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住まい逍遥

自然素材にやすらぐ女性建築家の自邸_2

2021.05.28 15:41

こんにちは。住宅分野のフリーライターemが、ステキだ〜!と思った住宅をレポートするブログへ、ようこそ。

今回は建築家・熊澤安子さんの自邸のご紹介、2本めの記事です。

雑木林のような長いアプローチを経て、この玄関にたどり着きました(1本目の記事では緑豊かなアプローチの詳細をレポートしていますので、ぜひご覧ください)。

タモ材の玄関ドアを開けると、大谷石貼りのたたきが現れます。ボーダータイルの巾木や漆喰の壁。あたたかみのある素材とフロアライトの柔らかい光に、ホッと心がほぐれます。玄関から動線が二手に分かれる間取り。正面に見えているのは、玄関を入って左側、熊澤さんのアトリエやキッチンへ続く廊下です。

1階の間取りはこうです↓



以下は、玄関を入って右手に見える風景。螺旋階段と玄関ホールを兼ね合わせることで、面積を節約しながら上方への広がりをもたせ、上からの光を得ています。フロアライトで白い壁を浮かび上がらせているのと、螺旋階段のデザインが軽やかなので、浮遊感があります。

こちらはリビング。設計相談や打ち合わせに訪れる来客を招き入れる、応接間的な部屋です。青いイージーチェアはボーエ・モーエンセン。テーブルと椅子はカイアール(旧 木曾三岳奥村設計所)。デンマークと日本の上質な家具が同居します。単純な四角形の部屋を、家具で上手にアレンジして居心地の良さをつくっています。

左右の窓から外の緑が見えて、住宅地にありながらまわりの家々が気にならないのは、計算の上で窓が配置されているから。天井いっぱいまで窓になっており、水平方向への視線の抜けがつくられているので、天井の高さは控えめですがバランスが良く、広がりを感じます。

床はカラマツの無垢材です。スギやヒノキよりも固く、ずっしりと重みがありますが、足触りの柔らかさもある木です。完成から9年が経って、最初は白っぽかった板の色が飴色に深まり、艶も備わっています。材の乾燥度や施工精度にもよりますが、無垢材は生き物なので、隙間が空いたりするのが大前提。でも、木目をプリントした精巧なフローリング材にはないぬくもりには、代えがたい魅力があります。一度体験すれば、その違いがわかるはず。床は、壁や天井と違って常に体が触れるので、素材によいものを選ぶと満足感が高まる部分です。

テーブル越しに南側の小さなテラスが見えます。植栽に囲まれてプライベート感があります。やっぱり木製の窓はいいですね。しかし昨今は高断熱化のために、サッシの選択肢が狭くなってきているようです。やむを得ない時代の流れでしょう。白熱灯もLEDに駆逐される運命です。断熱・気密の機能性が高く、見た目もよく、リーズナブルなサッシが開発されることを期待します。

こちらはサイドボードの上の高窓。左側はガラスのはめころしで開けることはできませんが、右が通風用の板戸になっています。リネンのスクリーンと外の緑が近隣住宅との距離感をつくり、落ち着いて過ごすことができます。



こちらは暖炉です。ほとんど壁に埋め込まれたデザインなので、使わない季節は存在が過度に主張されることなく、溶け込んでいます。暖炉は暖房のためというより、火を眺めて特別な時間を楽しむ、という使い方をしているそうです。

ハンス・ウェグナーのデイベットのコーナーにも窓があります。どんな小さな窓の向こうにも緑が見えるところに、配慮を感じます。また、2階に通じる吹き抜けをつくり、光を入れるとともに上下階の空気を循環させています。暖房は、OMソーラーという、太陽の熱で家中を暖めるシステムを導入しています。

飾り棚にも小さなライトを。天井付けの照明器具からの強い光で部屋の隅々まで照らすのが日本ではスタンダードですが、くつろぐ場所ではこうした低い位置の光が落ち着けます。キャンドルやランプの灯りに近いからでしょうか。

次の記事では、ダイニングキッチンと設計事務所のアトリエ部分をご紹介します。

この家の動画は以下で見られます。心地よい空間をよりリアルに疑似体験できます。玄関は1:54〜、リビングは3:21〜

建物の詳細なデータは、1本目の記事に記載してありますので、必要に応じてご参照いただければ幸いです。

この家を設計した 熊澤安子建築設計室 のHP↓もぜひご覧下さい。

次回もお楽しみに!