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3人でネットショップやってそこそこ儲かったけど、結局閉店した話

2016.12.14 15:58

いきなりですが、ネットショップはお店です。

自身のショップがオンライン上にあるからといっても、あくまでお店であってITではありません。

ちなみに、ここでいう”ネットショップ” にはモールなどのプラットフォームや周辺サービスは含みません。物理的な商品を取り扱う、いわゆるお店を意味しています。 


お客様の為という視点は皆さん当然持っていると思いますが、IT的考え方が強く先行されるネットショップはまず利便性や効率性といった"仕組み"を提供してそれをビジネスにつなげるというアプローチが多いように思います。

語弊があるかもしれませんし全てがそうとは言いませんが、傾向として商品が二の次なんですよ。

これは"商品を届ける"といういわゆるお店としての基本的な視点とはスタート地点が異なり、突き詰めるとどこか無機質になりがちです。


もちろん、無機質でコミュニケーションに熱を持たないプロセスで物が届けられることを良しとする顧客層はいらっしゃいますし、それは人だけではなく商品の種類にもよると思います。


しかし、こういったケースでは大抵お客様の意思決定のポイントが価格になってしまうことが多く、結果的にショップ側は価格勝負となり、さらにIT的なテクニックやマーケティング手法に頼って、遊びの無いただの無機質なカタログや仕組みがこれまた機械的に量産される広告によってWEB上にばら撒かれるといった、ある種混沌としたループに陥ります。 

そうなると、商品も商品ではなく数字に見えてきます。

それだけではありません。そんなウェブサイトに足跡を残してくれるお客様の事すら、数字でしか見れなくなります。 


はい、実はこれ過去の私の事でもありまして。。。

そして私は、薄利多売ながら効率的に少人数で運営し、時に黒字倒産しかけるくらい売上もあって利益も出ていたネットショップを閉じました。 


理由は、全然面白く無い上に、大切なお客様を性悪説で考えるようになってしまっていたからです。 


私はもともと複数のインポートアパレルブランドの国内代理店のシステム部門出身で、コンピュータの事も一般的レベルよりは分かっているつもりだったので、ネットショップなら独立してこれまでの経験とスキルを活かしてやれると思い、商材も前職で得た知識を元にインポートファッションブランド関連としました。 


そして蓋を開けてみると、自分で仕入れた商材がことごとく売れません。


まぁそれもそうでしょう。

ファッション業界が長いとは言え、所詮は間接部門のシステム屋です。


それでも、売れないと生活が成り立ちませんので完全に方法を変えたんですね。

仕入れを受注発注型に変更。各仕入先の在庫データを日々取得し、品番ベースでの動きを数値化して傾向を掴み、売れ筋は他店の価格を調べて利益が出る最低ラインで値付け、売れてくれば一気に仕入先の在庫を押さえ、今度は売れるギリギリまで値段を上げていくように調整。

これにさらに広告の最適化とか顧客対応をテンプレ化してほぼ自動化(今でいうChatbot に近いものですね)するなど、もう少し複雑で大きい仕組みではありましたが、これをアルゴリズムにしてシステムを構築し、自動で回していました。


つまり、餅は餅屋。


結局私は徹底した数値管理のもとシステム化して、価格勝負でも食える仕組みを作っていただけに過ぎません。

その後は冒頭に戻ってループです。 

ただこれだけならまだ良かったんですね。

本来高額なブランド品を安売りする事で、顧客層のモラルレベルが圧倒的に下がり、代引きで注文しておいて受け取り拒否とか、電話口でクチャクチャ物を食べながら命令口調で汚い言葉を発して自分勝手なクレームを延々と続けるとか、いやぁ、日本って世界から礼儀正しいとか言われてるけど、こういう人って結構いるんだねというケースに多く接するようになり、対応するスタッフがどんどん病んでいきました。 


ある日、それでもスタッフは電話口では丁寧な対応を心がけていたのですが、「はい、申し訳ありません、すいません、すいません」と言って電話を切った瞬間、そのスタッフが今まで話していた電話口のお客様に向けて大きな声で悪態をつき始めたんです。

その内に社内での会話の多くが今日はどんな酷いモラルのお客さんがいたとか、最初は愚痴だったのが笑い話として日常化していきました。

内容は、どう考えてもお客さんのただの無茶苦茶なわがままです。スタッフも、ウチのお店も何ら非難されるような事はしていませんでした。


でも、でもですよ。

その時さすがに、これはいかん、と思いました。 


商品も含め全てを数字で見て徹底的な自動化を追求することで、確かに売上も利益もそれ以前よりは上がりました。

しかし同時に、商品に対する思い入れや、仕入れの楽しさ、自分たちのお店のカラー、そして何より大切なお客様とのコミュニケーション、そう言った定量化できないものを失ってしまっていたんです。

事業として利益が出ていても、そのやり方が長く続くとも思いませんでしたし、そもそも続けたいとも思えませんでした。 

誤解しないでいただきたいのは、数値管理は非常に重要ですし、システム化や自動化が悪なわけではありません。むしろ今後ますます必要です。

やっぱり何事もそうなんですが、使いどころとバランスが重要という事ですね。 


実際にその当時のネットショップの薄利多売で成り立つ売上と利益を確保するために最も必要だったのは広告でもマーケティングでもなく、バックヤードの自動化でした。

これが無いとそもそもビジネスが成立しませんし、人がやるだけで凄まじいコストと時間が発生します。


そして生まれたのが今の弊社のメインビジネスである、ネットショップの商品画像を綺麗に加工する作業を自動化したZenFotomatic(ゼンフォトマティック)です。


ネットショップのバックヤードは重たいアナログ作業に満ちていますが、それらの作業も数値化して検証した結果、この商品画像の加工作業が非効率でコストと時間が最もかかっていました。

しかし、"じゃぁやらない" という選択肢はありませんでした。

撮りっぱなしの商品写真とシンプルかつ綺麗に加工された商品画像ではそもそも圧倒的に売上や単価が変わってきますので。 


なので当初ZenFotomaticは完全に自分たちのために作った、ネットショップで勝ち残るための武器だったんです。

しかし、ネットショップの店長コミュニティーでこの仕組みを共有すると、殆どの方から使いたいという要望をいただき、試しに限定的にサービス化したところすごく喜ばれたんですね。

海外でも試したところ、反応はやはり同じでした。

何も薄利多売だけに効く訳ではなく、商品数が少なくても、十分な効果が出たんです。


ある初期のお客様には泣いてまで喜んでいただけました。


そこで、ハッと気付いたのです。

これこそが”商い” だと。


ZenFotomaticは写真の中から自動的に被写体を認識して被写体以外を切り抜き、白抜き処理し、画像のリサイズや余白調整、明暗補正まで、実際に作業をしていたからこそ理解している複数の細かな必要作業を盛り込んだシステムですので、僭越ですが技術的にはかなり高度な訳です。

だからこそ開発にのめり込み、現在も日々その精度向上に対するモチベーションが失われる事はありません。


つまり、好きなんですよね。そういうややこしい開発をするのが。


そして好きで得意な事が人に喜ばれ、そしてお金をお支払いいただけて、生活させていただける。だからこそ開発ができる。

くどいですが、これが ”商い” だと心の底から腹落ちした訳です。 

そして腹落ちした時にはネットショップは閉じる事も同時に決心していました。


ただ、その後現在の事業が軌道に乗るまではまた別の地獄を見ましたが、、それはまた別の機会に。 

当たり前のようで以外と盲点になってしまいがちな事を長々と綴ってしまいましたが、要は言いたいのは以下の点です。 


ネットショップはITではありません。お店です。

お店である以上何より大切な事は、愛する商品やお客様へのサービスについて考える事で、その気持ちを失わない運営をする事です。

その為にはしっかりと利益を出さなければもちませんよね。


なので、属人化すべきところと非属人化すべきところを明確にし、非属人化すべきところはできるだけ効率化、自動化を進めましょう。

ちょっとした事でも良いのです。1秒の削減が利益率に大きく影響します。

そこにかかるコストなんて、効率化による様々な恩恵で直ぐに取り返せます。


「自分でやる」が最も高コストなのです。


餅は餅屋です。

ネットショップ運営者のあなたが本来すべき事は、あなたが好きで、得意で、それによってあなたの顧客に喜ばれる事であって、そこに割く時間こそが最も大切にしなければいけないものなのです。