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富士の高嶺から見渡せば

米下院議長「慰安婦発言」は韓国の偽造ニュースの疑い

2021.05.26 16:13

米韓首脳会談に臨んだ文在寅は、バイデン大統領からたった55万人分の韓国軍兵士用のワクチン提供を約束されただけなのに、これを「サプライズプレゼント」だと称し、今回の訪米の成果を「最高の訪問、最高の会議」だと自画自賛した。このワクチンをめぐって、米韓共同声明では「韓米グローバル・ワクチン・パートナーシップ」が取り上げられ、韓国が世界的なワクチン生産拠点、ワクチンハブになるという夢物語が騙(かた)られ、訪米中には米モデルナ社とサムスン・バイオロジクスの間で「委託生産」に合意したと発表された。しかし、実際にはサムスン側は単に原液を輸入し、瓶詰めとラベル貼りをするだけということがわかり、技術移転はなく、販売や流通の自主権があるわけでもなく、韓国国内へのワクチン供給が約束されているわけでもないことがわかった。つまり韓国が世界のワクチンハブになるなどというのは大法螺ふきだったのである。しかも、国民の大半がファイザーやモデルナ製のワクチンを望んでいるなかで、国民向けのそれらのワクチンは一つも確保できなかったというのは、国民への裏切りというしかない。

そんななか、今回の文在寅の訪米で話題となっているのが、カマラ・ハリス副大統領と会見した際、互いに素手で握手したあと、ハリス氏がすぐに自分のスーツのすそで手をこすって汚れを拭うような仕草を見せたことだった。

中央日報5/24 文大統領と握手するやいなやズボンに手を拭いたハリス米副大統領…米メディア「無礼」>

外交儀礼として「無礼」だと非難して、韓国のテレビやネットニュースはこのシーンを流していた。何が無礼なのか?新型コロナウイルスの感染状況のなかで、誰だって手で触れたものを気にするのは当たり前で、無意識で行なったとしても非難されることではない。あるいは文在寅が緊張で手汗をかいていて、濡れた手を不快に思っただけかもしれない。

しかし、そんなどうでもいいことに目くじらを立てるより、今回の訪米で、もしそれが本当なら、韓国にとってもっと重要で、それこそサプライズなプレゼントでもあったはずなのに、韓国政府も大きく取り上げず、メディアも大騒ぎしない問題がある。

それは、文在寅が米国議会を訪問し、ナンシー・ペロシ下院議長と懇談した際、ペロシ議長が、米議会も「慰安婦」被害者問題の解決に向けて努力しているという話をし、「2007年、米下院に慰安婦関連決議を出したことがあり、安倍晋三前首相と面会した際も数回にこのことについて言及した」とし、「正義の実現を見届けたい」と述べたというのだ。

中央日報5/22米下院議長「慰安婦問題における正義の実現を見届けたい」文大統領との面会で言及>

ペロス議長がいう、慰安婦問題に関する「正義の実現」とは何なのかはさておくとして、慰安婦問題を米国の政治家自らが直接言及してくれることは、反日左派政権の文在寅にとっては願ってもない幸運であり、最高の歓待であるはずである。

しかし、不思議なのは、これに対する文在寅の反応である。

当初、韓国側の発表では、文在寅は「日韓関係の未来志向的な発展に向けた確固たる意志を持っている」と述べたと明らかにした。ところが、韓国大統領府はその後、文在寅がそうした発言をしたことは確認されなかったとして、発言を取り消し、「想定問答として準備していた資料」が間違って配布されたと釈明した。

産経新聞5/21 韓国政府が文大統領の発言取り消し「想定問答で準備」 米下院議長との会談で>

しかし、それなら、ペロシ議長の発言に対して、文在寅は実際どういう反応を示し、どう発言したというのか。それについて韓国政府からは、何の説明もなく、このままだとしたら文在寅はせっかくのペロシ議長の願ってもない発言に、意味ある反応は何も示さず、スルーしたことになる。韓国国民としてはそのほうが大きな問題になるはずだが、それに関して、韓国メディアの後追い報道があったという事実は確認できないし、実際、大きな問題にもなっていないようだ。

どういうことなのか?慰安婦支援団体「正義連」(日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)やそのリーダーである尹美香は、ペロシ議長の発言を最大限持ち上げて日本非難に利用し、逆にそれに対して文在寅が明確の反応を示さず、何のメッセージも発しなかったことに抗議をしなければならないはずなのに、そうした動きは何も聞こえてこない。韓国の「常識(あるいは非常識?)」から考えて、おかしいだろう。

しかし、ペロシ議長が慰安婦問題をめぐって「正義の実現を見届けたい」と発言したという事実は、米国連邦議会下院の議長報道室の公式サイトの5月20日当日の関連記事「文在寅大統領との写真撮影(photo opportunity)におけるペロシ議長の発言」には、問題の慰安婦に関連した発言は見当らず、それ以外に文在寅との面会に関する記事もなかった。

もちろん、メディアの前での公式発言であり、メディアのカメラのないところで発言し、韓国側だけがその発言を記録したという可能性も無いわけではないが、それだったら前述のとおり、韓国はもっともっと大騒ぎし、あちこちに触れ回るに違いないのである。

つまり、韓国政府がペロシ議長との面会に際して文在寅が発したとする発言を取り消すことによって、ペロシ議長の「正義の実現を見届けたい」という発言も実際にあったのかは疑わしくなり、フェークニュースだったのでないか、という疑問が浮かびあげるのである。

ところで、2007年7月の米下院の対日慰安婦決議案はマイク・ホンダ議員が提案し、その年、下院議長になったペロシ氏のもとで成立したものだった。二人は同じカルフォルニア州選出の民主党議員で、韓国系の有権者が多い地域が地盤であることが知られている。そして、この慰安婦決議案の成立に大きく貢献したのが、自称「元慰安婦」の李容洙(イ・ヨンス)婆さんだった。慰安婦決議案が審議された米議会で証言し、当初5分だけ許された発言時間を無視して、1時間以上も発言を続け「日本のお金を全部かき集めてくれると言っても、私は受けないだろう」などと泣き叫ぶパフォーマンスを見せ、米国議員たちの度肝を抜いた。韓国では、この時の証言を題材に「I can speak」という映画まで制作されている。

ウィキペディア(Wikipedia)李容洙> 

しかし、以前にこのブログ<2021/1/16「事実認定も証拠調べもない『慰安婦』賠償判決」>でも書いたが、韓国の研究者が、彼女が1993年以来、様々な場所で行った証言を集めて、①慰安婦になった経緯、②時期、③年齢、④慰安所に連れて行った主体、⑤慰安婦生活をした期間、を比較したところ、「全部、内容が違い、前後が一致するものは一つもない。まったくのでたらめだった」ことが分かった。

<西岡 力「道徳と研究10 慰安婦の嘘と戦う韓国の良識派」

彼女が「慰安婦」だと名乗り出た当初は「1944年、満16歳の時に家出し、赤いワンピースと革靴に誘惑されて日本人について行った」と証言している。しかし、2018年3月、フランス議会での証言では「15歳のとき、日本軍が自分の背中に刀を突きつけて連れて行った」とし、完全に日本軍による強制連行だったと証言している。

しかし実は、その11年前、2007年2月に米国議会に行った証言では、「1944年に台湾に連れて行かれて3年間、つまり戦後にかけても慰安婦をさせられた」と証言した。しかしこの証言の矛盾を指摘されると、今度は「14歳の時、台湾の神風部隊の慰安所に連れて行かれ、3年間、慰安婦をさせられた」と証言するようになる。1928年生まれの李氏が14歳と言えば1942年だが、神風特攻隊が本格的に始まったのは1945年1月のことで、李氏が14歳のときには「神風部隊」はその名前すら存在していなかった。つまり米国議会証言とフランス議会証言という公式の場での発言さえ矛盾し、口から出まかせでのまったく信用できない虚偽証言であることがわかる。

こんないい加減な証言に基づいて決議された慰安婦決議によって、ペロシ議長はいかなる「正義の実現」を見届けたいと考えているのか?

「戦争と性」の問題を、現に今も存在し解決が迫られている課題だと考えるのであれば、これをただ単に旧日本軍が関係した「慰安所」と「慰安婦」の問題として取り上げるだけでは問題を歪曲し、却って解決を遠ざけることになるのは間違いない。

ロシア軍やドイツ軍などが絡む被占領地での女性レイプ事件、ベトナム戦争における韓国軍の集団レイプ虐殺事件などは、真相解明とともに法的処罰を要する歴史的課題であり、アフリカなどでの内戦や民族対立に絡む女性誘拐事件や性迫害、中国における民族虐殺政策ジェノサイドに関連したウイグル人女性に対する強制中絶手術やチベット人・モンゴル人女性に対する迫害・人権侵害は、国際社会が取り組むべき現在進行形の深刻な女性人権問題である。さらに世界各地に駐留する米軍兵士のためのその種の民間施設の存在を含めて、戦場や軍駐屯地における性病防止と情報漏洩対策、被占領地での一般女性の性被害の防止対策などを総合的に考慮する必要がある。つまり、韓国人と韓国政府が主張する旧日本軍に特化した「慰安婦問題」だけに囚われていたら、いま世界の人々が抱える「戦場と性」、「戦時性暴力」の問題の解決にはつながらないのだ。

ペロシ議長がいう「正義の実現」とは、ただ単に慰安婦問題で日本政府が謝罪するか否かの問題ではなく、現実を生きる世界の女性たちが国家や軍など実力組織から自由に生きる権利の実現であるはずだ。