翻る、夏の乙女の袂
2016.12.22 05:59
クリスマス気分に華やぐ青山は骨董通りの古物屋さんで、大正末期〜昭和初期のかなり状態の良い夏着物をお手頃価格で入手しました。完全に季節外れの話題で恐縮です。
朝顔、撫子、桔梗、あざみに萩… 丸紋状にデザインされた夏秋の草花が、綿紅梅の生地に藍で染め抜かれた様子は、纏うまでもなく凛として涼しげ。
衿を付けても、そのまま浴衣としても、着られます。
あの時代ならでは、お袖が今より10センチ以上も長く。きっと、歩くたびにゆぅらゆら。…思い浮かべるだけで、いくつになっても胸の奥に頑と居る乙女心がうずうずと踊り出します。
夢二の絵のような細首に柳腰の美人になった気分で(あくまで気分は自由!)、都会の街を歩きたくなる。
着物は夏がいちばん好き。
生地が薄くなって、帯が軽くなって、女としての身体性がいちばん剥き出しになる。でも慎ましく全身を覆う布。
捻れ、張り、その中に密やかに隠し持つ大事なものを彫刻するかのように入るシワ。
そんな湿った女の業から、唯一解き放たれたかのように、勝手気ままに翻る乙女の長い袂。
瞼の裏に、ゆぅらゆら。
夏が待ち遠しい。