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「喰」…「自然の一部」の自分と向き合って

2021.05.24 10:00

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「喰」…「自然の一部」の自分と向き合って

写真:野草を食べる


バイキングと呼ぶビュッフェ形式の食べ放題が流行しているらしい。人件費削減という意図もあるはずだが、好きなモノを好きなだけ食べるという形式が人気のようだ。私が行ってみた店では、誰もが落ち着いて席に着いておらず、膨大に食べ残す風景を目にすることになり、なんともげんなりとした気分になった。本当に美味いのだろうか。

 ゼミ生と、穀物菜食を進める団体を対象とした環境意識調査をおこなったことがある。穀物菜食とは、穀物を食事の基本とし、動物性食品を採らない食事法である。対象とした『蒼玄』(本部・東京都八王子市)は、穀物菜食を広めるために成立した団体であり、半断食の他にも,健康相談や食養講座・講演会などを行い,食生活改善の働きかけを行っている。調査からわかったことは、蒼玄の人たちは、自分の身体を基点にしながら、地球まで意識が広がっていることであった。大病を経たり、身体と食物とが合わないといった事情から食物に関心を抱き、実践するうちに、産地、地域、そして地球へと思い至る意識が同心円状に広がっている。日本人は、環境問題への意識は高いが行動に結びつかないと常に指摘されている。それは、地球というもっとも遠い課題の理解からはじまり、そこから逆に国、地域、地元、といった方向でつながるので、なかなか自分の暮らしや身体まで関係づけることができないことにひとつの原因があるのではないだろうか。

 蒼玄の人たちは、行動ありきで継続的である。なぜなら、身体が大切だから。30代女性は、穀物菜食や半断食をして、初めて自分の身体は自然の一部なのだと、身体で感じることができたという。そして、これは本当に真剣に考えなければならないことだと思うようになり、人任せにしたり、人のせいにばかりしていては何事も解決しないので、まず自分からという行動パターンに変わったそうだ。「環境問題は、本当にいろいろあって、将来への不安だらけですが、そうしてしまったのは私たち人間なのではないでしょうか。自分の身体が自然の一部なのだと感じる人が増えれば、本当の意味で自分の身体を大事にすることができれば、おのずとまわりの環境も整っていくと思います。いくら外側をきれいに補修しても、内側がそのままだったら、いずれまた繰り返し起こることでしょう。じゃ内側って何?と気づいた時に、意識で簡単にかえるものがあることに気づいた時に、未来への希望がドーッと打ち寄せてくることでしょう。輝いて見えてきますよ。実現可能なのだから・・・。毎日やっていることはすごく地味なことだけど、毎日とても楽しい。」と述べている。

 NPO法人五環生活では、中山道鳥居本宿(彦根市)で、地元の方々に教えられながら、野草を採って食べる会を実施している。水路にはクレソンが群生し、フキノトウやユキノシタなど、さまざまな草を摘み、天ぷらや和え物にしていただいた。美味い!。食べられる物は、まだまだ身近にありそうである。美味いという感覚は、単なるそのものの味にのみあるのではなくて、その食物を得る過程と、自分の身体と向き合うことからはじまるのではないだろうか。