イギリス紀行7
ナショナル・ギャラリーではたくさんの絵画を見ることができた。とても満足だった。日本の美術館と違うのは、まず建物だろう。明治期に西洋風の建物ができた日本と違い(しかも多くが戦争で焼かれた)、英国にはもっと古い建物が残ってる。もちろんイギリス自体は絵画の国というイメージはないにしても。大英帝国を築く中、様々なものが流入してきたのだ。ロゼッタストーンなどの戦利品もその最たるもの。日本の場合はだいたい「~展」みたいな感じで美術展をするが、ナショナルギャラリーはすべて無料の常設展。しかも量がハンパなく網羅しているから、一日がかりで見るのは無理なくらい(日本に似た所はあるが規模が違う)。
何より今回驚かされたのは、ルーベンスの絵画だった。印象派などを好きな者としては、十七世紀の画家についてはあまり知らなかった。ド迫力の絵を間近で見ることは、最大の驚愕。特に「サムソンとデリア」は発見だった。いわゆる宗教画やルネサンス絵画ともちょっと違う。「なにこれ?」って思った。大胆なデフォルメ、明暗、色の濃淡、そして裸体(おっぱい)。改めてルーベンスについて調べてみると「王の画家であり、画家の王」とある。ルネサンス期のあと、絶対王政や大航海時代における、いわゆるバロック美術といっていいだろう。
そう、知識としては知っていても、あまりバロックBaroqueについては知らないかった。「なにバロックって?」って感じである。ちょっと知識的なことになるが、せっかくなので少し書いてみよう(調べたことなど)。ルネサンス期の絵画は安定して秩序だった構成だったが、バロック期になると動きのある絵が特徴的になってくる。大航海時代など、その時代の潮流に重なるか。なるほど、まさにルーベンスの絵。彼が参考にしたのが、ルネサンスのティチアーノだったり、またミケランジェロのダイナミックさなども取り入れていたようだ。最初の頃はまだおとなしい筆遣いだが、どんどん大きなうねりとなる。まさに王政の時代にマッチしてる。外交官として飛び回っていたルーベンスらしさ。彼について知ると、他の時代の画家たちともつながっていて面白い。ほぼ同時代のレンブラントなどにも影響を与えている(知っての通りレンブラントは陰影をより際立たした手法)。またもう少し後、革命時代の画家であるゴヤなどにも影響を与えている。