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#108.テクニカル(演奏技術)練習について考える 前編

2021.06.14 21:39

「練習」と一口に言っても、その中身は多岐にわたります。

その中でもっとも練習らしい練習が「テクニカル(演奏技術)練習」です。


テクニカル練習はなぜ必要か

テクニカル練習をなぜ行う必要があるか、と言えばそれは当然「曲を演奏できるようになるため」です。

私は中学生の頃、吹奏楽部では与えられた楽譜を演奏できるようにするため、何度も何度もただ吹き繰り返すだけの根性練習をするだけで、また、当時はピアノを弾くことも大好きで、久石譲さんのジブリ作品を演奏したい一心で楽譜を購入し、とにかくその曲が弾ければそれで良いと、何も考えずその曲を何度も弾きまくることで体に習慣的なインプットをするだけでした。

そのピアノを弾いていて「弾けないところは何度弾いてもできるようにならない」ということに気づきました。「自分の今の技術力では弾けない」と理解していたくせに、面倒だったので弾けるところさえ弾ければそれでいい、弾けない曲はそれ以上弾かないと、まあ非常に良くない傾向にありました。ちなみに、中学生の時まではピアノを習ったことがなく、完全に独学でした。


話を戻します。


現在に至るまで多くの吹奏楽部の練習風景を見ていて「曲を吹いてばかり」のところが非常に多かったです。基礎練習と言っても、ずっと同じパターン、同じ調の決まりきったフレーズを吹いて、毎回同じ調のロングトーンを同じ条件、同じスタイルで吹き、すぐに曲練習。その後は終了時間がくるまで(もしくはバテるまで/飽きるまで)吹き続ける。これはどう見ても非効率的。


確かに、今の吹奏楽部は本当に本当に時間が足りません。この時間の長さだと成長するために必要な時間の確保がほとんどできないので、演奏能力の現状維持をしつつ、その状態(スキル)で次々に課される楽譜を演奏することになりますから結構大変だろうな、と感じます。練習というのは長時間ダラダラ続けることに意味はないのですが、ウォームアップで自分の演奏について見つめ、今回のテーマである様々なテクニカル練習を確実に自分のものにするためには、ある程度長い時間が必要になってしまうものです。その時間の中にはトランペットを吹くだけではない練習時間も含まれます。


長時間練習は毎日ではなくて良いですが、例えば休憩も含めて6時間とか音楽にどっぷり浸かる日が定期的にあるのが最も望ましいと思っています。

短時間練習だけしかできない環境が続くと、私の中学生の頃のように「曲を演奏するために曲を練習する」の構図になり、「できないところがずっとできない」になる可能性が高いです。


理想を込めて言いますが、この状態を回避するには、曲の練習だけでなく「どんな要求をされても、どんな曲を演奏することになっても、それを演奏できる技術をあらかじめ準備し手に入れる」必要があります。


これを「テクニカル練習」と私は呼んでいます。


テクニカル練習

さらに、テニクカル練習は大きく二分化できます。


[1.超基本的な内容]

これは、例えば「確実に音を出す(ための安定したセッティング)」「音をまっすぐ持続できる」「タンギングができる」「音の高さを変えられる」「ピッチが安定している」「トリガーでピッチを安定させられる(五線下の「シ」と「ドのシャープ」)」「音色が安定している」と言った、演奏する上で絶対に必要な基本内容です。これらのクオリティを高め、常に安定した状態で演奏するための練習は初心者の人だけでなく、いつまでも追求し続けたい重要な項目です。


[2.全般的な演奏テクニック]

基本的な技術のクオリティを高めつつ、楽曲で要求されるであろう様々な演奏スキルをあらかじめ習得しておくことが次の課題です。最終目標としては、「渡された楽譜に技術的に難しいと感じる箇所がない」ことが最終的な目標ですが、これは理想であって、なかなかその領域まで到達するのは難しいです。だからいつまでも練習は続くわけです!


具体的にどのような内容かと言うと、例えば「2オクターブ半の音域が安定して鳴らせる」「どのようなフィンガリングの楽譜が来ても苦労せず演奏できる」「ダブル/トリプルタンギングができる」などです。


これだけではありません。「シンコペーション」「スタッカート/テヌート」「付点8分音符+16分音符のリズム」「ヴィブラート」など、トランペットに限らないすべての演奏者が持つべき表現の基本、というのもたくさんあります。


他にもテクニックという範囲を超えますが、「フレーズを理解する力」「歌う表現(さまざまなアゴーギク)」「テンポや拍子の基本的な捉え方」などのスキルを持っている必要もあります。


また、こうした技術の土台には「リップスラー」や「リップトリル」の習得が必須です。


ああ大変!やることいっぱいです。


これらすべてを一気に学ぼうなどと思ったら大変ですし、その必要もありません。というか、習得すべきそれぞれの項目は、強く関連し合っているものがたくさんあり、例えばすべての音階がキレイに演奏できる人は、リップトリルの技術を身につけている可能性が高いです。


ですから、良く言われることですが、本番をたくさん経験した人のほうが、本番までの過程での練習によって技術力が高くなるのは当然のことなのです。単純に曲をたくさん吹いたのでは得られません。本番に向けてきちんと形にしようとするアプローチの中から生まれてくるものです。


ということで今回はテクニカル練習とはどういったものか考えてみました。

次回もこの続きをお話しさせていただきますので、ぜひご覧ください。


それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

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