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ZIPANG TOKIO 2020 速報「鳥取県 青谷横木遺跡から全国で2例目 国宝『高松塚古墳壁画』に次ぐ古代の『女子群像』を発見」

2016.12.16 02:31

左から4人目の人物像

左から5人目の人物像

一番右側の払子を捧げ持つ侍女像  (撮影 奈良文化財研究所)


青谷横木遺跡から国宝「高松塚古墳壁画」に次ぐ女子群像絵画発見! 

一般国道9号(鳥取西道路)改築事業に伴い、平成25年度から27年度にかけて発掘調査を実施した「青谷横木遺跡」で見つかった古代の官道「山陰道」を構築した際の盛り土の中に、女子群像を描いた古代の板(長さ約70cm、幅15.5cm)が含まれていたことが分かりました。

絵は髪を結い裳(も)という縞模様のスカートをはいた女性が6人、右から左に向かって歩を進めている様子を墨で描いています。一番右に描かれた払子(ほっす、獣毛や麻などを束ねて柄をつけたもの)を捧げる侍女は他より小さく描かれています。板材は板目で樹種はまだ同定していません。

高松塚古墳壁画の女子群像が衣装等の表現と女性が集まって描かれているというモチーフで、当時の中国(唐)の影響を強く受けているのに対して、この絵は衣装等の表現は高松塚古墳壁画と同様、中国(唐)の影響が見られるものの、複数の人物が行列するというモチーフは、当時はすでに滅亡していた高句麗(朝鮮半島北部)の壁画表現と類似性があるという特徴があります。

描かれた時期は高松塚古墳壁画とほぼ同じ飛鳥時代(7世紀末から8世紀初頭)と考えられますが、朝鮮半島からの影響も受けた絵画表現であるという点で高松塚古墳壁画とは異なっています。板絵は、国内外の類例から葬送に関わるものと考えられます。板絵上部に直径5mm程の穴が開けられていますが、具体的な用途はよく分かりません。古墳の石室に架けられていたとか、実際に壁画を描く際に参考にする構図のデザイン画であるなど色々な可能性が考えられます。

いずれにせよ、この地が朝鮮半島と伝統的な関係があった可能性を裏付ける絵画資料としても価値が高い発見です。

今後は、墨だけではなく顔料で色づけされていなかったかを調べ、将来にわたって保存していくための処置を行う予定です。

なお、12月17日(土)に当センターで板絵の特別公開を行います(午前9時から午後4時まで)。ぜひお出かけください。


発表内容詳細


1 出土遺跡 青谷横木遺跡(あおやよこぎいせき、鳥取市青谷町)

2 発掘調査について (1)調査の委託者 国土交通省中国地方整備局鳥取河川国道事務所 (2)調査主体 鳥取県埋蔵文化財センター (3)調査期間 平成25年4月から平成27年12月 (4)出土地区・時期 P9区 平成27年9月19日

3 青谷横木遺跡出土板絵 (1)赤外線画像(写真撮影:奈良文化財研究所)

4 板絵について

(1)7世紀末~8世紀初頭築造の道路遺構(古代の官道「山陰道」)と10世紀代につく
られたと考える 条里遺構の交点にあたる箇所から出土。
(2)少なくとも6名が向かって右から左へゆっくり歩を進める姿が確認できる。裳(も)
といわれるスカートのような衣装や結い上げた髷(まげ)状の髪形、沓(くつ)や
払子(ほっす=蝿払い)らしきもの が確認でき、国宝「高松塚古墳壁画」とほぼ同じ時期 
(7世紀末~8世紀初頭)のものと考えられ る。「山陰道」構築の時期とも齟齬はない。
(3)墨書により描かれ、現時点での肉眼観察では彩色は確認できない。

(4)古代の『女子群像』としては、国内では国宝「高松塚古墳壁画」に次いで 2 例目の発見で、板絵に 描かれたものとしては国内初の出土。先導者と女主人、それに従う侍女といったモチーフは、朝鮮 半島の水山里古墳壁画(5世紀後半)と類似。

5 『女子群像』板絵出土の意義
(1)人物群像は、中国や朝鮮半島(高句麗)の墓室に描かれる画題で、墓主の生前の姿を
再現した行列 図と考えられ、広く古代東アジアにおける墓葬文化の交流を考える上で重要な
資料である。
(2)墓葬として人物群像を描くという、外来の文化に素養のある人物が関与したと考えら
れる。類例か らすると、渡来系の豪族、もしくは渡来文化にゆかりの深い有力者層がこの地
に存在していた可能性 が高い。
(3)青谷横木遺跡では古代山陰道や条里遺構が確認され、木簡や木製祭祀具も数多く見つ
かっている。今回の発見により、我が国の飛鳥時代から平安時代を代表する遺跡として評価
が高まった。


6 板絵の展示 平成28年12月17日(土)、9時から16時に、当埋蔵文化財センターで速報公開を開催(入場無料)


お問い合わせ
鳥取県教育委員会埋蔵文化財センター
 住所 〒680-0151 鳥取県鳥取市国府町宮下1260
電話 0857-27-6711 ファクシミリ 0857-27-6712
 E-mail maibuncenter@pref.tottori.jp