月の唄を聴く
亡き娘が生きて居た頃、よく美術館に連れていきました。
近場の美術館はもちろん、少し遠方の美術館へも。
絵画鑑賞だけでなく、体験型で絵画や物作りを楽しめるワーク付きのイベントにも参加したり。
いつだったか、池袋で開催していた『飛び出す絵本展』は、大人の私でもわくわくして、可愛く且つ派手にショーアップした館内で興奮し、少々値が張る販売絵本作品を娘用に買ってあげたりして、親のエゴも(^.^;満たしながら、楽しませてもらっていました。
最後に一緒に行ったアート展は、2016年秋に渋谷Bunkamuraで開催していた『ピエール・アレシンスキー展』。
ダイナミックな代表作品の他にも、ラフ画やデッサン画も多く展示されており、食い入るようにして鑑賞していた娘の横顔を今でも思い出します。
作品を通して交わした言葉も記憶に残っています。
娘は(親がチョイスしたものたちですが)実物のアート作品を目の前にして、楽しんでいたと思います。
なのにまさかその数ヶ月後に自ら逝ってしまうとは本当に考え難い、いつも通りの様子でした。
美術館や美術作品の個展会場は、私にとって地雷ではあるけれど、日帰り可能な開催地での自死遺族の集いへ参加するようになったお陰で、以前より出歩くことが増えてしまい、それは『亡き娘も一緒に連れて生き味わう』という、供養の意味を持つものに変化して生きました。
そうして過ごしている中で、亡き娘繋がりで出会った画家さんがいました。
田中みぎわ様。
実妹様を自死で亡くされ、まだ事後から日の浅い自死遺族です。
この5月に開催される個展があるとのことで、これは何が何でも見に行こう☆と心を動かされ、亡き娘を心に伴い、東京銀座の会場に行ってまいりました(^^)。
田中みぎわ展
今が、永遠であるということ
2021年 5/15(土)~5/31(月) (火曜日・祝日休廊)
◆作家来廊日5/15(土)、23(日)、30(日)
ギャラリー桜の木 銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座5-3-12 壱番館ビルディング3階
墨と胡粉を使い、厳選した紙の上に描いた世界は、角度や光の当たり具合で不思議な青みがかった色に見える部分もあり、とても興味深く一点一点見入りました。
既成イメージとして自分の中に植え付けていた水墨画とはまるで違い、繊細でありながら大胆にも感じるその在り様は、どういったら良いのか、亡き娘を感じるものがあったのです。
(おこがましいと思いつつも(^_^;)作品から感じる「繊細かつ大胆」に、共通するものがありました)。
📷『月夜の懐』/田中みぎわ
そういえば、娘が先立ってから数日間、真冬の澄みきった夜空に、いつもより大きめのまん丸いお月様が浮かんでいました。
当時中学校の友達の一人からは、こんな手紙を担任先生伝いに受け取っていたことを思い出しました。
『今日、三組の〇〇さんと帰っているとき、月が見えました。本当に大きくて、近くて、丸くて、なによりきれいなオレンジ色で、今日は不思議な気分です。この景色は絶対に忘れない。〇〇〇〇が見せてくれた月だと思ったから』
(手紙より一部引用、亡くなった日の夜に綴ってくださった手紙のようです)
みぎわ様の亡くなられた妹様も『ゆう(ちゃん)』というらしいです。
(漢字は別ですが読みが一緒)
亡き大切な人たちが繋いだ出会いからも、新しい交流と世界が拡がってゆくのを、また一つ感じられた日。
みぎわ様の創った世界が醸し出す、静寂の流れるような『音』に、じっくりと心(耳)をすませてみました。
気になった方は是非、個展会場を訪れてみてください☆
📷向って右側の可憐なお方が田中みぎわ様です。
(撮影時のみマスクを外して失礼!)
田中みぎわ Tanaka Migiwa
今夜(5/26)はスーパームーンで約三年ぶり皆既月食らしいですね。
雲が晴れ渡ったクリアな夜空で、ほんの一瞬でも味わえると良いな。
月の唄、星の旋律を。
生きて居る人、亡くなって居る人、大切な者たちと一緒に。
◆自死遺族の集い