので人には勧めにくい。面白くなる要素はあったはずなのに、なにも活用できていない。そんな映画。