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巫女・シャーマンと神道文化

2018.05.24 06:40

https://www.rekishijin.com/11871 【巫女・シャーマンと神道文化】より

日中の比較と地域民俗誌の視角から高見 寛孝 著

(二松学舎大学・國學院大学兼任講師/1960年生まれ)

本書は、佐々木宏幹のシャーマニズム論を取り込みながら、柳田國男から桜井徳太郎に至る巫女研究の学統を継承するものとしてまとめたものである。

第1章は魏志倭人伝を用いて、その中に登場する鬼道を媒介に、シャーマニズムと神道との関係を明らかにしようとした。

第2章~第4章は、中国の民俗文化との比較を試みる。第2章では日中両国の古典をテキストとして、シャーマニズム研究の一環として憑霊文化を取り上げた。第3章は源氏物語に登場する六条御息所の生霊を遊魂現象のひとつとして捉え、こうした現象が日中両国の民俗文化の中に広く伝承されていることを確認し、脱魂現象との関係について論じる。第4章は奄美沖縄の来訪神信仰を分析し、他の神表象との関係について論じた。

第5章は、ひつとの地域社会における宗教文化複合の中に、宗教者と彼らを取り巻く依頼者としての地域住民との相互関係を、歴史的・機能構造論的アプローチから位置づける。

【主要目次】

序 章 シャーマニズム研究の可能性(日本民俗学の巫女研究/宗教人類学のシャーマニズム研究/佐々木宏幹のシャーマニズム論/本書の構成と内容)

第一章 シャーマニズムと鬼道と神道と

 (固有宗教としての神道/『三国志』の中の鬼道/鬼道とシャーマニズム)

第二章 日中憑霊文化の比較

 (シャーマニズムと憑霊文化/中国古典の中の巫女たち/日本古典の中の巫女たち)

第三章 生霊信仰と脱魂文化

 (『源氏物語』の生霊/日本文化の中の脱魂と遊魂/中国文化の中の脱魂と遊魂)

第四章 シャーマニズムと来訪神信仰

 (奄美沖縄地域の来訪神/女性神役のシャーマン性)

第五章 シャーマニズムと地域社会

 (平戸市猪渡谷の宗教者たちとその来歴/宗教活動の諸相/ 屋敷神と宗教者たち/

 猪渡谷の憑霊文化と神観念)

https://opac.kokugakuin.ac.jp/webopac/kokugakuinzasshi_116_12_009._?key=FSMWHF   【『巫女・シャーマンと神道文化 』】


https://mainomichi.com/mblog/sherman-miko/ 【シャーマンと巫女|スピリチュアルな両者の能力と違いとは】 より

この世界には神様や、死者、精霊、など現実世界に存在しないものと会話を行うことのできる人間がいます。これだけを聞くとオカルトやホラーの世界の話に聞こえてしまいますが、私たちの生活や精神には少なからず影響を受けていると言ってよいでしょう。

皆さんも神様に祈りごとを祈ったり、自分の将来を占ったりしたことがあると思います。

自分の願いや、見えない未来を神様や祖先、精霊などに言葉を求め、その能力を持つ代弁者を必要とするのです。

ここではそんな霊や信仰に関わるシャーマンと日本の巫女についてご紹介します。

シャーマンと巫女の共通点と違いとは一体どこにあるのでしょうか?

その意味を知ることでシャーマンの存在理由の一部が見えてくるかもしれません。

シャーマンとは?

シャーマンとは霊能力を使い、病気や人々の悩み、自然の問題を解消する能力を持つ人のことを指します。

その語源は北アジアのツングース・マンチューの諸民族の言葉で「サマン」から来ています。サマンは生活環境の不調や病気、また不幸な出来事が生じ、その原因が霊的なものであると供儀や儀礼を行い、その精霊と交わり問題の解決を行います。

このような存在は全世界に存在することがわかり、この考え方を総じて「シャーマニズム」と呼び拡がっていったのです。

「シャーマニズム」ではシャーマンの存在が必要不可欠であり、精霊との交わりから得られる言葉によって人々の生活が成り立つのです。

巫女とは?

巫女は古来より日本で口寄せおこなったり、占いや祈祷を行う存在のことを指します

現在では神社で神事の奉仕や神楽舞を舞う役割となっていますが、元々は神や精霊などを体に憑依させ、神託を伝える役割でした。この憑依を行う巫女は「口寄せ巫女」とも呼ばれ、神社で祭祀補助を行う「神社巫女」と区別される場合もあります。

巫女の起源は日本神話の「天鈿女(アメノウズメ)」と言われています。アメノウズメは技芸の女神です。天の岩戸に閉じこもった太陽神「天照大神(アマテラス)」をその舞で誘い出し、世界に日の光を取り戻したと言われています。ここから巫女による巫女舞の文化が始まったのです。

始まりは神話となりますが、実際に弥生時代では憑依の能力を持つ巫女が現れ、人々の生活の中にその能力が欠かせないものとなり、巫女を中心に集団が形成され、国ができていきました。

巫女の原点「シャーマニズム」

この巫女を中心とした国作りが日本のシャーマニズムの始まりと言えます。

シャーマニズムの定義としてあげられるのは

トランス状態で脱魂や憑依を行う

神仏、精霊との直接交流、交信

社会的な役割としての信仰と行動の体系

の3点と言われています。

日本古来の信仰宗教である「神道」の教えは教典や開祖もなく、神話に基づく八百万(やおろず)の神・自然信仰・祖霊信仰が元になっており、神羅万象を神々の体現として崇拝しています。そして神々との交流を行う巫女の存在は日本のシャーマニズム文化の基盤となっていると言ってよいでしょう。

巫女は日本のシャーマンなのです。

卑弥呼は最後のシャーマン?

日本で一番有名なシャーマンといえば邪馬台国の卑弥呼でしょう。彼女は神からの信託を人々に伝え、国を治める巫女でした。その後、男王の権力社会へ変化していき、巫女の社会的地位は失墜していくのですが、巫女のシャーマンとしての能力が失われたわけではありません。

地方では民間として、口寄せを行う巫女も存在し、現在もまだ受け継がれています。

その代表が東北地方のイタコや沖縄のノロ、ユタなどです。

シャーマンの力はまだ存在し、現代社会でも今なお口寄せの儀式は行われています。

シャーマンになる為の病気「巫病」

巫女には職業として能動的に選ばれる場合もありますが、シャーマンとしての能力を与えられて必然的に選ばれてしまうケースもあります。

これは神に選ばれると「巫病(ふびょう)」という病気にかかることがあることから、神にシャーマンになることを要請されていると考えられ、こう言った経緯でシャーマンになることを「召命型」と呼びます。

「巫病」は思春期の女性が発症することが多く、幻聴、幻覚が起こり、また高熱がでたり、体の痛みが起きたりする病気です。

沖縄のユタがこちらにあたり、ユタになる運命は生まれた時から定まっているとされ、巫病の発症を受けユタとなるのです。その能力は憑依による死者からの言葉を伝えることで、対象は個人によって限定的に決まっていて、先祖の祖先や、死の直後のものなどの役割が分類されています。

巫病による「召命型」の他には

「世襲型」 血統により、霊的体質が継承され選ばれる。沖縄の「ノロ」がこちらにあたります。

「修行型」 修行、学習により能力を体得します。身体的理由(盲目など)からこの道を選ぶ場合が多いようです。東北の「イタコ」が有名です。

という3種類の型に分けられています。

またシャーマンについてもいくつかの種類に分けられます。ここからはシャーマンの種類についてご紹介しましょう。

シャーマンには、次の5つの種類が存在します。

脱魂型  精霊統御者型  霊媒型(憑依型) 預言者型(霊感型)  見者型

詳しくみていきましょう。

脱魂型

不幸や病気の際、その理由、原因や対処法を知るために神や霊と交流する為、魂が体から抜け出し、超自然界に飛んでいき、そこでの交流の内容を人々に伝えます。シャーマンの発祥であるツングース地方のシャーマンがこれにあたります。

精霊統御者型

守護霊などの上位霊との交信のために補助霊を使い、その言葉を受ける。補助霊は先祖など、血縁者の霊がその任にあたることが多く、近親者の霊から間接的に上位の霊と交信します。

霊媒型(憑霊型)

守護霊や精霊などを自分の体に招き入れ、霊の言葉を人々に伝える。

憑依が始まると自分の意識はなくなり、体を霊に預ける形で自分の体を使い、霊の言葉を直接人々に伝えることができる。

預言者型(霊感型)

神霊や精霊と直接交信し、自分の意志を保ちつつ、その言葉を三人称で伝えることができる。

自分の意識が残っている為、人々の言葉を聞きながら、霊と会話することができます。

見者型

神霊の姿を見ることができ、その神の言葉をきき、人々に伝える。

常に霊の姿を見ることができる為、いつでも人々と霊の対話に入ることができます。

巫女はどれにあたる?

巫女の能力を分類するならばその能力は「霊媒型(憑依型)」に入ります。

巫女は「日本の霊媒型(憑依型)のシャーマン」と言えます。

youtubeでシャーマンについてわかりやすい動画をご紹介します。

【まとめ】シャーマンと巫女について

ではシャーマンと巫女についてまとめていきましょう。

シャーマンとは?

霊能力を使い、病気や人々の悩み、自然の問題を解消する能力を持つ人

北アジアのツングース地方発祥でシャーマニズムという信仰の象徴のひとつとして世界に拡がっていった。

巫女とは?

日本で口寄せおこなったり、占いや祈祷を行う存在

体に神や神霊を憑依させ人々に神託を伝える巫女を「口寄せ巫女」

神社で祭祀の補助を行う巫女を「神社巫女」と呼び区別される場合もある。

巫女の原点は「シャーマニズム」

巫女の本質は神霊との交信であることから、巫女は日本のシャーマンであると言え、日本のシャーマニズムの基盤と言える。

卑弥呼は最後のシャーマン?

巫女は弥生時代に始まり、代表は邪馬台国の卑弥呼であるが、現在でも口寄せ巫女は存在し、その能力は今も引き継がれている。

シャーマンの種類

脱魂型

精霊統御者型

霊媒型(憑依型)

預言者型(霊感型)

見者型

に分かれていて、

シャーマン発祥の北アジア、ツングース地方では脱魂型

日本の巫女は霊媒型(憑依型)

に分類される。

世界にはシャーマニズムの信仰が様々にあり、その中心であるシャーマンも色々な能力で神霊と人々を結びつけてきました。日本の巫女もそのひとつであり、日本という国の基盤と言ってもいいのではないでしょうか。

その能力は現在も受け継がれ生き続けています。神に祈る時、自分の未来を思い描くとき、天からの言葉が聞こえたことはありますか?なかったとしてもこれからは神霊の言葉に耳を傾けてみてください。あなたにもシャーマンとしての能力が現れるかもしれませんよ。