ガウディの伝言
著:外尾悦郎
前回からの「CENTREの本棚」では、以前ご掲載いただいた「HIROBA!」様で紹介させていただいた5冊の紹介を、加筆してお届けいたします。
2冊目は、「ガウディの伝言」です。定評のある光文社新書。恐らく名前を知らない方はいないであろう、スペインのバルセロナにあります贖罪教会であり、世界文化遺産でもある「サグラダ・ファミリア」の主任彫刻家である、外尾悦郎氏の著書です。
人は皆、それぞれの個性を活かし、社会と接続して生きています。この春から社会人となられた皆様も、多くの人と出会い、刺激を受け、変わっていかれるかと思いますが、世界には様々な仕事をしている方がいます。視野が狭くなりそうになったとき、自分では想像もできないような世界観で仕事をしている方のお話を聞くのも、ひとつの刺激かと思います。
本著は、スペインはバルセロナに存する世界遺産「サグラダ・ファミリア」、その主任彫刻家である外尾悦郎氏の、現場の職人とのコミュニケーション、自然との共生、ガウディへの想い、忘れてはならないこと、完成とは何なのかが優しい語り口で綴られています。「自分の意志だけではなく、自分以外のあらゆるものが、今の私を成り立たせていることを感じる。」と語る外尾氏の人生観、仕事観は、必読に値すると思います。
仕事と自分。ワークライフバランスと叫ばれて久しいですが、仕事が自分を支え、自分が仕事を支えていると感じられると、感謝で包まれた素晴らしい仕事ができると思います。バランスを取ることを目的にすることは、本当の意味でのワークライフバランスではありません。「何のために」その仕事をしているのか、その仕事の先には誰がいるのか、何があるのか、自分の目と頭でしっかりと向き合っていく必要があります。自分の仕事に誇りをもって、支えてくださるすべてに感謝をもって、取り組んでいきたいと私自身も思います。
本書は、外尾氏の仕事についての記載はもちろん、アントニ・ガウディを知る方々の言葉や精神性、石工職人のこだわり、資金難とパトロンなど、未完のサグラダ・ファミリアに関する内容が盛りだくさんです。当然、スペイン観光のお供にもなり得る情報量でありますが、海外渡航が困難になってきている現在時点で我々ができることは、想像力を働かせながら、工事進行に思いを馳せ、喜捨を行うこともひとつかと思います。